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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

織機の調節

2012年08月07日

ここ数日、織機の調整に毎晩ほど時間を費やしています。シャトル織機というものは、シャトルを挟んでしまうとバランスが崩れるので、シャトルを挟まないように織れるか織れないかが大事です。シャトルを挟むことは車で接触事故を起こすようなことで、熟練した人だとほとんどありません。シャトルを挟んだときにたくさんの糸切れなんかが起こると、それは、車を板金修理にするかのように手間と時間が掛かってしまうこともあります。

私自身は、北アイルランドでリネンの細番手が紡績されなくなった背景に、シャトル織機がレピア織機に置き換わったことがあると考えています。レピア織機で、25番、40番クラスの製織が非常に簡単になって、リネン全体の生地相場が崩れたことと、細番手をシャトルで織ることは何倍もの時間を要するために、高く売れたとしてもその手間隙を吸収することは難しいものです。

生産性が高くなるということは基本的には良いことですので、日本の場合も、1970年代中ごろから和装が衰退し低迷をした繊維業界を生き返らしたのが、広幅で織れるレピア織機の普及でした。その後、ウォータージェットやエアジェットなど織機の高速化は進みますが、麻織物の場合は、糸の切れやすさなどからレピア織機どまりのところが多いようです。

林与でも、130インチの織機が動いていた時代30年ほど前です。広い幅の生地を求められるのが今の時代ではありますが、広い幅の織物というのは品質の面でトラブルというのが多すぎたのが昔の日本のアパレル基準で、広く織れば織るほど別の問題も多く、働く人の高齢化や女性がメインの織場では、110cmくらいの仕上がり幅くらいの織物のほうが無理がないものです。

実際、手織りの世界というのは人に優しい時代なのですが、それも労働集約すぎ生産性がないもので、手織りを謳うものほど産地が怪しいので消費者も注意しないとなりません。一人の職人が高品位の密度の高い手織りのものだと一年に10反から20反を織れるかどうか、国産の着物の流れを汲む手織りの特徴はしっかりした打ち込みの高密度で、高級なものというのは細い糸をしっかりと打ち込んで織ったものです。

わたしも、麻の産地の地元で悲しいほどの手織ものを見かけることがあります。織りムラがひどすぎて、海外の子供の手仕事で織ったのだろうと思うのですが、国産のものと海外産のものとの大きな差を感じ安堵をする一方で、使われる方というのはその差が分からずに麻の良いものとして基準になると本業でやっているこだわりすらも危ういなあと思います。

別の話では、業界の皆さんがおられる席で聞いた話に、ある麻関連の会合に、近江産の麻ジャケットを着てきてくださった皆さんのお知り合いの方がおられてその気持ちには感謝するものの、毛むくじゃらのラミーで産地の麻布のイメージとは違いすぎて、もう少し産地らしいものを経験していただかないと本当の麻の良さも伝わらないのではないのかという話になってしまい、本人のご好意とは裏腹に気の毒な話もあり、その方にもそれが産地のイメージのものとかなり違う世界であるのを言いにくかったということで、私はその場にいなかったものの良くありがちな話です。

といいつつも、私自身も、工場に出入りすることが多く、汚れてしまうのを気にして市販の服で済ませてしまうことが多いです。特に外に出るときなどには自分自身が手がけたものを身に着けるようにしていかないとならないなあと思います。自分で作ったものというのは自分で育てた野菜を食べるかのようで、別の意味合いが多いのを感じます。地元産にこだわる原点に、農業なんかでも同じですが、自分自身ができることがすべてですので作っている人というのは正直なことが多いものです。

地元の自治会でも、カルガモの自然農法をやっていますが、それがどこまで通用するのかというと、やせ細った実の成らない稲が出来上がってしまいます。そういう方と実際に話をすると、カルガモに餌を上げているだけでは難しく、肥料をあげないと実すらもが取れないのが現実です。案外、本当に支えている人というのは正直に物事を話して、それに気がつかないとならないことを諭してさえくれます。


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