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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

有名無実にならないために

2014年07月12日

今日は午前中、東京、午後は大阪からのお客さま。来春に使う素材選び。小さな会社で仕事には常に追われてしまっていますが、いろんな皆様から仕事を相談いただけることはありがたいことです。なかなか難しいのは弊社内でのものづくり以外の部分での制約が大きく、そういう制約がなければものづくりというものはもっとスムーズにでき仕事はこなせるのですが地場産業的な分業の壁ではあろうかと思います。

中規模の会社ならできることが零細企業だと出来ないというあたりは、突き詰めていけば、海外との競争などには勝てるはずがないのです。海外では1500人とか2000人が一つの企業、糸からアパレルまでを一貫生産。洋服を作るというより売ると決めたら何の制約もなく形にしてしまいます。売り場までをももった供給牽引型、日本のSPAと同じ形。

日本の場合はジャストインタイム的な需要牽引型を採用しているところが大きく、問題は、自動車や電気のような組み立て産業だとまだしも、実際の製造業では無駄を節約するというよりは無駄が大きすぎるというところ。売れるものをつくって売っていくというほうが無駄が少ないのは当たり前なのですが、小ロットになる分、材料を落とすなどコストが高くなるので安い方法を選んでしまうという悪循環に陥りがち。一番の問題は、売れるものがよいもの、売れないものは悪いものという判断で、安く化かせる素材に流れて本質的によいものが作れなくなること。

良い物を扱われている問屋さんとお話したときに気がついたのが、よいものでは利益は求めておられないこと。そういう戦略でいかれるのはさぞしんどいかと思いきや、売れるもので利益をぶつけてよいモノづくりを守っておられるとのこと。

戦後産地に麻織りを残し麻織物の本場として近江湖東産地がありつづけたのも、売れる売れないじゃなく、良い物を作ろうとして麻を織り続けることを行った。そうでなければ、今は近江湖東産地も他産地と同じく、「かつての麻織物の産地」と呼ばれていた可能性は高い。麻織物の産地として名前が残ったこと、結局は売れる売れないよりも、麻織物の産地としてはそれが意味のあることじゃないのかと。林与のような小さな会社が産地の麻織物を引っ張ってきたということもあるので、私もそこに意味を感じて産地での麻織を守る。それはかつては農家のほとんどが麻を織っていたという日本の麻織物文化を形は変われど絶やすことなく守るに繋がる。

織物なんてどこでも織れるといわれるかもしれないけど、本場の産地でほど、高級な名前があるので名前を利用しやすく、産地外で織った他産地ものが産地物に化けがちで、名前だけが一人歩きして有名無実になりがち。私自身、有名無実にならないよう気を付けたい。


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