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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

並行作業

2017年12月21日

今日は、晩御飯から帰って書類作成を終えてから夜中仕事、織、整経、糸分割、絣の横糸を作るを並行して行う。並行して行うのでそれぞれの作業のスピードは落ちるが、動きが止まらないので結局はたくさんの仕事の成果となる。書類関係の提出の問題がまだ残っているので、それを仕上げるための時間を見つけようとするがちょっと寝てそれは朝から。もう12月も数えるほどの日数しかない。

糸が染まりあがってきてもそれを仕事に持っていくためには、糸を分割して整経という作業を進めていかねばならないが、分割も、チーズワインダーという機械で、必要な大きさにカウントして分割する。その必要な大きさを計算するのも必須の仕事で、まず、縦と横それぞれに必要なその糸の量を計算し、1mに必要な糸の量が出てくる。染まった糸を縦横で全部使い切るなら、染糸の量÷1mに必要な量=染糸で織れる量が理論的には計算でき、その長さを整経のドラムが2.5mなので、2.5で割ると何回整経ができるのかが割り出せる。

縦糸の総本数割る、整経の1バンドの本数で、何バンドの整経となるか計算し、整経回数X何バンドX10が、チーズワインダーのカウントとなる。10をかけるのは、整経の荒巻ドラム1回2.5mとチーズワインダーの1回28cmの長さが10倍違うから、余裕を1割ほど見ている。

この計算は仕事するときに必須となるので、できるかできないかで自分が仕事するのか他の人に仕事してもらうのかが変わってくる。計算自体は小学生の算数に近いのだが、こういう計算ができる現場の人というのは稀なので、私が新しい人には最初に教える大事な計算なのである。私はいつも外の会社の人に頼まれて糸量の計算をするのも仕事のうちで、こういう計算ができる人というのは自分の仕事を進めてゆけるし、間違いなどにも気がつきやすい。

小学生中学生だとこういう計算問題スラスラとできないといけないのだろうけど、社会人でこういう計算がスラスラとできる人というのは稀であったりする。普段の織物作業でも、いろんな仕事をこなしてゆこうとすれば仕事の中で、面倒がらずに覚えて四則演算を活用できる必要がある。実際にこういう計算があたりまえにすることができると上手に仕事がこなせることになるのだが、日本の織物工場だとそれぞれの工場に一人いるかいないかで、その人が他の人の仕事の準備をすることになってのパンク状態。

そういうできる人がいても計算を間違えたりすると計算をできない人がちゃんと計算してよみたいなことをいったりするとかの笑い話もあったりで、仕事が上手に発展していくいかないは、そういう部分が大きい。昔の分業の時代と違って、今の仕事というのはこういうことがちゃんとできないとなかなか成り立たないのだが、それを実際に正しくやるなら仕事がある正しくできないなら仕事がないということにもつながる。地場産業が衰退していく原因のひとつが、こういう計算などを面倒がらずにできる人が地場産業には少ないことも要因のひとつだろう。

地場産業でも織物会社が製造をやめて企画会社として残る形が多いのも、現場では簡単な計算も働かず仕事が前に進まないとか、ちょっと難しい仕事は理解できないとか確認も働かず作業の間違も多発とか。製造をあきらめて他でつくる流れに移行するからだろう。地場産業の復興とも、面倒で嫌に思うことでも淡々とこなしてゆけるような人が必要なんだろうと感じる。昔は人は自分のために働くのではなく家族のために働いたので嫌なことでも我慢できたとかあるだろう。

ある作家の先生が知人の方から子供に絵を描いてほしいと頼まれて、1ヶ月掛けて絵を描かれ肩が上がらなくなってしまったと楽しそうに話しておられた。他の人のために働ける人は、仕事も卓越されたものがあって、普通の仕事の人が及ぶ領域ではない。若いときに自分から学びたいと弟子入りされた経験などお持ちで、そのときに恩をいただいたことなども感謝され大事にしておられて、能力も高く理想的な社会なんだろうと思う。そこまでたどり着くと仕事で食べて行かれるのも簡単なのだろうが、一つ一つの仕事に注ぎ込まれている力は普通の人以上であり、仕事じゃない普通の話を一緒にさせていただいていても他の人のために生きておられるのを感じる。それが自分の教える生徒さんだったり、被災地の方々のためであったり。人生観が仕事にもものづくりにも表れておられ、先生となられても看板商売じゃなく身を張られ新しいことにも打ち込んでおられる。

心のこもった良いものがうまれてくるのも当たり前に思える。林与の近江上布絣を広幅で再現するプロジェクトもその先生が染めの一通りの基本というか、その先生の普段の作業を、半日で私に享受くださって、私一人でも昔の近江上布を広幅で再現することがやればできるんじゃないかと実現に至った。技術やセンス云々よりも、一人の人としてその方はすごいのである。


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