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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

織機

2018年05月27日

林与の工場の中には、たくさんの織機があるけども人は少ない。人が少ないから織機が沢山あっても織機が足りないということになる。織物の作業の中で、織る作業というのは一番負担が少ない仕事である。織機の機を乗せ換えしたり、縦を繋いだり、調整したりは、負担の大きな仕事で、その手間を省くためにそれぞれの織機には違う規格の機を乗せてあり、人の手の掛かるのを少なくしている。小ロット生産向きである。

一方、普通の織物工場というのは10台程度のことが多く、家族経営規模だと6台とか、フルに動かさないと食べて行けない量産型モデル。産地には産元があってそういうところがつねに仕事を斡旋する。この形で残っている産地は多い。1台とか2台の織機の機屋さんが仕事をこなしてゆけることは難しいだろうなあと思う。京都の西陣織物なんかだと台数も少なくても、高価な世界で、それが成り立つのかもしれない。

織機は多いに越したことはないが、みんな織機の台数を最小限に減らそうとするのは、工場の土地建物も織機も固定資産税が掛かってくるし、電気料金も織機の消費電力に対して固定電気料金が掛かってくるからコンパクトにまとめたほうがよいという結論からだろう。織機を動かす環境というのは持っているだけでは費用が発生するだけの負の資産なのである。愛知県一宮市では、大きな土地を有する織物工場が、廃業して、工場を貸土地するケースが増えているのも働いても税金に追いつかないという現象まで起きていて、土地を貸したほうが成り立ちやすいという話。

中国で上海の沿岸部から繊維企業が消えて行く話を中国の国の政策としての話としてゲンキンな話だなあと思うが、日本では税金の徴収を介して、利益率の低い繊維企業が泣く泣く廃業や不動産業への転身を迫られ、似たような話もあったりする。なぜ、都市部では織物工場が成り立たないのかも地価の問題と密接に関係しているのである。京都の捺染工場も市内の中心部にあったところは近郊への移転が相次いだ、衰退気味の繊維産業が同じ場所で同じことつづけようとしても、新しい産業が繁栄して地価を維持あるいは上昇させると、衰退気味の産業はラストストローを超えて立ち去らなければならないことが多い。それを考えると林与の住んでいる地域が過疎化しているのが救いになって織機をたくさん持って動かしていられる部分あるのかも知れない。


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