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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

欠点

2018年06月14日

林与の大きな欠点は、家族経営的な会社なのに家族の他のものが織物を織れないところで、レピア織機なら普通私が指導すれば、未経験者でもほとんどの人が、1日で織れるようになるのだが、そういう基本の仕事の作業を評価できないところが昭和の組織的なレガシーなものづくりの問題の一つ。仕事があっても出来る仕事がないという問題につながる。

この問題というのは組織的に大きくなった機屋が直面する問題で、何十年も現場を任せた方々が年を取って難しい仕事や新しい仕事ができなくなってくるとそこで終わりを迎えることになる。産地の機屋さんにしても、経営者は残り、デザインや企画はできても、それを織れる人が居ないと言う問題。まさにそこが日本の織物業での致命的な問題の部分ではあろうかと思う。弊社も常に意欲的にものづくりできる人を探してはいるので、いろいろと好き嫌いな苦自分で作業してみる覚悟のある方にとっては魅力的な現場ではないのかと思う。

地道な作業ができるかできないか、繊細な作業ができるかできないか、力作業ができるかできないか、急ぐ作業が急げるか急げないか。その辺りがかつて言われた日本人は器用だというところで、日本らしいものづくりの質に影響してくる。作業を突き詰めると特別の世界が見えてくることも多い。何十時間費やした作業が、一瞬で駄目になることもあるし、何が大事なのか見えてくる。

素敵に見える布が簡単にできれば、それは他の人でも簡単につくれるから、自分だけしか作れないものというのはやはり自分で作るしかないのである。自分の限界を知るところが一番大事で、自分の限界から規格を10%ダウンしたところで量産のものをつくるとか、量産も難しいものなので他も真似は難しい。

自分のデザインで勝負というのも、自社ブランドで他に販売しないというケースなら成り立つだろうけど。自分に生地を量産できるだけの販路が十分あるのかという問題につながる。普通は、量産のボリュームを狙おうとすると、ブランドさん向けのものづくりとなり、バッティングの問題もあって色と柄を変えてそのブランド用に味付けするケースが多いので、デザインで勝負のはずがデザインはブランド任せになることがほとんど。相手の思うものを自在に作りこなす力が必要で、それは自分が自分の思うものをつくる以上に費用もエネルギーも使うし難しいことが多い。

ものづくりというのは、機械を使おうが人の力の限界がものづくりの限界なので、人の力の限界が先進国?である日本でやるならやはり高くないと難しいと思う。私も外資系の世界で一番よいと思われる電子部品の製造現場も経験したことがあるけど、半分以上の時間を検査に費やす。これは職人が不在ということで、どこの国でもできる装置産業的なものづくり。人の能力が要求もされていないから楽に働けるけど、人の能力も引き出せず落ちて、千人以上も働いていたその工場が閉鎖され、海外に移転されてしまった流れは当たり前といえば当たり前。

そういう優良?な工場が消えた後、その工場で働いていた人たちのかつて経験したことのない苦悩が始まる。別に他の仕事にしても普通なのだが、普通に働くことも難しい体質になってしまうのである。甘やかして駄目にして捨てるパターンに近い。


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