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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

興味

2021年06月13日

物事に興味を持つということは良いことだなあと思う。今日は織物とは直接関係のないことだけども鯨香の話なんかをいろいろと話したり。鯨なんてほとんど縁のない話でさらに鯨香なんてもっと縁のない話に思えるけども、臭いクジラの結石のようなものが逆に非常に価値のある高価なものであるというのは面白い話で、それを見つける側の幸運や一方でそういうものを求める側の価値観のような辺りがマニアックで面白い。

私も高校生の頃に化石を探しに京都の深草に行ったことがある。山を削った工事現場で化石を探す、見つけてもいくらの価値のないものだろうけども、その時は化石に興味を持っていたので化石が宝のように思えていたと思う。周りの誰も興味を持っていなくても、自分が興味を持っていればそれが価値だろうと思う。

私が麻布を見るときに、自分なりの評価をする。たとえば、多賀の茶店にあったランチョマットの麻布が絣で、糸遣いが今の細い糸の倍くらい細い。今作ることが難しい布ということで、茶店が高級料亭を超えた世界を持っていたりする。そういうところにこだわりをもってお店をつくっておられたりするあたりが伝わってくる。

あの布を手に入れようと思うと大変苦労するだろうけど、手に入った布を自分のお店でお客さんの目に留まるようなアイテムに落とし込んで使うというような粋な計らいは、料理と同じような価値があるだろうと思う。それがさりげないほど粋な計らい。普通の人が気が付かない自分だけが気づく価値感というものがあってこそで、それが作り出す側が分かる価値観なんだろうと思うといえば大げさだけど、そういう布を見て布自身がそれを作った人の思いを語るのを感じてしまうのは本質的なものなんだと思う。

私自身が、林与の近江上布の20枚くらいのハギレを初めて見た時に、誰がこんな趣のある世界を作り上げたのか不思議に思ってすごい世界があるんだなあと思った。それが何年も後に、私の家で何十年か前に作っていたものだと知ったときに、びっくりして、また、さらに何年もあとに、そういうのがハギレで何千種類も残っているのを知って、今は過疎化の進む田舎だけど昔は覚悟からしてすごかったんだなあと思うし、その活気を今の日本の繊維業界に取り戻したいなあと思う。世界に注目されるってと思うが、覚悟は普通の何倍も必要で、結局はそういう覚悟が世界の高級ブランドが求める日本の織物の世界の一つなんだろうと思う。

自分のために働くでなく、他の人のために働いていた人たちが作り出せるような世界で、そういう世界を日本が失ったときに、日本のものづくりの肝が消えてしまって、普通になって、自分自身が食べていくのも逆に自ずと難しくなる形なのかなあと。人同士の関係が希薄になると日本のものづくりが衰退するようなことはあるだろう。


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