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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

ツギハギ

2022年01月02日

この数日、電熱ベストと電熱パンツを愛用していて、今朝、工場の中の織機の出っ張りに電熱ベストのポケットが引っかかって10cm弱ほど破れちゃった。お気に入りだったのに右ポケットのジッパーの部分が破れて、けど、破れても縫って直せばよいということで、手で縫って直してみた。黒いパーカーに白い糸なので直したのも分かる仕様。寒さをしのぐために買ったものなので敗れて直したみたいのが見えていても大丈夫。これで良いのだ。

なんか直してこういうのに満足できるのが、自分らしいところなのかなあとも思う。捨てて新しく買ってよりお気に入りのものがちょっとキズが付いたからといって価値がなくなるわけでもない。この数日でも私の体を温めるのに活躍してくれたベスト。ちょっと悪くなったからといって新しいのと買い替えるのはかわいそうである。かっこよくリメイクされたツギハギはお金出してかうのとは違う、自分で繕ってできたツギハギ。ポケットのジッパーも開閉が問題なくできる。

冷えこむ工場の中で織機の立ち上げ繋いだ糸を送ってぐちゃぐちゃになっているところを一本一本拾い直して織れるようにして行く。最初は全然無理に思える状態でも根気強く何時間もやっていくうちに織るときの綺麗にまっすぐ全部の糸が揃った状態になってゆく。織る作業よりもこういう作業のほうが大変で、上手な人と下手な人の差が現れたりするのもこういう作業。正しく拾っていないと織るときに経糸が出にくくなって切れて織りにくいだけでなくキズが増える。こういうのは本当に根気の必要な仕事で、なん十本も直すとなると複雑差が何十倍にも増す。お正月なのでじっくりとこういう時間の掛かる作業に取り組めるのが幸いである。

今年は大雪なので、近所の家も帰省されている家も少な目かもだがあまり織機は動かせないので立ち上げや準備作業に時間を使う。今年の場合、糸選びなどもかなり慎重に行っているので本当に織れないというような織物はあまりないのが幸いで、本当に織れない織物にぶつかるとそれ一つですべての仕事が雪崩式に納期遅れになってゆくというのも今までに何度も経験したこと。

今は糸を支給されて織る仕事はほとんど受けていないけども、糸支給の仕事の話というのは織れない問題が糸や糸の準備などにあったりすることが多く、そういう問題を機屋が織機の調整で解決するというのも理不尽な話で、そのあたりが単に織るだけでなく麻織物を作るときのノウハウみたいなもの。企画されたものを規格通りにやってできたらよいけども、できないような規格も案外多かったりして、それは企画の問題でそういうのが本当にリスクの高い部分で、思い通りの結果にできなくてもお金が払えないと企画の仕事は難しいあたり。一つのやり方にしぼって進行するとそういう壁にぶつかることが多く、柔軟な対応が必要なことが多いが、試作に関しても費用とか納期とか相当の柔軟さがないと企画というものはすべてが台無しになって振り出しに戻るとかが普通。染めた糸の色が違うだけで同じ規格でも織れないことが多く起こるのが麻織物の世界。林与は色によって染色方法も変えたりすることも多い。色が白と黒では色の違いだけでなく、まったく別の糸であるみたいな物性の違いが出てくるのが麻糸の特徴で、そういうのが先染め織物の場合には厄介だったりするもので、問題解決に時間とお金が掛かる話になる。


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