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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

本麻織物

2022年01月27日

麻に詳しい人なら日本の着物の世界の麻織物が、普通のリネン織物よりも何倍も高い世界がだったりするのを知っておられるだろう。昔からの麻織物の業界のものからすれば、リネンは一ドルが360円の時代でもそれほど使うのが難しいこともなかった。手績みの世界を知っている日本や韓国の麻に対する高級思想は世界で一番くらいだったろうと思う。

今でも普通に使っているラミー100番とかはリネン60番手の3倍くらいするし、そこに高級な糊付けをしたりすると、ラミーの細番手織物はリネンよりも糸からしてキロ当たり6倍くらい高い世界になる。高級すぎて一般では見ることもあまりないだろうけども、ラミーにはそういう世界が細々ながらあったりする。原料が高いだけでなく織るのがリネンの何倍も難しい問題があったりして、細番手のラミー織物100%は将来的にはアパレル向けでは消えて行く流れになるのではないかと思う。特に先染めになると整経も相当難し話。

ラミーとリネン限らず、麻の先染めも将来的には生産は難しくなってゆくだろうと思える。例えば、白い糸と黒い糸の収縮差などの問題があって、先染めで大きなチェックを作ったりするとその色の組み合わせは提灯のような生地に仕上がってしまったりと、染料というのは麻そのものの物性を変化させてしまうので、同じロットの糸を使っても、色の違いで収縮差が出てくるとか。同じ程度の濃度の色の組み合わせだと問題は少なかったりと、デザインがそのまま問題なく先染め生地に落とし込めるとは限らないのである。下手をすると物性で引っかかって全滅とかも普通にあるので先染めの世界というのはなかなか難しい。

20年、30年前に普通に作れていたものが、もう今は作るのが難しくなってしまって、もう見かけることもないほど高価になってしまってみたいな。本麻の先染め織物とか。作れる時間があれば時間のある時に作って残しておきたいなあと思う。近江湖東産地の特色といわれた本麻の細番手先染織物の世界は技術としては残っていてもそれを形にして流通させることは本当に難しくなってしまっている。糸の問題などもあって、2000年ころからそういうのを感じてきたけども、あれからさらに20年。そういう織物が日本の麻織物らしいと言えば日本の麻織物らしいのだけども消えゆく世界なんだろうと思う。

将来、温暖化が進んで、エアコンの電気使用制限とかあったりすると、細番手ラミーの涼しさが生きてくるかもしれないけども。空調の効いたオフィスでは、本麻のシャツって肌になじまない。汗をかくような夏らしい環境も少なくなって、ラミーよりもリネンのほうが一般的には好まれる傾向がある。昔から麻織物をやってきた流れを持っていると本当に残念な話である。今、60代以上の年配の方は高級なラミーのものを探してくださったりするけども、それは昔の麻の高級な世界を知っておられるからだろうと思う。高級な着物向けの需要というのは減ってゆくだろうとは思うが消えることはないだろう、地元の麻組合さんでも、本麻の小幅の先染めなど手織りやシャトル織機で織ってられるので探しておられる方は問い合わせしてみられてはどうでしょうか。


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