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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

将棋

2023年01月08日

将棋というのは定石的なものがあって、そういうのから外れると負けやすい。織物の生地にしても同じだったりもして、定石的な定番の商品のものづくりがあって、その基本が大事だったりするところがある。経験者でもそういうのを大事にできなくなったりするので、定番的な織物を織るときにも想定通りには作れないことが多くなる。そうなってしまうと定番商品をつくるのが精いっぱいとかで、経験者でも、定番商品をつくるのも危うくなると織物の仕事は難しくなる。

特殊な規格のものづくりは、失敗のリスクが高いので、将棋でいう定石的な部分を大事にして進めないといけない。商品企画で、織物に詳しくない方が企画する生地というのは思い付きとかアイデア重視で基本を度外視していることも多く、そういう織物がなぜ市場にはないのかというのを理解できていなかったりすることも多い。よくマーケットの専門家みたいな人のアイデアもそういうのが多すぎて、問題が起こったときにはそれはプロが片付けてくれるみたいな感覚で、特殊な成功事例の表面を語っていたりとか。

天女の羽衣と呼ばれる世界最細番手のポリエステルの生地があって、それが世界で一番薄い布。展示会などでも有名だったりもするけども、その裏の話というのは天池合繊の社長の話を、滋賀県の文化産業会館でお聞きすることがあって、なるほどなあと思った。もともとその生地というのは、アパレル用に作られたのでもなく、資材織物を得意としている天池合繊さんが、カネボウが当時の最先端のディスプレイ用に開発したその糸をカネボウの繊維撤退の時に譲り受けて、それをストール向けに形にしたものが天女の羽衣として繊維業界で世界で一番軽い布。

その裏には、当時行った何億円もの設備投資などの問題など抱えながら、その問題の中からそのようなアイテムを生み出したというあたりがあって、また、白い生地に終わるだけでなく、インクジェット設備も備えて、カラフルなストールの世界を商品化して、現実的な商品化。商品化するまでの設備投資や流通までもしっかりと成り立たせてこそ、失敗に終わったプロジェクトの何億円もの設備投資がようやく回収できるような話で、他の会社が真似しようと思っても真似もできないような裏の話。

プロジェクトの失敗を失敗で終わらせずに形にしていくような力こそが地力で、作る側としては、成功の成果だけを求めていては、さらに上の世界は望めなかったりもする。作る側が成功の成果を求めるときに、簡単な方法で成功するというような安直な考え方があったりもするけども、それは誰でも真似ができる話で、それがすごいすごいとか言ってもしばらくすればそれは普通のものだというのが分かってしまう。そういうビジネスモデルは長続きはしないだろうと思う。


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