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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

利益重視のアウトソーシングと偽装の横行

2023年03月20日

林与に仕事を下さるお客様で、林与の語る現実的な部分に本物を感じてくださることが多い、繊維業界というのは一番の謳いが偽装でなりたっているような熊本のアサリに近いような状況。それは日本の繊維業界の大手でも同じレベル。真実を語ると高く売れないから高く売れるような謳いを語ってほかではありえないものに化かす。

たとえば、自社プロジェクトの5000エーカーのオーガニックコットン農園の話も問題が発覚すれば、単にリソーサーから仕入れてただけということを社長がバラしちゃったり。あれれ、ハンドピックされたコットンという謳いも、リソーサーから仕入れて検査機関によるオーガニック認証ではハンドピックとされたかどうかなんてことは検査項目にないはず。すべてオーガニックコットンを謳った5000エーカーの農園開発プロジェクトですら、Мはやりますみたいな働く人のための農園開発ですらあの10年以上PRしてたことはなんだったのという話で、そういうプロジェクト自体の記録すらもがウェブからも一切消えてしまうような話。日本の大手が生み出した偽装だったということだろう。

アイリッシュリネンも同じくで、林与ですら1990年代はもうアイリッシュリネン糸の入手が難しくなり始めていて、北アイルランドでも1990年には昔アイリッシュリネン産業に携わっていた人たちの語り部プロジェクトが始まっている。2000年ともなるともう糸を探しても見つからないような状況、でも、日本国内では、北アイルランドで紡績されたアイリッシュリネンが普通に出回っていた。でもそれは調べたら中国紡績の糸だったりして、北アイルランドで紡績されたものでもない。すべてアイリッシュリネンというイギリスのそれほど高くないブランドの方も2000年過ぎに林与にこられてアイリッシュリネンありますかといわれて、アイリッシュリネンは流通もしておらずもう手に入らないから、ありませんと答えている。そのブランドの方もアイリッシュリネンがもう手に入らないことを知らないという現実。林与の付き合いのある昔からの麻関係の糸商社の人たちは正直で、もう探してもないというのが共通の認識だった2000年。ネットなんかでもアイリッシュリネン糸を探しに北アイルランドに向かわれた人が手に入らなかったという話で、すべて整合していたのだけど、日本では大手メーカーが生み出すアイリッシュリネン幻想が独り歩きして、消費者はそれを信じていた。一部の機屋もそれを信じていて、それを一番の売りにしていただろう。ブランドなども一番にそれがアイリッシュリネンであることを謳いにしてそれを信じていた。

糸商の人でも昔からやってない人たちは消費者レベルの知識で商売をされていることが多く、また、知っていても売るのに食べていくのに苦しんで一度手を染めてしまうと引き下がれなくなっての世界もあったりで、アイリッシュリネンと謳うことで簡単に売れることに味をしめてしまう業者さんも多い。南アフリカで紡績されたものが、イギリス経由で、イギリスでの出荷証明を使ってアイリッシュリネンの証明に使われたとかいう話も聞いたりで、高級ブランドもなにをやっているんだという話も聞いた。

ベルギーリネン糸も太番手はベルギーで作っていて、そこはもともと中国エジプトにフラックス工場を持ってやってきた会社、そこに日本の商社が入ってベルギーリネンをPRすると、ベルギーのリネンに化ける。太めの味のある系の紬糸などはベルギーで今も作っておられるが、高品位な糸は中国糸で、それがベルギーに輸入されて、ベルギーから日本に販売される。そうするとベルギーリネンの糸という日本で神話が生まれる。ベルギーで生地は織られていてリベコが有名。

オーガニックコットンに関しても、もうインドでは、遺伝子組み換えの種しか入手が難しくなっている。でも、オーガニックコットンでは遺伝子組み換え種子を使っていないということが謳いであったりするので、認証機関自体が正しい情報に努めないといけないのだけども、成り立ちにくくなって指摘があると、繊維レベルで判別する方法はないから大丈夫というような素人が考えてもおかしな説明を、学者たちが集まってしているが、プルトニウムを飲んでも大丈夫とか、農薬を飲んでも大丈夫とか学者たちはいうので、学者のいう安全性とはその程度のもの。

正直に、中国紡績糸では高く売れないというイメージがあるけども、林与の場合には産地偽装はしないように心がけているから、中国紡績の糸は中国紡績の糸ということで、原料のフラックスはヨーロッパとか、私の知りえる限りで正しい情報を業者の方にも伝えるようにしている。そして、それが消費者騙しにつながらなければよいなあと思う。

林与が、それほど大きな規模えない量産をするときにもいろんな問題があって、大手の何千メートルが普通のところだと検査引っかかったりしたらどうしているんだろうと思うことも多いが、ある方が、検査なんて通ることはほとんどないから書き換えているといわれて、大きくやっておられるところは、そうなんだろうなあと。そうでないと2か月での生産で検査も取って納期厳守とかは難しい話。林与なんかは、再加工してもらう交渉で、加工工場にも手間を掛けるし再加工しても通らないときには再々加工とか。だから、もうアパレルの納期のシビアな仕事は受けないようにしている。

カシミヤ偽装の問題なんかも、百貨店の素人バイヤーさんが海外に行って、カシミヤと書いてあって1000円のものが海外だとあふれているのだけど、それを信じて仕入れて10倍20倍で売ったりで、実際はカシミヤが使われていないが発覚して、痛い目にあわれた。それからは、業界ではカシミヤの品質件背が非常に厳しくなったと聞いている。昔の日本のオレンジジュースが粉ジュースだったのと同じで、海外ではそれほど悪気もなく、しかも手ごろな値段でうられているのだが、それを日本人は10倍、20倍に化かそうとするから、日本でのカシミヤ偽装が生まれるのである。偽ブランド物が海外では安く売られているけど、それを安く買って、百貨店で売るのとカシミヤ偽装問題は同じ問題なのである。

着物の時代から偽物をつかまされることが多いので、着物の時代というのは信用できる仕入れ先から仕入れるということが非常に大事だった。今の証人というのは、地元の物を全国に行商して回ったので、自分の足であるといて反物を届け信用を築いていった。相手も話を聞けば、その反物は親戚が織ったものでとか、単なるラベルじゃなくて、ホントの話が大事だった。

織物は商品かもしれないけども、生地開発の話や、それを作るときの苦労話などは現実的だったりする。国内で、普通に本物がありふれているように思えるけども、本物というのは案外手に入れることは難しいこともあって、日本の麻織物の本場といわれる近江湖東産麻布も織っているのは林与のほか数軒で、産地の特色といわれる細番手先染め織物となると、林与が産地では一番織っているとは思うけどもそれでもすごく量は知れている。

繊維業界では、大手ほどブラックボックス的にありえない謳いで売ることが多い、蓋をあけてみると実態がないものだったり。狂牛病のときには、大手の牛丼屋の入り口のドアに、その牛丼屋はその牛丼店専用牧場で育てた牛肉を使っているというポスターが張られたけども、それすらも嘘で単なるアメリカのショートプレートだったりもした。熊本のアサリも実質輸入アサリを代用するような形で30年も日本の8割の市場を占めて来た。

大手製鉄会社も、何十年も強度偽装で大工センターで売られているJIS1級程度の強度のものを、要求される特注の何倍も強度のあるものだと多くの意自動車メーカーや建築メーカーに販売し偽装続けた。一番の売りの強度が偽装。汎用品を強度を満たす特注品であるとできるはずもないことをいって商売していた。

石油業界も各ブランドのスタンドが、ブランド独自の名前でハイオクを売ってブランドごとの特別な性能をもったものだと売っていたが、どのスタンドのものも汎用ハイオクで一緒だったりような偽装表示を何十年もやっていた。

もうどこの業界の中の人でも真相を知らない人ばかりになった感じのする30年。バブルの時はまだ、高いなりに本当に価値のあるものが流れていたが、自分で作らなくなり、在庫も持たなくなり、一番安く手に入るものを安く引っ張ってくるというのが日本のビジネスモデルの標準なのである。アメリカでマクドナルドのハンバーガーのビジネスモデルが、世界で一番安い材料を探してきて安く売ることだみたいなのを授業で学んだけど、日本ではそれほど安くなかったので不思議に思っていたけど、その後2002年に日本で59円とかでハンバーガーが売られるようになり、安く市場を支配するビジネスモデルというのは本当だったんだと感じた。

バブル後は、サラリーマンもアルバイトのようなもので、大手では経営者ですらころころと代わる。利益重視で、数字だけしか見ていない経営というのがものづくりを失わせ、在庫を持つことを悪とするだけでなく、消費者を騙すことを招いて、まともに普通に真実を語って売ると相手にされないような日本市場。一番のうたい文句で消費者を騙すことが商売というのが日本の店頭、まだ100円ショップのほうが安くて正直で良心的という結論になるんだろうか。


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