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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

たくさんの織機

2024年03月09日

林与の工場の中には30台くらいの織機があるけども、それぞれの織機の機の規格は異なる。それが、小ロット多品種を機の載せ替えをせずにこなすための手法の一つ。たくさん織機があるとどうしても、電力容量の関係で高圧の契約が必要なのだけども、数年前にブレーカー契約にして低圧に変更して、毎月の保安点検も必要なくなり、トータルの維持費も下がり、すごく、電気設備の管理が楽になった。

ブレーカー契約に変更をするのも田舎だと詳しい方が少ないのだけども、同級生の友人が電気工事の会社を経営しているのでブレーカー契約にしたいと頼んだところ、林与が中古で安く手に入れた電子ブレーカーを電力会社の検定らい、もしかしたら電子ブレーカーがそろそろ寿命なのかとも思ったり、雨が降ったから外の電気メーターのあたりが漏電したんじゃないかとか心配したが、単にインバーターの遊んでいたアースの問題だったみたいで、今はブレーカーが落ちることもなく、問題の無い状態。

そういう大きな変更というのはやってみないとうまくいくかどうかわからないところがあるのだけど、たとえば、電子ブレーカーの容量が小さすぎたらブレーカーは落ちまくるだろうし、容量が大きすぎたら基本料金が必要以上に毎月支払うことになる。大体整経機、チーズワインダー、シュワイター、シャトル織機5台くらいレピア3台くらいを同時に動かす想定で、このくらいだったらぎりぎり大丈夫だろうと思った容量がうまくブレーカーも落ちずに使えていて正解な感じで、電気代も高圧の時よりも抑えることができて、もっと早くやっとけばよかったなあと感じた。

インバーターなども今は非常に手に入れることが難しくなってはいるけれども、これも7年とか前くらいに10数個、中古で状態のよいものを買っておいたので、そういう先行投資が役立っていて、安心して織機を動かすことができる。織機も固定資産に入るので、固定資産税の対象であるが、まあ、それは仕方ないこと。フルですべての織機が動くかすのが当り前なら、高圧のディマンド契約でよいのかもしれないが、働く人が限られていて手間のかかる織物の場合には動かせたとしても同時に10台も動かせないだろう。同時に5台から7台くらいが動いていれば林与的には大満足な手間な世界。

エアジェットをいれられている会社で仕事が少ない時には、1か月まるまる仕事をしないで、電気使用量をゼロにして基本料を半額ですませるみたいなことをやられてる話を聞くほどに、織物に掛かる電気代というのは馬鹿にできない金額であったりする。蛍光灯も工場の中についているだけでも500本近くになるだろうから、全部つけたりすると織機以上に照明のほうが電気を食う話で、普通所家の何十件分の蛍光灯の数。LED化をしたのと、それと、人感センサー付きのLEDをチーズワインダーのところには使うなど、作業する時だけ電気がつくようにして節電。

LED化も7年ほど前に、スタッフのお父さんが電気工事士の方で、蛍光灯の中の安定器を取り外してLEDが使えるようにしてもらったのが生きていて、依然と見違えるほどに作業が明るくしやすくなって、黒い糸も筬を通しやすくなった。この5年でもあのときにLED化しておかなかったら織るのに何倍も苦戦をしてしまっていた織物が多かっただろうと思う。あのときに、やってもらって本当によかったと感謝している。

同じタイプの織機を多く持っていることは、たとえ1台が壊れてもその1台を部品取り用にすれば他の何台もの織機が生き延びられる可能性がある。また、シャトルを含めた消耗品も、なるべく、今後20年分くらいはもつように買いだめをして、林与が織りつづけられる間は部品で困らないようにと考えている。シャトルはもう一回30丁くらい作っておく必要があるだろうか、それだけでも50万円くらいはするだろうから、心づもりは必要だったりする。高いシャトルはそれなりに丈夫な木でつくられているので長持ちはする。

林与のシャトル織機の問題は、織る経糸が麻なので経糸切れ時にシャトルが飛び出しやすく、飛び出したシャトルが織機に挟まれたりするとシャトルが壊れたり、あと、片四と呼ばれる、片側4丁杼なので、前後運動だけでなく日箱の上下運動があるので、日箱に挟まれやすく、その理由でも壊れやすく、デニムなどのオートチェンジや単丁のシャトルよりもシャトルが壊れやすく、予備のシャトルをたくさん持っている必要がある。

今、機料屋さんが貴重になっているというものにタイイングマシーンがあって、日本中で40年前のタイイングマシーンが今も現役で使われているのだけども、中古のタイイングマシーンの出物が少なく、タイイングマシーンを修理するための中古部品が手に入りにくいという問題があるそうで、ほんと、いろんなものを使わなくても残しておかないと壊れた時に部品が手に入らないという問題がある。

昨年はシャトル織機のドビーを修理したけども、ドビーの中のプラスチック部品も経年劣化で壊れやすく、入手することが難しいようで、自分で3Dプリンターかプラスチックの板を熱で溶かして代用品を作るかしないといけないだろうなあと思ったりしている。

たとえばシャトル織機が1台あっても、その織機の価値というのは、その織機の維持のことを考えると部品が手に入らないと動かせなくなる可能性は高いだろう。でも、何台か同じ織機を持っていて保守部品もそれなりに準備しているなら活用はしやすいし、例えば、1台の織機のために何かの部品を最低男十個つくらないといけないとかなると迷うが、何台もある織機のためなら新規にシャトルでも30丁つくろうとかは考えやすいと思う。

林与にとっては仕上がり44インチの織物が織れる織機が一番便利で、それより狭い幅だとアパレル向けには難しく、出物があっても手をださないだろう。小幅のシャトル織機も、おじさんの家の倉庫に10台以上あるだろうと思うけども、何十年も動いていないままで、その織機もいつか林与の工場の中に移設しないといけない話。

いろいろと織機の話も書いたけども、一番不足しているのはそれを動かすことができる人という問題で、織機の構造を分かっているだけでなく、地道な織物の作業をてきぱきとこなせるような人で、林与の織機はそういう人たちに出会い、活躍し続けることができるのだろうかというあたりが一番の問題ではないだろうか。

織機を昭和のひと世代見守ってこられた方々が引退される今のタイミング、日本の織物工場も廃業のラッシュ、ひと世代守ってこられたものを引き継ぐということはたやすいことではなくて、新品でもない部品もなかなか手に入らないものを自分自身がメンテしてゆかないとならない。今の時代は、織物の現場には答えを見つけてくれる人も教えてくれる人もなく、自分自身が自分自身で問題の答えを見つけて解決して行けないと、織物をつくることはできないような厳しさがある。今の若い人たちにそういうのを求めるのは酷な話だなあと思うのは思うし、織物が織れたところでよほど器用でなければ、織物で食べていくのは難しいだろうと思う。林与も織物だけじゃなく、少しはミシンを踏んだりもできるので半端な生地などからでも小物をつくったりできたり。試作までは自分でやって規格を決定してあとは業者さんにつくってもらったりもできるけど、布はつくれども売れなければゼロではなくてマイナスだし、マイナスも経験してそれを乗り越えて続けてプラスになるまで試行錯誤できないと残っていくのは難しいという厳しさは普通にあるだろうなあと思う。

そのほか、糸の在庫なども細番手のラミーやリネンの糸などはある程度在庫をもっていたりするし、幻といわれるアイリッシュリネンの糸も手績み糸もそれぞれ1トン近くはあるだろう、また、近江本麻上布の昔の絣の反物も100匹くらいは残っているだろう。通常の番手の糸に関しては高騰はしているものの国内在庫はまだ糸商さんに残っているし、世界NO1,NO2といわれるリネン紡績工場がなくならない限りは、将来に渡って通常の番手は手に入れることが可能であろう。

今は構えないモノづくりが流行ってはいるけども、やはり20年先くらいまでは考えて、外的要因にはなるべく左右されないように、織物を生産を維持してゆけるような柔軟性すらもが必要ではないかと考える。そのためには、設備、原材料なども、在庫を持つことが悪いようにいわれる今の時代ではあるけども、備えておく必要はあるだろうと言える。


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