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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

シャトル織の耳

2011年01月23日

シャトル織物というのは、しっかりとした耳があります。この耳というのは日本では上手に昔から使われてきました。着物においても、この耳をそのまま使うことで反物の価値を引き継ぐとともに縫う際に厚くならない処理ができ肌への当たりを抑えることができるのです。日本だけでなく、アメリカなどでも、セルビッジのジーンズなども耳を上手に使い素材の価値をうまく引き出しています。縫製する人が職人だった時代の業だと思います。今では、縫製の現場で職人は少なくなってしまい、生産効率優先で自動化されたことも素材へのこだわりが少なくなってしまった原因の一つではないかと思います。

横無地のシャトルの織物の場合には、50cm間隔などでシャトルが変わります。ボーダー柄など、糸がなくなってしまわないときには、自動的に糸と糸が結ばれるのではなく、糸が伸びたままシャトルはシャトルボックスでそのまま次まで待機します。そして、また出番になると糸が出るので、出番が10cm間隔だったら、耳のところに10cmの糸の渡りができるのです。

織物を検反するときにその渡りを綺麗にカットしてあげれば、綺麗な耳に仕上がりますが、ギンガムチェックなどの場合、1cm間隔ですと一つ一つのカットは大変ですので、そのままにしてあることも多いものです。

日本のシャトル織機の小幅織物の耳というのは、着物などで使うことを前提にしたものですので綺麗なことが多いのですが、海外のシャトル織機の耳というのは、手機のものは綺麗でも、力織機で織ったものなどは耳は使わないことが前提で織られたものが多く、ボコボコしていることが多いのです。

シャトル耳の付いたものは、シャトルで織られたものですので、糸に余裕がありますので、生地がふっくらとしていることが多いと思います。着物用の織物を生産するときに、広幅のレピア織機で織ってカットを入れて3つに分けるというような作り方もあるようですが、そこまでして、小幅っぽくするのに力を入れるくらいなら、広幅の生地をそのまま裁断したほうが効率が良いような気もします。

広幅のシャトル織物でも、6Mほどあれば左右の耳は取れますので、小幅の織物と同様にお使いいただくことができるかと思います。また、耳の色というのも織物をつくるものが注意していないといけず、黒い着物に使う耳は黒にするなど、同系色にしておくことが良いのです。それは、外に色が響かないからです。白の時には、生成りの耳ではなく、真っ白な綿の糸を使うなどです。

また、耳の糸は、麻織物の場合には綿を使うことが多いのです。よく、麻糸を使って欲しいという依頼がありますが、出来ないことはないです。でも、耳というのは片側が生地がないのでルーズになりがちでその分糸密度を上げて調整し、シャトルが左右に動くときに耳を内側に引っ張りますので、どうしても他の部分よりも高密度になりがちで、糸に伸度が必要なため、麻の単糸を使うよりは、綿の双糸などを使うほうが糸切れが起こりにくいのです。着物などに使う場合、耳の肌辺りをよくするために綿のほうが良いのです。

縫製を依頼されるときにも、麻のものを麻糸で縫製してもらえないかという話があるのですが、それは良くないというお話をよくいたします。こだわったとして、綿糸でしょうか。長くお使いいただく場合には、ポリエステルなどの合繊の糸のほうがより、強度がありますので、アパレルメーカーさんなどはポリエステルのミシン糸を使用されるケースがほとんどだと思います。

麻の布というのは、加工時に10%から15%ほど横方向などは縮んでいることが多いので、そこを麻糸などで縫ってしまうと、引っ張って生地が伸びたときに、糸が切れてしまうことがあるので、生地の伸びに耐えるような強い糸でないといけないのです。かばんや小さな小物など引張りが少ないものなら大丈夫かもしれません。


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