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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

羽定規

2012年05月04日

倉庫に行ったときに羽定規の束を見ました。段ボール紙を束ねた感じのものでその側面に模様が書いてあり、その一枚が一本の糸に対応をしているのがわかります。これは、いつのものなのでしょうか?その後の羽巻捺染の道具と比べて素朴な感じがし曾おじいさんの頃のもののような気がします。林与に羽定規があったのは驚きです。

日本麻織物工業組合の資料も出てきました、こういう全国規模の組合に入っていたのも、生産調整と絡んだ話であったのではないかと思います。いわば、麻織物に関しても、お酒や米の販売業者のような許認可制がアバウトな状態で生きていた時代です。

倉庫にあるハギレなどを観ていても、林与の昔の近江上布の絣の着物地というのはどれもがしっかりとしています。「きぬあさ」と呼ばれるクラスの細い糸を使用しながらもしっかりとしているのは高密度に織り込んであるからです。しっかりと織って細い細い糸で織ってあるのに透け感というものはあまり感じません。緻密に織ることの手間隙というのはまさに職人の魂が感じられ人の力を超えた神業を思わせます。糸からしても昔の人だからできたものづくりだと思います。

不思議なのは今の時代の強撚の麻織物がちりめんライクになるのに、昔の本麻の糸というのは、フィラメントのようなハリのある強さがしっかりと出ていることです。これは同じ強撚の糸でもまったく違う糸質です。日本人が本麻らしいという感触の定義というものが何なのかはそれぞれに違うかと思いますが、林与にとっては、本麻らしいひとつの顔が昔の近江上布に見られ、また、別の本麻らしい顔が、甚平生地にみられ、また、別の顔が、今のアパレル向けの手もみの100番手にみられるのです。

私が子供のころの飯台に掛けてあるのも絣織りの麻布でした、こちらは少し太目の糸で荒めに織って雑貨っぽい透けたガーゼ調の麻布の表情をしていました。それはそれで味はありますが、着物用の絣の上布とはまったく違う世界です。麻襦袢生地などは肌着感覚で薄くスムースなタッチです。一重に麻のものといっても用途に応じていろいろな織り方ができるもので、洋装の時代になってアパレル向けのものというのは、本麻にしましても100番手以上のクラスの細い番手を縦横に少し軽めに織りやわらかく仕上げることで、新たな時代を作り上げました。甚平などは着物の世界の流れで番手を落としてしっかりと織り上げるのが基本です。本麻なので、しっかりと織ってあってもTシャツとは比べることができないほど涼しいものです。


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