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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

数値化

2013年05月26日

今日は朝、大阪からお客様がお越し下さり、食事のあとお客様が北川織物さんで生地を見られるということでファブリカ村にご一緒しました。久しぶりに、お会いした北川さんのお母さんも、私以上に林与の昔のことを良く覚えられておられ、懐かしいお名前がいくつも飛び出してきました。

ファブリカの上の部屋で陽子さんが作れられた生地を説明されるに、自分ひとりだけでなく昔一緒に生地をつくられたお父様の思い出なども生地には詰まっているのが良く分かるのです。思い出の詰まったその生地を価値がわかって欲しいという方には、敢えて販売される。布というのはつくろうと思っても一つ一つそう簡単じゃなく、大事に使って欲しいという気持ちよく分かります。

他のアパレルさんとの昔のやり取りのお話なども、生地というのは使うアイテムによって基準が変わるなど単にデザインだけではなく用途を考えた物性の考慮など、私も展示会などでもよく、ストール生地を服に使いたいとデザイナーさんの方がおっしゃって下さり、洋服でありがちな根本的な問題をご説明することも多いもの。

昔の近江上布なんかも今だとアパレル向けには硬くてごわごわだといわれますが、それは着物の世界の規格としては完成された形の極みで追い求めた挙句の最終形であったりもします。リネンにおいても形をつくるところからはじめ、何十年も同じ形を守るのも、今では、どこもがやられて同じに見えても、生み出してきた歴史なども考えると、林与にとっては、別のところで大きな意味のあるところです。

マーケティングの専門家が大好きな世の中にないような布をつくればつくるほどそのリスクは累乗的に増え、マーケティングの専門家が目を向けたがらない根本的かつ基本的なものづくりの問題に繋がるもので、今の時代が検査検査になるのも布から布の物性を感じることができないものづくりにあろうかと思いますし、検査よりも商品を作ってしっかりと叩いてみることが大事という基本プロセスの大事さを感じます。

検査機関に検査プロセスの意味のなさを理解されていないことが多く、何十年の実績があり売れ筋の布が検査では落とされるというようなパラドックスもあって、洋服のプロであるはずの世界がそんな数値に縛られるというのも酷な話です。

世の中にない斬新なものを出していこうとすると、そういうパラドックスに気がついていないと駄目なのですが、本質的なところに解決方法が見出せたとしても、無味乾燥なものづくりでは数値に縛られ、たとえば色によって物性が異なるなどのトラブルだけに終わることも多いものです。色によって打ち込みなどの規格を換えるなどの匙加減も実は昔からあった手法なのですが、今の人というのはそういう匙加減しらないものです。

色の問題に関しては、数値に縛られたものづくりでは、何らかの避けることのできない違う要素が存在するときに、解決方法がないのです。たとえば、黒の織物をつくるのと、白や生成の織物を作るのでは、素材そのものが染色物性も化学変化的に安定している合成繊維では同じかもしれませんが、麻織物では今の染色や染料の特性を考慮するとその色による違いは、染料の選択を替えるなどして物性を高める必要があるのです。

これは、今は、どこの染色工場で染めても同じ傾向がでる感じ。分業の専門家が集まると起こりがちな問題で、世の中にない良い物を出していこうとすると、色が違うと規格が違うというのも、実は色による染料の物性の違いを考えると当たり前のことだったりするのですが、そこまで考えるものづくりする人は完全に超えた試作を積み重ねて積み重ねてのモノづくり、数値と規格の両方に縛られると改善方法も無くどこまでも深みにはまることになります。

洋服などでも数値をみて安全というのではなく、一度試作していただくことを前提とするのが、プロがプロであるがためには、押えておくべきポイントではなかろうかと思います。デザインなんてものも感性に基づくもので、数値基準で縛るそれ以前のところで、大丈夫大丈夫でないという判断をしないと、ヨーロッパの数値に縛られないクリエーションの世界と比べると見劣りしてしまうものです。


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