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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

季節性

2013年12月07日

今日は東京のアパレルブランドの方が朝一番で起こしになられ、展示会だけでは見ることのできない色柄のものを、会社までお越しになられるとご覧いただくことができるので、それが滋賀県まで脚を運んでもらうメリットではなかろうかと思います。

今、産地はシーズンに入ってどこもが手一杯な状況にあります。季節的な要因が絡んで、春夏の仕事の少ない時期に余剰人員を抱えることができず、職場の人数を少なくしているがために、シーズンに入るとすぐに手一杯になってしまうという状況。これは決してよい状況ではないといえますが、今の時代の小ロット多品種のものづくりに順応したがゆえの結果であろうかともいえます。

小ロット多品種の生産システムは、いつでも同じものをつくるのとは違って、意図的に違うものを正確に作り分ける必要があり精通した人が必要なものです。小ロット多品種が、印刷のようなものであれば設備は同じで生産量が違うだけみたいな程度ですが、織物の場合は、材料、染、機、など一から用意しないといけないことが増えてくるもので、本格的なものは、見本を作るときでも何ヶ月も掛けて作ることが多いのです。

どちらかというと縫製は自動車や家電のようなアセンブル産業と似ていて、織物というのは電子部品製造や基盤製造のような製造業に近いイメージではないかと思います。CPUやメモリなどの電子部品分野も撤退して久しいのは、汎用性が高いがために価格競争に晒されやすく、需要が安定していないと成りたたないという事情があろうかと思います。縫製工場が案外たくさん残っていながらも織物工場というのは少なく、さらに紡績工場となると日本では本当に難しい業種になります。

紡績業が撤退をしただけでなく、糸在庫なんかにしても、国内に糸を在庫するということが悪であるあのようになってしまって、糸商さんが糸がないということがよく起こりえます。長年のお付き合いのある糸商さんというのは品質の高い糸を持っておられることが多いので、そういうところから積極的に糸を買おうとするのですが、高い糸というのは使うところが少ないので、安価な糸に流れてしまわれ、どこでも同じ糸しか入らなくなるもの。日本で流通するアパレル向けのリネン糸なども世界の10社程度の糸が99%ではなかろうかといえるほどに日本品質で普通に織物に使える糸というのは限られてしまいます。

展示会に行くとリネン糸メーカーというのは何十社もあり、ブースにセールスにも来て下さるのですが、糸や織った布をみてもマットな感じの仕上りで、私の求めているリネンの品質や表情とは一見して違うものです。アパレル向けに使おうとすると見た目だけでは駄目で製造方法も非常に重要なのです。糸メーカーの人がそのあたり理解できているとまだ安心ですが、糸をつくる糸メーカーの人が糸を作るときに諸問題を想定していないと生地となったときや洋服となったときの見えない品質の部分で引っかかってくるものです。

実際の消費者というのは、色が少し落ちても当然のことと捕らえ、細かい品質よりも着心地や風合い重視だったりするのですが、日本の検査というのは合成繊維の工業検査的なところがありますので、検査に引っかかるのも当然の検査手法がとられていたりするものです。そろそろ検査手法も素材のプロの目で素材ごとに見直すときがきているのではなかろうかと思います。リネンのものを水洗いするのが前提の時代になってきたのですから。

よく、海外のリネン生地がすばらしく思えるかもしれませんが、同じことを日本でやっても品質基準に引っかかって販売すると製造元が大きなリスクを被るか、あるいは、堅牢度を上げたり滑脱をクリアしたり、収縮をクリアするために、特別な技法が必要となってくるものです。海外のリネンだとしかたないということで許されるものです。インポートのリネンの服には品質基準が適用されないのでは、生地の段階でのハードルの高さが数倍違うような競争が後ろにあったりするものです。

海外生地の場合、加工の段階ですでに色泣きしてしまっているようなケースも多く見かけ、素人が染めるに近い直接染料で染めてしまっているのか、あるいは反応染料でもリネンを染める前提で染めていないから染料が落ちてしまっているのを良く見受けるのですが、それが日本のメーカーに許されるなら日本の生地のものづくりも低コストで世界と競争が可能になり、デザイン重視に動けるのではなかろうかと思います。


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