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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

阪神百貨店 生地販売イベント6日目

2016年06月20日

今日はミルツルさんのワークショップ2日目。ワークショップのお客様は、ブルーのワンピースを縫われている。このワンピースのすごいのは本縫いミシンだけでつくれるところで、ジグザグ縫いやオーバーロックミシンを使わない。市販のソーイングブックのワンピースをつくるときは、ジグザグ縫いやオーバーロックミシンが一般的で、市販のものでは普通はそうなのだが、ミルツルさんのワンピースは本格的なテイラードな仕様である。

ミルツルさんのワークショップは、両日とも午前の二人と午後の二人の合計8名の定員が予約で一杯になってしまって、店頭で見本のワンピースをご覧になられて、ミツルツワークショップをしたいとか、ワンピースがほしいといってくださった、お客様が多かった。林与の生地をつかってミルツルさんが作って下さった作品が合計3点ディスプレイされていて広い場所に3点というのは少ないように思えるが、十分に作品がオーラを出していたように思える。ひとつは、3626刺し子を使った作品、もうひとつはシルクラミーにプリントの作品。そしてワークショップのワンピース。

3626刺し子は、ミルツルさんが布を織っている風景を取に来てくださったのだが、前日、縦糸に爆弾が落ちたようなトラブルが発生し徹夜で準備していて、朝から待ちに待ってもらって、午後3時くらいになってようやく織れ始め、織れ始めたと思ったら今までの苦労はなんだったのと思えるほどに、春の雪解けを思わせる気がした布。私のペンティアムプロセッサーがフル回転して、ミルツルさんが描かれた手書きの指図を布で再現した。縦糸と横糸の規格の決定など、最後、布が加工で仕上がらないとどこまで良いかわからないのだが、重たくなりすぎずスリップもしないアパレルに適した程度の感じの布に仕上がるだろうと、キバタ設計し、自分の手でキバタを触って、これなら大丈夫という感じ。キバタを触って、それでよいのかわるいのか感覚がある人というのは少ない。何十年やっておられる人たちでもその判断ができる人というのはいないくらい。私が一番最初この仕事に就いて、織物設計が難しいなあと感じた部分である。色、柄じゃない部分で、後の生地の物性にかかわるところ。

普通は、みんな他の仕上がった生地を真似するのもその判断ができないから。その判断が的確でなければ、機をつくるところから再度やり直さないとならないリスクが非常に高い部分。少し薄かった、少し厚かったで通用する範囲なら良いけど、仕上がったときにその範囲に収まらなければ、出来上がったけどまずい料理みたいなのと同じで食べるのが苦しい料理ということになる。それだけでなく、物性検査で引っかかるとすべてアウトというのが生地創作の怖さ。色柄の創作だと簡単だけど、糸使いまでも含めて創作するといろんな問題と遭遇する。

シルクラミーは、今は途絶えてしまったカネボウブランドのシルクを使用。横糸はスーパーロイヤルラミー。このシルクの糸が林与に残っているのも、カネボウが繊維から撤退することになったときに、作ることができなくなるのを恐れて、日本で手に入るその番手のカネボウの糸を糸商さんに全力で捜してもらって買い押さえしたから、それだけでも数百万円の糸への投資だが、糸の銘柄が変わることが致命的なことが多いので、それは避けたかったというあたり。でも、ミルツルさんの作品をみても、その布の光沢感はすばらしいのは、カネボウブランドの糸だからというところもあろうかと思い。最高な感じの組み合わせの材料というだけでなく、同じく織物規格と加工の選択も自分の経験の中で生み出したベースから導き出されているので自己満足に浸れる布。

ワークショップの中厚地布は、しっかりと織ってあって、コンフォート感のある布。リネンでカジュアル感の世界、ミルツルさんが好まれそうなややしっかり目の生地。売り場では、リネンでもそういう風合いの生地を見かけられることは少ないだろうと思える。色合いも、映えるブルーで、リネンでそういうきれいなブルーは染がしっかりとしていないと生まれない。百貨店の売り場のスタッフの方も、色がいいわあと言ってくださっていた。女性の方は色の好みが敏感で、色もたくさん合ってどの色が良い色でどの色が悪い色というのは本来ないのだろうけど、多くの方に気に入ってもらえる色をというのをわかるわからないの差は大きい。女性の色の好みが分からないと駄目という、布の世界は女性の世界を感じるところ。メンズのカラーがベーシックな黒、ネイビー、茶、グレーなのに比べて、レディースの色というのはさりげなく目立つことも必要。また、ミルツルさんはブルーが好きなのだと思う。


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