for English speakers: Welcome to HayashiyoWelcome to Hayashiyo
リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

1日助かり

2017年12月15日

今日は岐阜に納品に行く予定だったが1日早くあげてもらえたことで昨日出荷でき、工場内の作業に時間を使うことができた。助かった案件である。昨日は夜からレピア織機の横糸の調子が悪いのでテンサーを交換した。横糸の調子がどのくらいが最適なのかを手で感じることができるのとできないのとでは大きな違いがあって、何が正しいのかが感覚的にわからないと仕事はうまくいかないだろう。

麻糸の特徴は切れやすいことだが、いかに切れやすい麻糸を上手に使いこなせるか。林与が冗談でいうのが、私に整経させたら世界で三本の指に入るということ。整経の作業は2年ほど毎日やっていたので。最初の1週間ほどで作業の流れ自体はマスターできるだろうが、細番手の麻の場合にはビームへの巻取りが切れるので難しい。先染の場合には色によって微妙なテンション差があったりする、また、綿ボイルとの交織なども筬通しの密度の均等化などの問題なども一般の現場の人では糸番手の計算をすることができないので解決できないことが多い。

四則演算でできるのだが、それをできる人というのはまれである。工場長をやってもらっていた叔父さんでも糸量の計算は、実際織ってみて、一反で何キロ糸を使ったかということで覚えていた。このあたりが感覚でものごとをする職人的なのだが与えられた作業はできても、自分で仕事を生み出してゆくことができない限界につながる。私自身は何万回と面倒がらずに糸量を計算してきたが、現場の人というのは本当に苦手で誰かがやってくれるという前提がある。

現実、計算ミスがあると大きな問題となるので、正確に計算をこなせないと駄目で、計算をする人間は決まってしまう。こういう計算ができると正確な数字だけでなく、ロスなどの見込みもできるようになり、一つの企画のロス率だけでなく、仕事全体の問題なども見えてくることになるのだが、繊維業界全体を見ても、1+1=2という計算ばかりで、現実は、2のものをつくろうとすると、各工程で20%の原材料のロスが出ると、1.2+1.2=2なのである。これで、1.2+1.2=2.2などの物ができたときに2でないと駄目という卸のお客さんと2.2でOKという卸のお客さんでは、同じ商品でも値段が違って当たり前ということになる。

同じ生地でも完璧を求められると値段は1.5倍から3倍になるだろうし、アバウトでOKだと値段は落とせることになる。値段を決めるのが難しいのは仕事の前に値段を決めないとならないので、そのお客様のもっておられるチームの柔軟性なども値段を決めるときに左右される。問題解決能力があるお客さんだと値段を下げることができるし、問題解決能力がないお客さんだと値段は上がる。

問題解決能力があるお客さんだとすべての布を提案できるが、問題解決能力がないお客さんだと安全な普通の布しか提案できないということにつながる。海外の生地がデザイン性や創造性があり、日本の生地が無難なものしかつくれないのも、日本では生地の段階で問題を解決した生地しか流しにくいというところだろう。海外のテキスタイルデザインのようなものを作れないことはないがそれを使えるアパレルが日本にあるのかというと、検査の数値が重要視されるので没になる。結局、日本の繊維業界では無難なものがほとんどを占めることになる。

ファッションというあたりも含めると日本の繊維業界が後追いになってしまうのも、海外の商品には規制がなくても、日本製に対してはいろんな規制があるからだったりする。狂牛病の全頭検査を国内業者には強いて、狂牛病が発生したアメリカ牛は統計的に10万分の1だから大丈夫とかいうダブルスタンダードの内弁慶な日本スタイルと被る。


ホーム | ショッピングカート 特定商取引法表示 | ご利用案内