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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

年度末のつづき

2017年12月30日

昨日の分の日記の続きです。染を自分でやろうと思ったのは5、6年前のことだったと思う。まず、草木染で再現をしたいなあと思って染料メーカーに相談したら染料店をご紹介くださって、染料店の方は、ボイラーなどの設備がないからやめときなさいという判断。それもプロのアドバイスなのでその代わりに京都の染屋さんの現場を使って染めることになった。

その年の6月に試作をしてもらって順調にひとつ仕事が入ったと思ったら、本生産となるとその方と連絡がつかなくなって、結局、染屋の大将を説得してその正月3日借りることにして自分で染めることにした。正月3日、タイムスの駐車場で寝泊りして、試作したものを自分の手で再現。その後は自分の家の中に染を持ち込んで量産をしたようなこともあって、最後は自分がやらないと駄目だということを悟るに至った。

自分でやると自分が何をやったかがはっきりとわかり、再現性に関しても自分でコントロールができる。外に頼んだときに再現性がうまくいかないのも良く分かるのである。データなどをしっかりと管理しないといけないのだが、職人という感覚の世界になると慣れと勘で仕事をするので、毎回のばらつきが出て当たり前なので、たとえば、試作より色が薄かったら、もうちょっと濃くなりませんかというとなんとでもできるという返答が帰ってくるけど、本生産を1回全滅させてもう一度作り直す話になる。職人というのは出たとこ勝負で責任が伴わないことが多いので再現性の要求される世界では通用しないことが多いのである。

職人の技が上達するとかはよほどその職人がその気になって研究を積み重ねないと難しいだろう。たとえば、どうしても急がないとならない話で、ある京都の染工場に麻の糸染を依頼したことがあったが、加工すると4色が4色とも3分の1の濃さに色が落ちてしまっている。麻は染めたことがあるので大丈夫だ、反応染料なのでフィックスなしでも大丈夫だと自信をもって返事をされていたが、糸で渡してもらったときには色はばっちり合っているのだが、色を合わせるために色を足して合わせてあるような状態で、50度での湯洗だという話。加工工場では70度くらいにあがるので、それをいってもらわないと困ると逆切れされてしまって、50度で湯洗されるという京都のひとつの染工場の技術というのもシルクと麻の技術の違いを知った。糸染めの反応染料の湯洗というと沸騰に近い90度以上のイメージを持っているけども、50度の湯洗を基本とされていると根本的な問題なので改善すら難しいだろう。昔は加工工場さんも90度以上で加工をされていたが、今は70度に落としてやられている。それは持ち込まれる反物の染めの技術が昔よりも落ちているから、90度でやると色落ちなどの問題が出てくるかららしい。

今は状況も変わって来ているが、昔の中国の染めなどは色落ちが激しかったといわれるが同じ問題なのか、あるいはコールドタイプのような水で染めることのできる直接染料とかで染めていた問題だろうなあと思える。水性絵の具にアクリル樹脂を混ぜたようなタイプのアイロンで色落ちをとめるタイプの染料もあったりするが、染や加工というのは同じに見えてもピンキリなので、麻は麻が得意な染工場、加工工場さんに依頼するのが経験や実績などからしても生地の見た目だけじゃないよさがあるだろう。あるいは、自社で生産から販売まで一貫してされているような工場さんだといろんな問題を経験されているので、機屋の抱える品質面での問題なども良く分かってくださる。テキスタイルメーカーがピンチに追い込まれることが織るということだけでなく、糸、染、加工などの外部要因に左右されることも多いのである。


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