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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

経つなぎ

2018年01月05日

昨日は、体験5日目でシャトル織機は安定的に一人でほぼ並行して3台4台動かせるようになって、飲み込みの速さを感じる。あと手の空いたときに掃除してくれたり、シャトルの管巻きをできるようになって、昨日は経て繋ぎの残りもシャトル織機を動かしながら。手織りをされていたということで経て繋ぎをされていたと思っていたのだが、毎回、へ通しして筬と通しして織りはじめておられたということで、経て繋ぎは今回がはじめての経験ということ。

コツをつかまれるまでが時間が掛かるのだといわれ、ちょっと心配をしたが、600本くらいだろうか完走されてへとへとにもなっておられないので、シャトル織機も動かしながらなのではじめて経て繋ぎをされた方としてはすごく向いておられる。一本も間違いもなく作業も進めておられるので立派。

最後に、夜は2時間ほど整経の作業。建てた整経の糸を前まで綺麗にもってきて、整経の筬通しまで。筬通しも完走。手織りでカイコを育てるところから手織りで織物を織るところまでを経験されていたのと、洋服をつくられる方なので、総合力があるのだろう。コツをつかまれるまでが時間が掛かることがあるけども、私の一番早いと思うやり方を教えるとそのまま覚えてくれるのでコツさえつかんでもらえると私の3分の1から半分くらいの作業スピードには到達で、最適な無駄の少ない手順を忠実にマスターなので結構綺麗で早い。今までの手を動かされていた経験がはじめてのことにも生きている。

贅沢ばかり言うと伝統工芸とか丁寧な仕事の世界の方にありがちなペースの遅さを感じ、それを発破かけてスピードアップしてもらうのが私の仕事、正しいままにマキシマイズすることで今できていることの生産性があがり余力が生まれて同じ時間でもより高度なことをできるようになり、特別の高度なものづくりの世界に到達できるのだという、私のものづくり哲学。単純作業がすばやくできないで高度な作業は難しく、単純作業に慣れてしまって伸白のない職人というのは何十年の経験があっても、簡単な仕事も面倒だとか苦手だとかで後回しになることが多く、目の前の必要なことが仕事にならないという仕事に対する甘さが出て仕事として成り立たなくなる。やればよいだけのことなのにやらないという職人にありがちな体質。それこそが食べてゆけない本質で、仕事があっても前に進まないとか仕事が完結しない原因で、頭の中で分かっているとか知っているだけで手や体が動かずうぬぼれてしまって終わり。

私が先代に対して厳しいのも、体や手が正しく動かせず、経営者感覚で人に頼んでこの仕事は無理というところ。職人たちが単純作業に満足してしまってそれを自分が食べさせているというようなばかげた錯覚が、できることもやらない素人未満のものづくりにつながる。知っているだけで満足するのは先生や専門家、学生の世界、実際に形にして成り立たせてゆくのが一番難しいところで、商売で常に悩むのが技術じゃなくて、人の問題なのである。だから機械化するとか単純化するとかの方向に向かうのだろうけど、先進国なら人が高度なことを当たり前にできないといけないのだと思うが、単純なことも面倒がって働くことも嫌がるレベルでは、一般的に見下してしまう新興国の正しく早いものづくりに追い越されて当たり前。

中国の何千人企業の現場を見せていただいたことがある。設備は日本よりも劣っているか同等程度だが、何千人企業の一人一人の仕事の動きが日本人以上の正確さと速さがあり、自分がした仕事に対しての責任感を持っている。ほんと能力があってホワイトなのであるが、それが中国でも成り立たなくなってきている。日本だとその世界はブラックだとされる感覚。甘い汁を吸って搾取している人からすれば自分を正当化するために、満足もせずに吸い上げて、労使間での対立を生む。中国のその企業にしても繊維のなかでは一番くらいの優良な企業だろうけど優良な企業になればなるほどに限界までの優良な待遇をされていて、限界を感じられている。

中国の何千人、何十億円企業の社長が、朝、6時起きとかして朝食も食べず8時にホテルに迎えにきてくれたが、7時ころに朝食を外に食べに出て私の一行が不在で、その社長はホテルの15元日本円にすると250円の朝食が普通で従業員たちを支えられている。だからまだその企業は回っているのを感じる。帰り駅まで送ってもらったその会社でもドライバーをしていた身内だろうか、古参のものというのは待遇も恵まれているのに態度も悪く、そういう社長に対して、自分が上であるかのような社長を見下すような失礼きわまる振るまい、頭がいたいのも分かる。外のお客さんにしても失礼きわまる面倒な対応で自分が会社を仕切っているかのような態度。中国でも悩みは一緒なのだなあと苦労を感じた。本当の敵が中にいるかのような状態では、お客さん下さったより仕事すらもうまく回らないだろう。

私自身もタイミングもチャンスもめぐってよい仕事があったときに、前もって約束ももらっていたのだが、実際に具体的な仕事になると仕事をもったいぶられてしまったことがあって、「勝手にさわるな、いやなら自分で織れ」といわれ、結局、シャトル織機を自分の会社に入れることになった。何十年の経験の人が仕事があって仕事を邪魔することでえらそうにしても、仕事というのは毎日当たり前にこなしていかないと無理なのである。その年は、半年でご夫婦に工賃として1千万円支払えるような仕事だったのだが、そういう仕事というのはその分責任も重く、最初の見本ひとつが2ヶ月こちらが織れる前まで準備もしても織ってくれないような状況では、仕事をやってもらうのは無理だと判断、急遽、林与の会社にシャトル織機を探して入れることになった。何十年の方々が食べて行けなくなっているのに、そういう方々の言うことを聞いてやっていても成り立たないのは当たり前で、成り立たないには成り立たない理由がある。初心に戻ってちゃんと仕事をするところからはじめないといけないのである。


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