for English speakers: Welcome to HayashiyoWelcome to Hayashiyo
リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

本当の産地を語るのが難しい話

2018年10月11日

フランスのマグ社がエリゼ宮に納品したリモージュ磁器が中国製の可能性が高いということで大問題になった。装飾をしたのもリモージュ地域じゃないという話で、リモージュで実際に作っているものたちが激怒。でも、一番の被害者は消費者だろう。産地のおみやげとして本物と思って買ったものが産地儀送品。繊維業界も似たようなところがあるアイリッシュリネンの話でも、1990年代には現地で失われたアイリッシュリネン紡績を語りつごうと語り部プロジェクトも始まっていたのに、2000年過ぎて業界ではアイリッシュリネンはもう手に入れることは不可能といわれ、それでも中国紡績の糸などがアイリッシュリネン糸に化けて日本では流れていた。百貨店でも2000年以降そういうものが普通に流れていたのである。

別に悪いものではないけども、そういう産地をミスリードするような謳いがなければヨーロッパ産でないものは売り難い。実際の生産が消えたヨーロッパではそういうのがありなのだが日本ではそれはご法度。だけど、日本の商社はそういうミスリードで利益を上げる。健康食品とかでよくあるこの商品だけが特別みたいな売り方。2000年ころ、アイリッシュリネンしか使わないという英国のブランドでも林与に来てアイリッシュリネンやってますかというお話。アイリッシュリネンの糸が今はもう手に入れることができないことを知らない、アイリッシュリネンしか使わない英国のブランドさん。原料の話は抜きにして、生地の意味合いで、北アイルランドで織られたものがアイリッシュリネンという定義もあるが、日本の機屋にアイリッシュリネンを求めて企画するというのは偽装につながる話。麻を織ってきて、糸の問題に苦しんで、現行で使えるアイリッシュリネンの糸を捜していて見つからない自分としては、ありませんと、答える話。そのあと2008年ころに林与の倉庫から1970年代に買った糸などが出てきて、北アイルランドで紡績されたアイリッシュリネンの糸を織るプロジェクトが始まった。

こんな考えをしていたのは、私だけではなく、ネットでアイリッシュリネンの情報を探したときに、2000年過ぎにアイリッシュリネンの糸が手に入らないかと現地に行かれて、もう手に入らない現実をしって諦められた方もいたりする。ありえるとしたら、どこかの機屋にひっそりと残っているくらいがアイリッシュリネン糸の実態なのである。たぶん、最後に普通にMADE IN ENGLANDとかの箱に入ったアイリッシュリネンの糸を手に入れることができたのは、アメリカから私が帰国した1995年頃だったと思う。その後、いろんな糸商さんの情報を駆使してもまったく手に入らなくなった。2000年頃はイタリア紡績の糸も先染で使うとトラブルが多かったので、生産を控えて難を逃れたが、地元の業者さんでも織った布の問題で何千万の損された話など、リネンには手を出し難かったときである。

そんなときに、なぜか、日本の大手SPAさんの格安なリネンが登場でオーストリアの紡績工場で引いた糸を使っているという謳い。いろいろ調べたけどもオーストリアの紡績工場にはたどり着けず、あれはなんだったんだろうか、今も本当に不思議である。その後は、大手SPAのリネンが中国の紡績の糸であるという情報がいろんな筋から入ってきてはいたけど、オーストリア紡績のリネン糸を聞いたのはそのときが初めてで最後だった。ベルギーなんかでもベルギーで一番有名で日本でもブランド展開されていたリネン好きのデザイナーさんとパリでお話したときも、ベルギーで良いリネン生地はないとスパッと言われて唖然とした。ヨーロッパのリネンがすごいというのも、幻想になりつつあるんだなあと思いつつも、英国とかには、リネンの細番手を双糸にした先染め織物などトラッドな世界のリネンにはなかなか日本ではできないものがあるなあと思ったり。日本の生地商経由だと幻想が入ったりすることも多いが、実際に作っている機屋と話すと正直ないろんな話が聞ける。


ホーム | ショッピングカート 特定商取引法表示 | ご利用案内