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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

進化の必要性

2019年04月28日

加工の進化がないというあたりの話の延長で、テキスタイルとして魅せるべき部分の進化はどうなのかと考えると、宮下織物さん。女性デザイナーの珠樹さんがおられ、いつも私が邪心でもったいなあと思うのが素材がシルクだったらすべてが究極なのにと思うけど、レーヨンで自由度を持たせて表現力を重視し、舞台衣装というものに特化してのものごとを分かりきった上でのチョイス、昔の職人じゃなく現実的なところで一つ一つ形にしてゆく力が凄いなあと思う。

今回、宮下織物のブースで見させてもらったのがトリックアートなジャガード織物。プリントじゃなくてジャガードでトリック織物を生み出す。技術的にはジャガードだと出来そうだけど、それを実際にやってのけるところが凄いんだと、やらないというかやれない林与は思う。技術じゃなくって技術は当たり前で行動力、そこに力を使ったほうが世の中が変わる例。世界中にジャガードがあっても、織物でやって形にするのは珠樹さんらしい覚悟のある世界。

半年前にはなかったものがまた新しく生まれているのが凄いなあと思う。私自身半年ほど生産の時期を乗り越えようと動くばかりが続き、できることもやらない理想を追い求める世界との戦いみたいなものもあって、何十年のくたびれた職人よりも志のある若い世代のほうが確実に上かもしれないと思えたりして、何年も時間を掛けて理想を追い求めるよりも、行動力で理想を現実に変えるというスタイル。日本のテキスタイル業界を自分で作ってゆく形、気持ちが良すぎて脱帽するしかない。

すごい実績の方でも、理想を追う学生以上にツコツと動いておられるのが、ある展示会でお会いしたときに24メートルの生地が海外の展示会に出て売られた話。それなんだよなあと思う。24メートルの生地を海外に出荷するもろもろを自分でやってのけるも普通は引いてしまう人が多いだろうけど、できる人だからそういうのも普通に喜びであったりする。そういうのに喜び感じられなければ、理想ばかりを追い求めても無理な話で、それひとつで食べてはいけなくても、一回一回やったことで成果を得ようと努力する。これは普段の仕事にも通じることで、ジャガードというのは一つ一つの組織をコントロールして手間を形に変えてゆく世界。無限の可能性に見える一方で、いろんな限界との戦いのなか、すなわち妥協して織物が生まれてくる。できることを目一杯に動いてみるという、同じ材料と道具があっても人が違えば、できるものが違って、成り立つ成り立たないも変わってくる。それが人の差で出来る人ほど苦労を乗り越えているというだけのことだろう。


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