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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

もったいないなあと思う話

2019年12月15日

就職の説明会などで若い人と話をするときに、やりたい仕事という具体的な概念を持っている人がいて感じるのが、もったいないなあと思うところ。繊維の仕事に就きたいと思っていて、目の前に仕事があるのに好き嫌いしていたら、繊維全般の知識は身につかないだろうし、そういうのを器用に立ち回れる人というのは、自分の専門の分野の理解も広く深いものである。問屋さんで何十年テキスタイルデザインをやってきて経験も知識もある人が、一番のリストラ対象となってしまう中で、若い人が同じようなテキスタイルデザインにあこがれてもそういう職域で食べて行けるケースはまれ。当たり前の現実が自分の理想を満たしてくれないという状況が続く。ほかの人に指図されるのは嫌で、自分のスタイルでものづくりをしたいが自分が食べてゆくだけの力がない、力がなければほかの人の助言などに従って動いてみれば力もつくだろうけど、ものづくりは難しいタイプだなあと思える人が多い。

頭で考えても実際にやってみるとうまくいかないなんて当たり前に多いので、自分の考えたことをやらされるほかの人というのは無駄な仕事の巻き添えになる話で、その分の生活までも面倒をみられるのかというと、そこを逃げるから、企画している人の生活が成り立って現場の人の生活が成り立たない問題にもつながる。よく、生地企画の人が機屋にいって布を自分で作りたいという話を言われることがあるけども、やろうと思えば今日からでもできる話だが、なかなか最初の1日がないだけ、また、続く人は何十人に一人だろうと思う。自分が自分で企画した布を林与に来て自分でつくってみたらと提案して作業に移れた人というのは本当に少ない。作業してみて織物の企画というものの本質がわかるし、織物の価値観が何なのかわかる話なのである。よく、アパレルの人が来て、林与の生地の特徴はなんですか、といわれるけど、求められているのは、糸はどこの国の糸かとかそんなのは基本買えば済むだけの浅い話で、お客さんが織物の会社に来て、一番大事な織物をつくる部分が見えていないのである。私が答えるのは、「自分が織っているところ」かなあというところ。お客さんはポカーンとされるが、自分が自分で人、モノ、カネ、技術をもってものを作っているという、それが一番難しいところで、そのあたりが選択枝でしかないお客さんとはなかなか話しが進まないと思い、私もお客さんのそういう感覚をオウム返しにほかのところでつくられたほうがお客さんのニーズにあうんじゃないですかという提案をすることが多い。ベストなソリューションという意味では、悪くない結果だと思い、ほかの会社さんをご紹介したりする。

就職活動で繊維関係を目指される学生さんの仕事への感覚と、酒好きの先代の仕事感覚が被るところがあって、これからなのに、自分がやればよいのにもったいないなあと思うことが多い。やれば田舎のおっさんくらいは簡単に抜いて行けるだろうけど、やらんかったらそんなおっさんよりも経験と実績で劣ってしまう。田舎というのはやろうとするとやってない人からブレーキがかかることが多い、林与の先代もそういうところがあって、上に立っていないと気に入らないタイプ、若い人でもこれから仕事しようとするのに上に立っていないと気に入らないタイプで仕事さがしても難しいだろうな。最初から経験者を助けるくらいの力、当たり前に超えて行ける力と覚悟がないと、経験者でも食べてゆくのが難しいのが普通なのが繊維の世界だから、それよりも甘い感覚だと年を取れば食べても行けない同じ道。成り立たないような理想を求めて行動しないより、目の前の現実をどんどんと前に進めていく力が必要に思うのが、仕事があってもやろうともしないしできない経験者の世界。

半年、1年で何十年の経験者を超えてゆくこともできるのが、織物の世界。30年織物やってきたおっちゃんでもシャトル織機がこわいわあで、素人の女の子が1週間でマスターして本生産に移れることも逃げてしまう。何十年織物工場の社長してきた先代でも、実際の一つの作業を面倒がって酒飲んでるとか。これからの若い人たちが、目の前の仕事も面倒がって食べてもいけない田舎のじいさんばあさん的なレベルを軽く超えられないともったいないのである。


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