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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

織物の世界

2021年03月19日

織物の世界というのはやっぱり仕事らしい仕事で良いなあと思う。地道な仕事で地道なことをやっていることが評価される。5年ほど前に仕事を織物工場を廃業された社長は、お話しを聞いているといろんなことを一人でされていて、自分のお葬式のことまでもノートにまとめて、息子さんが自分の葬式で困らないようにノートにまとめておられた。

でも、その方の眉間には大きな川のような堀の深いシワがある。温厚そのものに見える人だけども、自分自身との戦いを常に乗り越えられているのがその眉間のシワ。人生観からすべてが他の者が敵うような人ではない。

昨日は小銀刺用の布を出荷。せっかくつくるのだからなるべくお客さんの思い通りの布になるように努力。出荷前には織キズを縫って直す作業。でも小銀刺しをされている方のほうが、私よりもひと針ひと針時間をかけてつくられるのも分かっているので、大事に使ってもらえありがたいなあと思う。

自分の手を使って生み出される方というのは、口の長ける方よりも信用ができる。自分の手で生み出されている方というのは言葉も本質が多い。織物の世界というのはコピーができない世界なので、10m織ろうとすれば1mの10倍時間と労力が掛かる。その辺りがやはり良いのかもしれない。麻は特に糸が高価で生産効率が悪いので、たくさん売れたから簡単に安くできるようなこともない。だから、麻布には普遍的な価値があるんだろうと思う。また、麻布は他の天然繊維の布よりも長持ちするので、より手間を掛けてある昔の布のほうが価値がある。

生産効率を求めた織物よりも、生産効率を求めてないシャトル織機での織物のほうが、手間が掛かり価値があるように思うが、そういうのをただのウンチクだといってしまうと、終わりだろうなあと思う。布の世界というのはお客さんに一番のセールスポイントとして語っていることすらもがまったくの嘘であることも多かったりするので、そういうのを見抜けるかどうか。化かそう化かそうとする話は多いけど、私自身は、化かさないことが大事だと思っている。布自身が語ればよいと思っている。が、自分自身も語りすぎとは思っているが、ものそのものよりも、ものをつくる人のほうが大事だと思う時もある。自分がつくることが一番大事だなあと思うのもそのあたり。


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