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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

整経

2021年04月21日

今日は整経の一日、糸をカウントして割ったものの最後足りなくなってしまった。整経というのは、巻いていくほど荒巻ドラムの1周が長くなるので、糸のカウントを大きくしておかないといけないのだけども、今回は余裕を見ていても最後ほとんどの糸が10mから25mほど足りない大ピンチ。

糸をぎりぎり使いすぎないように余裕をみておいたので、その糸を急遽足りない分だけ割りなおして交換しながら最後にようやくゴールしたかと思いきや5mほどまだ足りない話で、最終バンド以外の他のバンドを2回分減らして対応。思った以上に糸を食ってしまう。でもその分、長くは巻けているはずなので、最後はそれなりになんとかなった形。

整経というのは、織るということよりも大きな全損的な失敗につながることが多いので、先を結果がどうなるかを読んで作業を進めないといけないことが多い。糸のロット管理なども大事な要素で、残った糸をもとの箱に戻したり有効に活用できるかできないかも作業する人の能力で結果が変わってくる。

手織りの時代には糸を粗末にすることはなかったが、大量生産の時代になって残った原材料や製品というのはのゴミのような感覚が蔓延して、お金だけを残そうとする企業モデルがはびこったことが、日本のものづくりが弱くなった一つの要素。欧米型の大量生産型のものづくりに移行して、日本の特色であるもったいないとかの感覚が消えてしまって、残ったら捨てるが当たり前になった。そういう感覚だと材料にもお金を使いたくなくなるし、つくるのにもお金を使いたくなくなる。それでいて、価値のあるものを生み出そうというのは矛盾ばかりではないのかと思う。

林与が、ものづくり企業らしい要素は、糸商さんや生地商さん以上に、糸在庫や生地在庫などを持っている部分で、それを自分がどう料理してゆくかがものづくり企業の力なんではないかと思う。残ったから使えないから捨てるようではものづくりの力が足りないような気がして。作る側が作られたまだ使えるものを気軽に捨てるようになっては、地球環境にとっても悪い話につながる。

2周分ほどいた数百グラムの糸でも数千円の価値の糸、なにかにつかえないかとビニール袋にしまって活用を考える。林与の倉庫に眠る1トンを超える戦前に績まれた手績みの糸や数トンのアイリッシュリネン糸。糸がというよりも原材料からして今ではもう手に入らなくなった別格の良質の糸。世間からすれば無価値に思えるかもしれないけども、そういうのを残しておいていつか使いたいと思う私にとっては大事な糸。希少な糸だけでなく、自分が良い糸と思って買った糸や良い布とおもう布の価値は私にとってはいつまでも普遍で、残っているからといって処分するようなものではない。今後はつくることはさらに難しくなる。

数年前にできたことが数年後にはできなくなるというのが今の日本の繊維業界で、海外もそうなのだが、子供たちが働いて大人が働かないような次世代依存型の階級社会が世界中に広がって、昔はできたことも今の人たちは禁じられてしかも、そのひと世代前の問題や社会問題の解決を強いられる。あとになったらというかそのときでも次の世代からすればうすっぺらい感覚の駄目なことするのを正しいと強いられてその片づけを次の世代が背負う。次の世代に背負わせるような感覚ばかりで生きてると次の世代が苦労する話。それが本当に今の日本の社会の問題だと私は思う。

私が仕事を初めて1年2年で、何十年の経験のある方が自分の面倒をみてもらわないと困るという話。次の仕事を始めたばかりの世代が何十年の経験者の生活やその家族の面倒をみるのも普通に受け入れ読みたいなだらしない感覚が蔓延していて、そのあたりから考えてゆかないといけない話。何十年の経験があってもその人たちというのは仕事し始めたときから面倒をみてもらう経験の積み重ね、それが長続きすることもない話で前の世代が解決しようとしない問題は、次の世代が取り返しのつかないほどの重荷を背負って解決してゆかないといけない話。

でもそれは、昔良かった日本の繊維業界ではよく聞く話で、日本社会の問題の縮図そのものだろうと思う。自分が他の人の面倒をみる経験がない人というのは、そういう仕事経験やそういう人生経験が長いほど人というのは変われないもので、そのあたりが働いて食べて行ける人と食べてゆけないひとの差につながる。それでも人の心を信じて支えて助けて見せようとするが、自分自身が自分の人生を捨てて寝ないで働いていてもそういうのにマウントしてくる経験者も多く、成り上がってしまって、まともに働く気持ちや、まともな仕事の感覚のなくなった経験者というのは手が付けられないものだなあと思う。


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