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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

10年ほどまえに

2021年07月11日

10年ほど前に面識のない機屋さんから連絡があって、織機のことを教えてほしいという話だった。もう10年経ってしまっているから機屋を続けておられるのかどうかは不明である。タイイングマシーンを探しておられた。私よりも10歳、20歳上の方だろうかと思う。

使っておられるタイイングマシーンがメーカーは同じでも、林与のタイプよりも古くて、タイイングマシーンの刃が製造中止になっていて手に入らなくて困っているというお話だった。林与にはタイイングマシーンが4台あるけども、もうタイイングマシーンも40年選手なので、何台も持っていた方が安心は安心である。

探しておられるものがピンポイントなので、それそのものがないとなかなか難しい。林与の持っているタイプのタイイングマシーンに買い替えるのも中古なら、本体、台、刃など含めて、何十万円で手に入るのでそれもお勧めはしたが、多分、ひとつ前のタイプに慣れておられるので、買い替えはされないだろうと思う。

仕事というのは作業だけでなく、仕事する環境から作っていかないといけないのだが、そのあたりが大変なことで、注文があったら問題なくつくれるのかというとそれも材料の安定性の問題もあって確実でないことも多くなってきている。

リネンの生成なんかも、色の安定度などは劇崩れで、同じロットでも色の変化の度合いは大きくなってきていて、昔はこんなことはなかったのにと、仕事すれば自分に何の問題がなくても結局失敗する可能性も何割か高まって来ている。

シャトル織機で織っていても織ることが難しい問題の度合いも上がってきている。量産できる規格のぎりぎりのあたりを規格にしている織物も多いので、そういう問題が毎回の問題のように起こる。どこの誰がやっても同じように問題は起こるだろうから自分だけの問題じゃないと思って、そういう壁は高ければ高いほど解決できるものにとっては悪い話ではないんだろうなあと思う。

解決できなければ仕事を受ければ地獄そのもの、良い時代の方々が今の仕事を受けてもこなせることはほとんどなく、今の繊維業界というのは実際に仕事の問題をつくるでなく解決できるひとしか残ってゆけない、解決してやっと仕事みたいなところがあって、解決できないと注文を受ければ受けるほど問題が増えて終わりな話。

どうでもよい仕事が繊維の世界にあるのかというと、ない話で、働く人もそういうものを求めていては仕事が難しい話で、目の前の仕事一つ一つを地道に取り組んでいくしかないという覚悟が必要だろうとは思う。

織った布を織るよりも時間が掛かる縫って直す作業。まだ、そういうことが出来る人だと残って行ける地力みたいなものがあって、そういうのが出来るうちはレベルも高い。良い時代の人たちが、そういうのが絶対に無理な話から始まる。

自分自身が他の人よりも仕事が上手じゃないと仕事なんて成り立たないのだけども、なかなかその辺りの話から食い違いも多く、仕事というのはやっぱりやる気をもった人がやっていないと、仕事の意味すらも見えてこないだろうと思うのは、林与の家の中の問題とも被る話。



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