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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

機屋さんの引退

2022年06月29日

また機屋さんがそろそろ引退の時期を迎えられておられるようなお話を聞いた、そういう方のお仕事を私が引きついでみたいなことはありがたいことではあるのだけども、私自身がそれなりに今受けている仕事で手一杯だったりもする。仕事は受ければそれなりに時間も労力も使うから順調に織れて1台で1時間に1mから2mとか、その前後の同じくらいに時間の掛かる作業なども考えると気軽に受けることは難しいのは、やってこられた方も同じ気持ちだろうと思う。

何十年もやってこられた仕事というのはそれなりに高度な完成形を持っておられたりするので、同じレベルのモノを手が足りないからと言って人を増やせば作れるのかというと、それは難しい話で甘さが募るともう仕事を受ければまともにものができない可能性のほうが高くなる。

古い織機なんかも別のところに移設されたりはするけどもそれを動くようにするまでには、それなりに力が必要で、移設したとしても動かないとなるとそれは今までの仕事すらが難しくなる流れ。織機があれば織れるのじゃなくて、織機を正しく動かす力が必要で、またその織機で織れる仕事が回って続いていないと、仕事としては成り立たせることは難しい。

機を自分で準備して動かして仕事として成り立たせる能力というものがあれば、普通の仕事の作業からすると何十倍の負荷の掛かるような内容。そういうのを仕事としてやっておられるというのは私自身の普段と被ることも多いので、大変なことだろうなあと思う。

織物の仕事というのは正しくできる限りは定年みたいのはないんだけども、目が見えなくなったり、動くことが難しくなったり、重いものが運べなくなったり、細かい作業が出来なくなるような体力的な問題と、仕事が面倒だとか、仕事に対する責任感がないとか、考え方の問題、正しく同じものを再現できないとか、糸のロット管理ができないなど管理能力の問題などが出てくるとそこが引き際のタイミングで、経験の長さではなくて、初めての人も経験者も同じ土俵の上に立っているんだと思う。私が教えて来た中では、初めての人のほうが経験者よりも早く作業できるケースも多かったり織物に対する理解度も高かったりする。

今回の引退される方も最初からずっと当たり前に作業を受け入れたやってこられて、十分に働いてまっとうされ引退なのでそれはそれですごく理想的で幸せなことだとは思える。そのように人生を終えることができる方たちというのは対人関係にしても、小さく地道でもすごく人ができているんだと思う。


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