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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

難しさ

2023年10月16日

仕事というのは当たり前に目の前のことをこなして行けばなんとかなることが多く、できないことはあったとしてもそれなりに全力でやってみるとかができる人だと何をやってもそれなりにこなせることは多い。何かやろうとするときに、たとえば一つの物をつくるときにも、自分がつくりたいものをつくるだけではなくて作ったときに売れないといけないという問題がある。

いろいろな方からのご紹介とかでこれからこんなことをしたいと考えておられる若い方々にお会いすることは多いのだけども、作る問題を抱えておられる方たちは多い。いっしょいっしょとおもう、林与でも作ろうとしたら糸を買って染めて整経して繋いで織って加工に出して上がってきた生地を売るまでのことをやっているから簡単じゃない。もし、それで製品をつくろうとしてもそれを作ってくれる縫製工場を探さないといけない。

試作品を作るのに生地が欲しいと探されても、その時に言われるのがいつでも好きなだけ買える生地が欲しいと言われるだけで、普通の小売りのお店にいかれたほうが、いろんな生地が大量に生産されていて安く手に入るからそういう生地を使われた方がリスクも少なくてよいのじゃないかと思ったりもする。試作品まではそういう生地でつくられてみたらどうかなあと思うけども、試作品までいかずに生地探しと構想がぐるぐる回ってられたりもする。卵が先かオムレツが先か、スーパーの卵ででもおいしいオムレツを作る力があって、おいしい卵を探したほうが良いと思う。

高いものを扱いたいと言われる方にも、高いものを売るのは難しいですよと正直に話をする。というのも、百貨店で何十店舗も展開されているブランドでも、数万円のシャツとか10万のジャケットとかなるとお客さんもそれなりに満足のいくものでないと買われない。百貨店の中でもロケーションみたいなものは大事で、良いロケーションでないと置いても売るのは難しいだろうし、何よりもバイヤーさんが数字を付けてくれないと商品を置くことができなかったりする。

高いものは高いものが売れる場所でないとお客さんのニーズとも合わず売れにくいということもあって、高いものを作りたいと思って出来上がったとしてもそれを流していくような販路があるのかという問題になることが多い。大手でサラリーマンをやっておられた方とかが独立されても一つ一つを売っていくのが大事なのだけども、大手の商品企画の方だと大手の会社にいたからできていたことが独立すると同じことはまったく難しいというのを実感するだろうと思う。

海外の大手生地商社の部長が飛ぶ鳥を落とす勢いで高級な生地を仕入れて販売されていたけども、その方も勢いがあるときに独立を選ばれた。リストラじゃなく良い形での独立ではあったのだけども、それでも3年もすると扱われている生地が高級ゾーンからノーマルゾーンへとシフトして、普通の価格帯の問屋さんになられた。

別の話では、国内でも糸商さんから独立されたかたが自分で糸商を始められたのだけども、会社じゃなく自分は個人だから前金でお願いしますとか何十年も仕事でやってこられた方でも、独立したときに素人の個人都合感覚が出てしまっておられて、商売は難しいんじゃないかと年配の方だったが感じ、やはり数年で自分での商売はやめられた。その糸商さんともその方がおられなくなっても取引させて頂いているが、正直に情報がつたわってくるし、糸商の神髄に徹しておられる。

駄目な糸商の例は、在庫があっても在庫がないと嘘をつくような糸商で、そういう人とは関わらないほうがマシで、一番質の悪いタイプ。別のルートから動くと簡単に糸の在庫もあって手に入るだけのこと、関わらないほうがよい。別のケースでは、商社からの生地の発注を林与が国内にその紡績工場の糸がない理由で正直な理由で断っていたのだが、その商社が林与と取引のない糸商にその銘柄の糸があるという話でそれを使って生地を生産してほしいということ、いや絶対にないと思う、林与もストールの生産で糸が必要で海外の紡績工場にも次はいつ手に入るのかずっと確認していて、良い原料が手に入らないから紡績できないとの返答で、ここしばらく作っていないと、日本にも輸出していないと。糸商からファックスが送って来て、番手は同じだが白じゃなくて生成とか。国内にその糸の在庫があるのがおかしいと疑ってたから気が付いたけど、そういうミスというのは気が付いていなければ生地の生産も引き受けてしまうことになる。直接、糸加工の工場に送ってしまっていたら気が付くのは納期間際に違う糸が糸加工済みで、返品すらやっかいだろう。ものづくりは怖く、慎重にやらないと、正しく仕事が回ることはない。

他のオフ白の生地の案件でも、縫製工場に数年前の反物の残っている生地があったかで、縫製工場が企画されている方にそれも一緒に使うか尋ねたら、企画の方が大丈夫だろうとおもって返事されて、ロット別の着取りもせずに、腕のところが黄色っぽく胴体の部分が白っぽいのができてしまったと。大丈夫だと進められてしまった企画の方は大弱りだが、一回見てくれと、いったいいくつの判断の失敗が重なるとそういうものが出来るのだろうと思う。ほんとものをつくるのやめておいた方がよいと思う。ロット違いの生地を1着に一緒に使う基本的なミスとかあり得ないし。縫製工場もロットごとに着取りしないのが問題。色味の確認もせずに大丈夫だと判断するのも問題。縫製工場も縫製していて色味の違いに違和感がないのも問題。最後商品になってしまって大騒ぎでは問題が起こるのは必然に近い。

生地をつくるときにでも、チェック柄とかでもなければ糸のロットをまぜるなんてしないしチェック柄につかうときも注意をして使う。生地を織っていても同じロットでもケースによって色味が若干異なる可能性もあるので、整経でも箱ごとの糸を全体にランダムに散るようにつかうようにしている、さらに、織るときにも色味の違和感がないかなども確認しながら生地は作っている。百貨店で販売されるようなものだったらしいが、企画の方と縫製工場ももっと注意して使われないと当たり前に起こるというか、問題が起こらないほうが逆に珍しい問題で、林与では、糸のロットだけでなく加工のロットも別ロットとして反物は区別しているほどなのに。一番良いのは近いところ取りでの着分取りなのだけども、そこまでは無理だろうから、せめて同ロットの生地で一着をつくることくらいは基本としてほしい。一回の失敗が大きな失敗になるのだから、ものを作るときには慎重に作業が必要で現場で最終商品として駄目なことをやってるなあと思ったらブレーキを掛ける能力も必要。

林与も指図されて絶対に駄目だとか違うといっていることでも、乗り越えてやらせようとしたり駄目な結果を見るまでやらせようとするけども、それに掛かる無駄な労力というのはその方の勉強代だからやってもよいけども、軽く考えていると全損になってしまうし、失敗の結果をみたときに大慌てされても、だから何度も駄目だといったのにという話になる。そのときに頼んだのと違うじゃないですかみたいにいわれることも多くて、プロなんだから任せてあるというようなことをいわれたりするけども、糸や密度の選択、風合いの選択などは、分かっている人でないと、難しいし、実績のあるカウンターサンプルを見てもらいながら説明をするようにはしている。

この件とは別だが同じ反物の中でも後染め生地の場合などはチュウキと呼ばれる現象が起こることがあり、端のほうは濃く染まり、中のほうは色が薄いこともある。林与は後染め生地というのはほとんど扱ってはいないが、1反の中でも色の濃いところと薄いところができてしまう問題などにも注意は必要で、近いところ取りだけでなく、手裁断で、生地をなぜ真ん中で折って裁断するみたいなのが普通なのかの理由も裁断の効率だけでなく、生地の問題をなるべくなく生地をつかうためじゃあないのかと縫製の専門でもないけども想像をしてたりもする。生地を使う時のパターンのパーツの配置も基本左右対称のほうがよいんだろうとは思う。

問屋の社長がシルク麻の生地をもっと柔らかくしてくれというが、そのためには密度を下げるとか柔軟を打つとかになってくる。密度を下げても滑りやすいシルク麻は目ズレを起こしやすいし、樹脂を打たないで強い柔軟を掛けるともっと滑るようになる、そういうのを指摘しても、滑ってもいいからといわれて、薄く柔らかいシルク麻生地を作って服にされるとやはり問題が出て来て問屋の方が生地が問題だと指摘される。検査も取っていないのですかと言われるが、検査取らなくても滑るのは誰が見ても当たり前で、林与が何度も滑るからと止めているのにそれでよいかろといってその結果で、自分自身が必然的にそのような生地を求められた結果。そういう馬鹿なことをやると問題が起こって仕事もなくなるし、下手するとアパレルさんでは林与の生地の問題なってるだろうけども、問屋さんが数年かけて完成された生地を崩してしまうことも多い。


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