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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

本麻とリネン100%

2011年02月23日

リネン100%というのは、本麻でしょうか? 林与の中では、本麻はラミーのもので、リネン100%のものは、本麻ではないのです。それは、本麻という言葉の由来にあります。着尺の世界に、「本麻」という言葉の対の言葉として、「片麻」という言葉があるのです。縦糸に綿を使い横糸にラミーを使うのが「片麻」です。本麻は、縦横ラミーの織物です。

近江上布も昔の織物というのは大麻布ではなかったのかということが言われていますが、苧麻と大麻は手触りからして異なりますので、用途によって2種類の使い方があったと思います。裃や座布団などに使われるのは大麻布です。硬くてビシバシとしています。特色的な近江上布というのは太番手ではなく細番手であって、昔から苧麻を使用していたものと思います。

能登では、平安の時代から近江上布の原料の苧麻を栽培してたという記録があるそうですので、近江上布の産地である近江でももちろん苧麻も栽培されていた、あるいは、自生していたと思います。

江戸時代の終焉で、近江彦根藩が奨励していた麻織物というのはかげりを見せます。といいますのも、江戸時代というのは、京都から江戸までの中山道が日本のメインストリートでしたので、行商の目にとまりやすかったことがあるといえます。江戸時代が終わり参勤交代が終わり相場が崩れたのでしょうか、明治初期には近江上布は能登上布にお株を奪われるのです。

高宮の宿で取引されていた麻布などは、オリジナリティのあるものというよりは、規格のあった商品だといえます。作れば相場があって自然に売れるというような、今の時代でいうと農作物のような存在だったといえます。高宮の宿というのが麻の商いの中心ではなくなり衰退しますが、産地であった豊国村では主産業として麻織物が盛んに行われました。麻織物というと愛知川のイメージがありますが、愛知川地区では実際の産地ではなかったので、今でも伝統産業というとびんてまりのほうが有名です。旧豊国地区のものにとってはびんてまりは初耳だって、大人になってからしりました。1軒の家が守ってこられたものだったのだと思います。

近江上布にしましても、同じような傾向があります。戦前までは近江商人の手を経て日本的に有名ではありましたが、その出所というのは実際には数件が守っているような世界でありました。京都の呉服屋さんとお話しましても、祇園祭の時に着るのは近江上布だといいわれます。日本の夏の着物文化を支えるのが近江上布の世界であったことは間違いがないのですが、30年昔の麻ブームのあとも麻にこだわり織りつづけた林与というのは産地でも異色ではありました。麻の組合などでもほかの機屋さんなどと話をしても、麻のものを織っているというと特殊だったので、私自身は、麻の産地で麻の織るのが当たり前と思っていただけに不思議でした。

先代のもと家業を継ぎ始めたころに、麻組合の青年部長さんとラミーとリネンの違いの話をいたしました。青な林与自身は、本麻のほうがリネンよりも何倍も高いイメージを持っていましたので、リネンのほうがラミーよりも高いといわれたときには、自分はまだまだ素人なのだとおもってましたが、皆さんが林与さんはよいものを扱ってられるといってくださっている意味が逆に本当に理解できていないころでした。

リネンや麻のお話を始めるときに、ゼロから始めるとの専門的なところからはじめさせていただける場合といろいろあります。ゼロからはじめるときには、市販の麻に慣れておられ、チクチクしない麻はないですかから始まり、綿麻の混紡ライクなリネンをお勧めいたします。綿ライクな、フォームファブリック的なショートファイバーを使った番手の太いものがよいものと感じられるのではないかと思います。

リネンの業界でもハイクラスと考えられる糸をセレクトしてまた、染め、織り、加工も本格的なものというのは世界でももうあまり例を見ないのです。イタリアの生地の老舗セニヤさんも100点ほどのハンガーのうち何十点ものセレクトをされて林与と波長が合うのは生地をみれば本物は本物なので、失礼な話ですが、世界的に有名なセニヤさんだけにさすがに見る目をお持ちなんだなあと感心しました。一番、小さな林与のブースを素材を日本コーナーのプロモーションブースで林与のいろいろな素材を頭に記憶されハンガーを探されていた素材を見る目が林与の目とは共通です。たぶん、わたしが、すべて自分の作ったすべての工程を事細かに知っているところから普通のセールスマンではないことを感じられるにちがいありません。

素材をセレクトするでなく自分で生み出すというのは、セレクトする以上に何倍も本質を理解していないとできません。そのノウハウというのはすべて自分の中にある経験値の積み重ねで、ときに、セレクトされる方にプラスチックな世界と本物の世界を見極める目をもっていただきたいことも多いのです。林与の場合、100つくり10とか20見てもらうというのが通常のスタイルですのでそれに満足されない方というのは本質を理解してもらうことも難しいのです。いろいろなメーカーさまの対応をじっくりと見せていただくのも、ものを売るだけでなく何十年もの信用を築けるかどうか、お金や紙の契約書ではなく、相互が損得に流されることがなく、別のところに目標を持つことが非常に大事なことだと考えます。

飾らない布をみていただくようなスタイルが、常日ごろ数多くの素材を見続けるプロの目には十分で、ファンシーな装飾にごまかされることのないプロの世界だと感じるところです。リネンや麻というプロの世界において、プロがプラスチックな世界にだまされることなく本質を見抜けなくなれば終わりです。業界のプロなら、だますことなく本物であることを貫くことが大事だとは考えるのですが、何十年も前からプロの世界でも、「悪貨が良貨を駆逐する」といわれる難しいといわれる命題になっているとは思います。ですが、海外のブランドが林与のようなスタンスを大きく評価いただけるのは、世界でもほかにない日本的なガチなスタイルではないかと思うところです。インターテキスタイル上海でも、素材に関する世界的なカンファレンスで基調講演されているかたが、林与の小さなブースに一般のお客様にまじりお越しくださり、林与のリネンに関する話を聞いてくださるのは布の不思議ですね。


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