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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

はさみ

2012年01月28日

挟というのは、繊維業界では必需品であったりするのですが、ことわざにあるように、挟というのは本当に使いようだなあと思うことが多いのです。上手な人は挟も長持ちしますし、上手でない人は挟を大事にしませんので、同じ糸を切っていてもすぐに駄目にしてしまいます。裁ちバサミで反物をまっすぐに切るのも上手な人と上手でない人がいるものです。

昔、私がある会社に行って裁ちバサミを滑らせるように使って切ったときに、その会社の番頭さんが、「裁ちバサミをサクサクみたいに刃を開きながら布を裁断されました。そしておっしゃったのが、こうやって切ると刃の一箇所で切らないのではさみが長持ちする」と。一生を布で暮らしてこられた方の知恵であり、挟みを思いやる優しい言葉ではありますが、そこには仕事に対する厳しさを感じました。

私自身、糸の結び目をはさみで切るときも、長さがなるべく短くなるように切ります。そうすると糸の結び目が目立ちにくいからです。私の経験上、年配の人ほど結び目を切るときに長く切る傾向があります。5mmくらい残して切る感じです。それは手先が器用でなくなったからというのではなく、昔から長めに切っておられたのだと思います。

今の時代だと、もっと短く切るように指導が入るのでしょうが、年季の入った方がそんな風に作られたものというのは、それはそれで、味わいのあるものだと思ったりいたします。私が、仕事に戻ったときに、73歳の勘一じいさんと一緒に仕事をしていました。老眼鏡を掛けながら糸を固めたり割ったりして、下準備の仕事をしてくださっていたのですが、はさみもずーっと同じものを大事に使っておられました。


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