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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

国産の背景

2016年09月13日

OSAKA手づくりフェアで、リネンガーゼの生地が予想以上に人気で、お手ごろなこともあってだろうけど。生地というのは海外産であるのがほとんどなので、1m600円で、国産生地であるということに驚かれる。基本、リネンガーゼ生地は、縦糸はケース買いした新しい糸を使い。横糸は、生産のたびに数キロ残った糸を使うことでコストを下げている。残った糸を使うといっても、箱に残った未使用のきれいな糸を使っているので、数百メートルごとに糸のロットが変わるけど、まっさらの縦糸X横糸の商品となんら違いはない。シャトル織で1m600円はお買い得だと思います。

この生機は、加工して林与の製品となることもあるが、多くの作家さんなどが作品作りにも使ってくださっている。染色作家さん、プリント作家さん、ストール作家さんなど。プロの方も、毎年継続して使ってもらえるように定番の商品として用意している。バルクになると安くなるかというと、実は、段なく、きれいに長く織ることが難しく、反買いいただくときれいな一反をご用意することが難しいこともある。バルクで買っていただいても値段が下げにくいのがその理由である。

この生地をお洋服に使おうとされる方がいてくださるのだが、できないことはないだろうけど、縫い目滑脱という問題があって、縫製の方法を工夫していただけば、羽織物やカーディガンなどにお使いいただけないこともない。相当の縫製の腕が必要ではある。このリネン66番手タイプの上のグレードが、リネン100番手タイプのガーゼストール生地で、こちらも林与の細番手リネンストールのベース生地になる。こちらだと同じ目付けながらより一般の生地に近く目ずれが起こりにくいがそででも縫製の技術が必要な目の甘さがある。

一般のアパレル向けの生地とガーゼストール生地では、用途が最初から異なる。それをうまく乗り越えていただくと、市販のものにはない素敵なものが出来上がったりする。ハンドメイドの祭典だけに、お客様のお洋服など拝見していると、リネンで決めておられる方も多い。3000円から4000円あたりの素材しか持ち込まなかったが、L150のアパレル素材とか、アイリッシュリネンとか別格もたぶん、見たい方はおられただろうなあと思う。5年10年が早い、というのをいつも思う。その意味は、5年前にできたことが5年後の今はできなくなってしまっているということ。今できているようなことを継続していくだけでもたぶん、10年あとには、国内ではより希少な存在になっているだろうと思う。私自身、産地でほかの機屋さんが辞められていく理由もよく分かるのである。

昨年廃業された和装系の機屋さんの場合、やっておられる仕事は基本量産のみで、一度縦を作るときには1000mとか巻かれて、何ヶ月も織り続けられ、同じものを10年繰り返し生産し続けるというような仕事をされていた。それだから一人で最後まで守ってこられたのであろうと思える。ひとつの生地を正しく作って回転させるという当たり前のことに思うようなことでも、一時間に1メートルしか織れない物をキズも出さずに、一日8時間動かして、7万円の売り上げを作られるとおっしゃっておられた。7万円のうちには、糸の値段、糊付の値段、染の値段、加工の値段、その他固定経費がすべて入っているので、残るのは1日、1万円から多くて2万円だろう。一日に何十メートルかを織って、一人が働いた分が正しく出るを繰り返して商売を成り立たせておられた、70歳過ぎておられながらも、本当に立派であり、そういう方に辞められる前に出会えたのはうれしかった。

こういうオンリーワンなことでも、欲を出せば終わりだろうと思える。無駄をすべて絞って自分が働くことで解決されるような形だったから生涯の仕事として続き、きれいな形で仕事も閉じられた。お話を聞いていても仕事ということを当たり前にこなして、考え方もまっすぐでおられて、本当に気持ちが良かった。商いとしては、コンビニで働くほうが良いかもしれないが、コンビニでもそれなりには大変だろうが、ほかの誰もできないことを欲も出されずに全うされていたというのはすばらしい。私も微力ながら片付ける生地などおありなら買ってくれる人を探すの無償で協力しますよと申し出たけど、従来のお客さんを大事にしておられて、その方たち優先で安くても処分したいといわれ、本当に作った生地にも愛着をもち、欲のない方だなあと尊敬の気持ちになる。こういう方がおられて、国産の和装の麻織物の守られていたという日本のものづくりの背景なのである。


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