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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

経つなぎ

2016年11月29日

今日はシルク麻の経つなぎ織り終わったアゼを取るのが正しく取れていないところがあったようで、4本繋ぎ間違える。無地なのでその4本を端にもっていけばよい話なのだが、アゼを取ったりするのも正しく取れるのと取れないのでは大きな違いが出てくる。

縦を繋いで送るのも比較的簡単で1時間ほどで織り始め、最初縦糸がよく切れるので、安定的に織れる様にテンションをゆるくしたり、織機の耳を直したり、絡みソウコウの通し違いを直したり、織る人が正しくしないといけない部分が正しくないのが多くそれを直してから仕事。私が、現場の人よりもものづくりに強いのは、基本正しく仕事をするから、現場の人が気が付かない問題でも気が付くのは、面倒に思うことでも正しく仕事しようとしているからだろうと思う。

1週間ほど前に山形の作家さんがきてくださったけども、林与の現場に入って一つ一つの仕事の面倒さに参られた。何百本の糸を動じに正しく操るという作業も、ひとつひとつ根気のいる仕事でそれが普通の仕事なのだが、頭で仕事をする人にはそういうのは耐えられない世界。私が思うのは、力があるということはそういう単純な仕事なら簡単にこなしていかないとならないと思うところ。

私自身、整経や織りをしながら別のことを考えていることがほとんどでそれを仕事とは思っていないところがある。創意工夫というのはそういうところから生まれてくるものであり、そういう環境でなければ事務所に座ってのデザインワークなんてものは半人前の仕事でしかないだろうし薄っぺらく思えてしまう。

たとえば、経つなぎの作業にしても3660本を準備から初めて3時間ほどで終わる作業なのである。ある東京の織物工場では、外部の人が経てつなぎにくるというが、それは織物をつくる力の範囲が狭いだけで、そういうところから改善が必要であったであろう。機をつくるのも同じで外に頼むより中でできたほうがよい、人が増えても、自分が仕事をするでなく頼む人が増えると本末転倒なのである。アカデミックなものづくり環境がアウトなのはそこで、他の人に支えられる守られた世界でのものづくり。

タイイングマシーンも昔なら200万円とかしたけども、今なら中古の調整済みで10万円から20万円くらいが相場だろう。2日練習すれば使えるようになるものを使えないままに、他の人に頼って仕事していてもその人ができなくなったときにどうするのかという問題もあろう。私もタイイングマシーンの使い方を教えてもらったのは30分ほど1回だけ、あと分からないときに2、3回たずねて、今まで100回つないだかつないでないかだけど、目の前の仕事からは逃げない。綿もそうだが、今日の絹紡シルクなんていうのはタイイングマシーンで繋ぐのはすごく簡単。麻の細番手は手ごわいところがあるが…。

私が、職人さん以上に織機の修理も調整も上手なのは、現状を記録していつでも元に戻せるようにしながら調整を加えること。そういうのが昔の感覚で修理や調整をする職人さんには無理なところでスイートスポットを見つけるのが難しく、私の経験したどの職人さんでも私のような調整の方法はされず、感覚的な調整が仇となることも多い。レピアの横糸のピッカーの糸を押さえる部品なども昔に取ってしまっているけども、本当は必要な部品でその意味が分からないところから始まるのが今の時代の高度なものづくりには対応ができないというあたり。機械を作る人というのは案外、正しい構造を考えていて、マニュアルすらももうないけども、使う人のことを考えて作っているけども、使う人が織機を作った人の織物に対する考え方を理解せずに適当に仕事していては正しいものすらつくることは難しい。

私が30代、40代で普通の職人さん以上に厳しいというのは例外でなく機屋なら普通のこと。60、70歳の職人さんでは、ちょっと難しいが難しすぎて食べて行くのも難しいというのをこの仕事についてから常に感じていたことがある。織物の仕事なんてどの工程でも基本数日でマスターできる普通の仕事なんだがと思うことが多い。あとは実践するのみである。結局は、一番大事な実践が苦手な人が多すぎるのである。

タイイングマシーンでつなぐのが苦手なら他の織機を動かしながら手で繋げばよいだけのこと、それができないと食べて行くのも難しいのだが、なかなかそこの食べていくところまでいける人が少ないのである。私がコンビニの仕事のほうが忙しく大変だと思うのはその辺りで、織物の仕事なんて緊張感も少なくのんびりしすぎていて食べてゆけないのも当たり前なのである。普通くらいの仕事意識が大事である。


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