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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

耐性

2019年04月11日

人というもののいろんな負荷に耐性はある程度は養われるもので、負荷が掛からなければ耐性もなくなってしまうものだと思える。衛生的な環境の中では耐性は劣ってきてしまう。日本人が海外に行くと海外の人は平気に現地の水や食べ物を口にしていても、慣れた食べ物でないと体調を崩しやすいものである。普段から慣れていれば自然と適応しやすいということになるが、普段からなれていなければ適応できないということになる。

日本人が器用だといわれた背景には、他の民族よりも器用さに適応してきたことがあるだろう。日本の神社の儀式や農作業などもかなり複雑で、藁から縄や草履、ムシロなどを作ったりするとか、農家が自分で糸を績んで手織りで切るものまで作り上げるとか、何代にも渡って器用さが培われてきて、単に訓練だけでなく、DNA的にも進化して、日本人は他民族よりも器用であるというあたりになったのだろう。

近代になってからは身の回りのものも自分で育てるでもなく、購入することが多くなり、行事関係も少なくなったために器用さというものは不必要なものとなり、器用さの面では退化したのではなかろうかと。良い時代ほど、人々は退化してしまうもので、豊かになるとより豊かさを求めて、甲斐性を越えた豊かさをほかに求めることになり、国レベルでは戦争や植民地支配などの問題につながって行くのだろう。

麻の生地に関しても、本麻というものの肌辺りが慣れている人にとっては問題がないけども、多くの人にとっては肌触りが硬いという感覚が普通になってきている。これは人々が合成繊維のやわらかさに慣れすぎ、肌が硬さに対しての耐性がなくなってきていることと、人々が汗をかくような想定が少なくなって、汗で体温調整を行うメカニズムも退化して、麻が水分を吸う事で肌当たりのよいものになる流れも生まれにくくなってきていることも一つの原因だろう。

従来型の本麻は人々には受け入れられ難くなって来ていて、スイビ混の本麻のほうがスイビを抜いてやわらかくなりやすいので、受け入れられやすいなど、麻でも合繊ちっくなもののほうが、人々には違和感がないというか好まれやすい状況になってきている。本麻にしても昔のものというのは、原材料からしてもよりピュアな仕上げがされていて、やわらかかったことがあろうかと思われるが、今日では、使う薬剤の制限もあって、昔のようなピュアなテイストの麻は手に入り難くなってきている。

一例では、昔の織物加工の温度は90度を超えていたが、今では70度程度に抑えられている。というのも、90度に耐えられるような染色を施しているケースが稀になってきていて、70度程度に抑えないと色落ちの問題など起こってしまうケースが想定されるからである。本来は、湿摩擦などの堅牢度の問題も、完全に高温で色を洗い流しておけば色落ちは少なくなるのであるけども、加工で高温にすれば色が落ちてしまう問題があるから高温にできないという問題が存在をする。

納期的な問題があって、シルクを染めておられる染工場が麻も反応染料で染められるということで、色落ちも問題ないという話しだったので染めたことがあるけども、加工すると3分の1くらいに色が落ちた。湯洗を50度程度でされていたのだろう、加工での想定温度が50度程度だということを聞いて、70度で加工すると色落ちするのはよく分かる。同じ染でも麻を得意とする染工場と慣れておられない染工場では経験の違いから染まった糸も色は似てても非なるものである。伝統工芸系の染と工業系の染の違いもあろうかと思う。伝統工芸系の染というのは個人が染めるのと近い設備の中で行われ、工業系の染というのはより均一に染められるように設備も大型でしっかりとしている。個人規模でも染の堅牢度を上げることはもちろん可能なのだが、作業工程と作業時間が増えるので、それにどう対応するかの問題であろうかとは思う。


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