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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

1日

2020年09月12日

朝から、昨日繋いだ新しい織機を立ち上げようとスタッフの女の子と一緒に作業。それを織るのには一番調子の良い織機につないだのにシャトルの通りがよくない。杼箱にシャトルが入るときの音が違和感がある。開口の調整、杼箱の押さえの強さの調整、右側のピッカーの軌道修正、畦棒を入れたり、開口の高さの調整をしたり、シャトルを上下交換したり、消極送りの重りを加減したり、でもちょっとやそっとのダメじゃない、ダメな感じ。このダメ感は、長い冬の到来を予感させる。下手するとこの一つの仕事でほかの仕事ができなくなる可能性が高い。織っても織ってもシャトルを挟んで傷になり、せっかくきれいに準備した縦も使ってしまって予定通り織れなくなるので、根本的な原因を見つけ出す必要がある。朝から元気に織る予定が、途中で脱力感と焦燥感に襲われる。

私にとっては順調に動いている普段の仕事というのは何ともないのだけども、こういう一番調子よく調整してあって絶対にうまく織れるはずと思ている織機が、まったくの調整不能に陥ってしまうというのは、一つの普通の仕事がうまくできないようでは機屋を辞めないといけないレベルの話。こういうときに一人ではなく二人で作業を進めることで、作業自体じゃなく原因の究明に頭を使えるというのはありがたい話で、夕方、6時前にとうとう原因が分かった。片側のプーリーのねじが緩んで空回りしていたようである。ほんの小さな出来事が命取りでセッティングした私のミス。機械は正直なのである。

作業した二人の1日が傷を織るマイナスだけで消えてしまったが、原因が究明できたことはうれしい。糸から布までに何十もの工程があるとして、その一つが問題であるだけで、織物が正しく織れなくなるという怖さ。そしてそれが見つけられなければ、織機を持っていてもその織機はスクラップやジャンクと同じ。使えば使うほどマイナスが増える。一生懸命に頑張っていてもうまくいかないことも多いもので、まだ、今回、私自身が立ち上げしているので絶対に何か問題があるというのを思っているので、最後まで成し遂げられるけども、例えば織るのを外注に任せた場合に同じことが起こったら、糸や整経の問題となる可能性もあるだろう。その織機でほかの織物を織ったらちゃんと織れるということになり、もうその織物を織ることは断念してしまう可能性もある。

いろんな原因を探る作業、無駄に思えるけども、織れないときにそれを面倒がらずにするのかしないのか、やったとしても元に戻せるようにコントロールしながら作業を試せるのかなどが、ポイント。織機をやみくもに調整するのはすごく簡単だけど、適切な状態をキープしながら、いろんな場所の調整を確認していくというのは、やっては戻ってやっては戻っての繰り返しで、何倍も疲れるが、それができないと、動かすために織機に調整を加えるだけでやってしまうと、本来あるべき調子のよい状態からそれぞれの個所の調整がどんどんと離れて行ってしまう。組み合わせ的には10の個所の3段階の調整で済む話が、何千とか調整から最適な一つの調整の組み合わせに戻す話になる。それだけは本当に避けないとならない。半年や1年、時には何十年も1台の織機が動かないというようなケースはそのたぐい。織機の問題ではなく、人の問題であるのだが、なかなか何十工程を一つも間違えずに正しくできるということは少ないものである。

これは織物工場での出来事だが、工程の多い工場では同じような感じだろう、一つ間違えば結果が違う風に出てきてしまう。すると違ったものに上がってくる。織物工場ではないが、何十年問題なくつかっていた機械が人が変わるととつぜん調子が悪くなって入れ替えしたみたいな話も聞く。私自身、糸から布まで、10回仕事して9回正しいくらいかと思う。10回に1回くらいの失敗だからなんとか成り立っている。それが、10回仕事して7回とか8回正しいだと食べてゆくのが極端に難しくなるだろう。スピードの問題でもなく、上手な人というのはスピードも速く経験も何倍もしているので、ゆっくりな人ほど経験も少なく失敗も多いというのが普通。

今日は最近では珍しいくらいの原因不明の織れない問題から始まった。仕事というのは結果できなければダメという厳しい世界、これができなくなった時には引退だろうなあと思う。初心者も経験者もおんなじ土俵に立っているのだと思うのはここ。できて結果を正しい結果をだせれば仕事だけど、そこまでやれないと残ってはいけないという厳しさがあったりする。織機というのは買ったときというのは一番調子が良いだろうけども、だんだんと使っているうちに部品も消耗して調子がずれてくるもので壊れたりもしてくる。

今、人員を削減し生産効率を上げるために新しい設備を入れ替えるみたいな方向性があるけども、そんな機械というのは機械メーカーの保守ができなくなったら終わりというだけのこと。一番の問題は、現場の人の力を必要としないので、作業している人の能力が低下してしまうようなあたりだろう。私も仕事をし始めた時に、糸を結ぶのを自動化できないかとばかり考えていたものだけども、糸を結ぶことは今も人間が一番上手にできる。糸が切れるごとに、一本の糸を結ぶのに機械を使ってたらそのセッティングだけで手間が増えるだけだろう。海外の紡績工場じゃあ、結ぶのが面倒くさくって、揃えてぐちゃぐちゃとして結んだことにしている紡績工場もあったりで、はさみも使っていないの30cmから50cmほどの結び苧がついている。機械化された紡績工場では機結びができない現場の人間が糸を作っているような状況が、紡績会社の仕事で支給された糸から伝わってきたこともある。

基本的にあの糸は駄目ですよという話をするが、実際の問題を知らないで糸の会社が糸を扱っているということもあって、フィードバックもされないだろう。織っているときに糸のぐちゃぐちゃとやったところが緩んできて傷になる。1反織るのにその問題で10か所傷ができるような糸。後ろに回って、糸のぐちゃぐちゃ結びの問題を解決しながら織るような話。別の糸の会社の支給の糸を織った時も、最初のロットの糸の毛羽がひどくて傷もよくできるし織るのも苦戦。結局ショートしてしまって、こちらが弁済しながらの追加として70ほど織る話になったのだが、今度送られてきたいとは色もきれいで毛羽も少なくきれいな糸で、問題もなく、きれいに織りあがる。ぼこぼこしておらずフラットな糸なので、糸の織縮みも少ない。糸の問題も吸収しながら織るけども上がった分が足りないよとか平気で言われることが多いので困る話。糸支給の仕事というのは基本受けないほうがよいだろうなあと思うのは、そのあたり、50点、60点の糸が回ってくることがある。

海外の紡績工場などに糸の問題を伝えるとちゃんと改善されるケースが多いが、国内の糸商さんでは本質的な問題を自分が被らないので海外の紡績工場にまでちゃんと問題を伝えるような人というのはいないことはないが数少ないものである。糸商さんにとっても海外から糸を買うということはギャンブルみたいなところがあるだろう。仕入れてみて使ってもらって使えれば商売になるし、使ってもらって問題が多ければ売るのも難しく損ということになるだろう。林与もオーガニックなどでは織るのすら苦戦することが多い。オーガニックはどうしても原料の強度が年々弱くなる傾向にある。正直なのだろうけども、オーガニックゆえの問題だろうと思う。織れない問題も多いが高いオーガニックの糸、別枠で支えてゆかないと難しいだろう。
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