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リネンや麻を織る日々をつづっています。

リネン日記

織れる織れない

2022年04月06日

織れるようにした織機を他の人に渡すと織れなくなってしまうことが多く、結局は織れるようになった織機でも問題なく織れるためにはそれなりにピリピリと緊張していろんなところをコントロールしているから織れているだけなんだと思えたりする。整経なんかは顕著で、整経自体の作業の意味を理解するのは簡単なんだけども、糸をなるべく一本も抜けた場所がないように最後まで荒巻きして、巻き取りの時にも一本の糸もなるべく切れないように巻き取るとなると、なかなかそれは難しい。巻き取りの幅を測るだけでも、私の測り方と他の人の測り方は1cmほど異なったりするので、1mm2mmは許されても、5mm違うと巻き取りが大変になってくるし、巻き取りで失敗すると今度は織るのが大変になってくる。

整経の巻き取りも耳の部分など緩くなってしまうと織るときに糸が前に引っ張られるので、緩いと糸が食い込んでしまって織れなくなる。理屈が飲み込めなくても言われたことを言われたとおりにやってみることは大事で、やっているうちにその意味がわかってくるのが普通だったりする。言われたことと違うことをやってしまうと大きな悲劇が起こることが多い、大きく巻いた経糸が結局織れなくなってしまって、糸ももったいないのでなんとか苦労して織ろうとするけども、1m織るのにも何時間も掛かったり、織ったものもキズが多くなる、そうなるとまったく仕事としては成り立たない。

私も今までに何千本かは整経をやっているとは思うけども、失敗することもあって、そういうときのリカバー力みたいなものって大事だったりして、そういう懸命に自分の失敗を受け入れてなんとか織れるようにするとか、整経途中や巻き取り途中で失敗があっても、少しでもダメージを減らせるように頭を使って考えるとか、10回、20回に1回くらいは失敗することもあるので、設定間違いなどでも早めに気が付けばキズは浅いしやり直せる、そのために作業中に何度もいろんな確認を無駄に行ったりしてることが多い。そういう無駄な確認作業をできる人って少なくてそういう無駄な確認作業が常にできたりしていると、すべての作業において失敗が少なくなる。

失敗したときに自分でリカバーできる人が結局は残ってゆくんだろうなあと思う。昔、経糸が1回シャトルを挟むだけで500本とか切れたりしたのを淡々と私に付き合って5時間6時間かかって直す作業を手伝えるような人というのは他の何をやってもこなしてくれる。また挟んでも、また淡々と5時間6時間の作業。そういうのを経験して当たり前だと普通に織物を織るくらいは何のこともない話。

先日、手伝に来てくれた女性も初めてで何百本か縦繋ぎをうまくこなしてくれた。最初だと手にも体にも力が入って、姿勢も前かがみなので10本繋ぐのでも苦痛だろうけども、何百本も最初から当たり前につなげる人というのは我慢強い珍しい人である。次の日に肩が凝って死にそうになってられなかったらよいけど。なかなか習得の難しい人も多いので、そういうのはそれまでの手を使う作業経験の差だったりもして、自分の手ながら自分の思い通りにはなかなか動かないというあたりも。最初から呑み込みの早い人というのは結局作業量も多いので、慣れてスピードも速く、それが作業経験を積むことにつながって一つのことだけでなく、他の作業をしても同じで広がりにつながることが多い。林与に来て一番の難関は糸をはさみで切れるかどうか。切れにくいハサミも多くあるけども、私が使うとどのハサミでも同じように糸は切れるが初めての人にとってはそれが不思議に思え、こんなに切れないハサミを使っているのかとびっくりかもしれないが、何千回何万回と糸を切ると切りにくくなるのも当たり前でそのくらいが安全で便利なハサミだったりもする。


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