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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2010年7月
リネン日記:28
2010年07月10日
布の相談を受けさせていただき販売させていただいた方から、届いた布が刺激がほとんど無いということで喜んでいただけました。「林与」の布が、アレルギー体質の方のすべての問題をクリアできるような魔法の布であるとは考えてはおりませんが、それに近いものであらねばならないと思います。

ぜんそく、アレルギー、アトピー、化学物質過敏症という問題で悩まれている方というのは多いと感じます。ここ1ヶ月の間に4人の方から相談を受けました。この1年では、15人くらいの方が私にそのような話をされリネンに解決を探されています。多くの方にとって、より刺激の少ない布を探されているのを感じます。赤ちゃんや乳幼児向けの商品にリネンを考えられているケースも多いです。

林与自身、小麦による運動誘発性アナフィラキシーという1万人に一人くらいの体質ですので、アレルゲンの存在というのは無視できないものと実感しています。自分自身のお作りした布が少しでもお役に立てればという思いはありますが、天然の小麦ですらもが生命を脅かす結果になるので、不思議かもしれませんが、私自身は、天然のものであるから万全ということはありえないという結論にも達しております。きれいな地下水は大丈夫でも、川の水を飲んでいただくと問題があるのと同じです。自然の中に潜む混じり物をどれだけ省き人に優しくするかも重要な要素で、素朴な技術では駄目で、世界トップクラスのフラックス原料製造技術や紡績技術に頼るしかないと思うところです。(リネンといえども、良い薬剤や良い中和技術が無ければ薬剤の残留の心配が残ります。)

生成のキバタなどは、精錬がしてあってもリネンっぽい匂いなど少ししますので、ナチュラルなものが人に優しいかというと一概には言えません。リネンをドリューするのは、土の中で放置するような工程ですので土臭いような匂いがするのです。生成といえども、いろいろなタイプのものがあります。より、自然に近い臭いのキツイ状態のものから、精錬して不純物を取り除いて色もきれいになってるもの、軽く漂白を掛けて色を明るく調整してあるものさまざまです。

リネンの紡績が新興国の産業となる今、その安全性の基準は各紡績会社が持っていると考えますが、実際には紡績技術と、商品の確かさや安全性は正比例すると思うところです。生成の色の安定性、オフ白の色の安定性をみれば、その紡績会社の原材料へのこだわりが見て取れますし、織ってみて、色以外の糸の品質に関する答えが見えてきます。

定番の生成やオフ白に関しましては、一貫した原糸の糸の安全性かつ安定性の追求並びに薬品などをなるべく使わない製織方法にこだわり、何十年も実績のある加工方法に絞っておりますので、リネン生地との相性にお困りのかたの一つの解決の可能性として、「林与」のリネンや本麻を試していただく価値はあるかと思います。
2010年07月09日
昨日、今日とヨーロピアンブランドさまのスワッチ送付の手配を行っておりました。A4サイズの生地を詳細を書いたパターンに貼ってお送りするのですが、先日も書きましたが、4ブランドさまとも、共通な感じのセレクトをされていました。

林与の取り組みというのをご存知はないと思うのですが、この2年あまりに自分自身がリネンプロジェクトとして取り組んできたリネン素材にセレクトが集中していました。ほんの10分程度の限られた時間で、語らずしても布を触るだけで布から感じ取ってもらって抜き出していただけたことには、林与自身は、自分のやってきたことに対する答えがそこにあるのではないかと思います。

この傾向は、他の展示会以上に強い傾向でベーシックな表情のものの中に価値観を見出そうとした部分が、ヨーロッパの高級ブランド市場においては、より評価される傾向にあるのではないかと感じます。日本の本麻のものも全体からすると数は少ないですが、スワッチサンプル依頼がありました。各ブランドさんにお尋ねしたのは、それぞれのブランドさんで、リネン以外に、ラミーはお使いになられますかという質問をいたしました。どのブランドさまも、ラミーもよく使っているというお答えがありました。
2010年07月08日
今日は、朝一番でお客様がお越しになられました。今でも昔のようなスタイルを継承されている問屋さんで、そういうスタイルで今の時代に残られ、日本でも限られた良いものの世界に残っておられるのは、お話を聞いていてもその方自身の仕事に対する姿勢が大きいかと思います。

林与みたいな、ものづくりのスタイルが日本に残っていることを大事に思ってくださっているので、それを店頭までしっかりと伝えようとしてくださっております。海外製の生地が、本場の生地であるかのように流通してしまっている今の時代ですので、確かなものづくりというのは大事だなあと思います。

昨日は、糸商さんが見えられ話をしていたのですが、織物のことだけでなく、織物の安全性に注目される消費者の方が多くなっていることをお話しました。リネンというのは農作物的な要素が大きいながらも、それを高品位なものにしようとするとどうしても、科学的な処理が伴います。私自身が、厳密な話、高品位なアパレルの生成の色というのは、精錬がほどこされ本来の生成の色ではないと考えるのもそのあたりです。

リネンのオフ白には、いろいろな白度がありますが、その白度というものが糸の原料の質までをも物語るのだなあと感じることがあります。白でも、非常に白度の高いシリーズとそれ以外の通常のオフ白なシリーズとでは、晒工程で使用される薬品が異なる話にいたりました。

このような漂白方法に関しても誤認されることがしばしばで、私自身はリネン糸と触れる機会が多く、白度の違いにも敏感ですので、その白さを見ると通常でない白さというものを評価することができるのですが、それをご存じないケースでは、一般的なリネン糸の漂白である過酸化水素で漂白したオフ白なものを特別な高価なものとして販売されるケースが増えているのには疑問を感じるところです。
2010年07月07日
今日は七夕で、織姫のお話なんですよね。

そんな七夕に、ジャガードの織機を直しておりました。私でも、ジャガードを分解して再組み立てする作業は勇気が要ります。小さな部品が組み合わさって、何十キロもの鉄の塊ができているのです。その一つ一つすらもが微妙な調整で成り立っており、小さな穴が開いているかいないかで、縦糸が上がり下がりするのです。

今、織っているのはジャガードのリバーシブルな二重織りです。通常の二重織はドビーでもできるので、わざわざ、ジャガード織機で織る理由というのはないかと思います。でも、ジャガードで織ったものはやっぱり違うんですよね。

仕組みは何分か考えると理解できるのですが、ばねのような部品が組み合わさって縦の動きを横の動きに変え、またその動きを縦の動きに変えることで糸が引っ張り上げられます。林与にある紋紙を使ったジャガードというのは、柄の組み換えをするのが簡単ではありませんので、今の時代というのは電子ジャガードと呼ばれる、電磁石で糸が上がり下がりするタイプが主流です。一応、七夕なので、短冊に電子ジャガードとでも書いておきましょう。
2010年07月06日
今日は、午前中、県立大学にまいりまして、アイリッシュリネンの調査報告をいただきました。一番、最後まで残ったとされるハードマンズ社サイオンミルですらもが、何十年も昔に廃墟となってしまってる事実は日本では語られることはなく、アイリッシュリネンが一人歩きしているのです。

実際に、現地でリネン産業のことを調査しても、現地の人ですらそのことを知らないというほど昔のことになってしまっています。北アイルランドに紡績産業が栄えたというのは事実なのですが、そのことすらもが、遠い昔の話になって、博物館でしか見ることのできないような失われた遠い過去の出来事になってしまっています。

ここ十数年の間に取り扱われたアイリッシュリネン糸というものがどこから出てきたものなのかは業界の人間なら簡単に推測できるところですが、’アイリッシュリネン’を作っているとされているアジアの紡績メーカーの方ですら、自分たちのつくっているものがアイリッシュリネンと日本で呼ばれていることを狐につままれたように驚いて聞いているのが実際のところです。

この10年あまりの低価格化したリネンブームの中で日本の中で’アイリッシュリネン’という虚構が一人歩きしてしまっていたというのは、昔からの麻業界のものなら誰もが知っているところではないでしょうか。
2010年07月05日
今日は、正午過ぎに出発して3時頃に大阪の帝国ホテルに到着いたしました。初めての商談会に参加ということで、どんな感じなのだろうかと思っておりましたら、通常の展示会よりも、必要なものはすべてが準備されている感じでした。飾り付けを重視するでなく、ものを見てもらうための機会そのものです。

秋冬の展示会ということで、黒系のカラーリングが目立っておりましたが、弊社は、麻を見ていただきたいということで、150点のうち1点以外はすべてリネンや麻、麻複合を並べました。秋冬の提案としては弱かったと思いますが、まだ、来春ものを探しておられるということで、各社とも10点ほどサンプル請求をくださいました。

当初の思いでは、デリバリーや価格など生産が確実なものをということでしたので、複雑な手の込んだものは、なるべく避けたのが少し失敗でした。見ていただくだけでもよいなら林与の味を出したもっと手の込んだものを並べるべきでした。セレクトいただいたのは、やはり、今まだ、市場に無いような類のものがほとんどで、ファンド事業のリネンハンカチプロジェクトのベース素材を、服地用に開発したものも3社からのピックアップがありました。なんとなくオフの無地で薄いだけの素材にしかみえないと思いますが、それを各社ほんの10分ほどの間に4社のうち3社が林与の150点のサンプル請求くださるというのは、私がリネンを見る目と同じ共通な目だと思います。

ジャパンクリエーションやインターテキスタイルなどでも、布の状態のビンテージアイリッシュリネンに目を向けてくださる方というのは、一日に数名の世界ですが、今日の4社様というのは、サンプルを5分ほどで自由に流してみていただいたのですが、4社様とも確実にそれを触った時点で止まっておられました。他にも共通してセレクトいただいた素材の傾向などは、どのブランドさまも共通している感じで、ヨーロッパのブランドさまが求められるテイストというものが林与の今の取り組みと重なっていることに安心しました。リネンの本場、ヨーロッパのブランドさまの「林与」のリネンを直接ご提案した第一歩です。

林与は、リネンをヨーロッパに提案させていただきたいだけでなく、日本の本麻の世界もヨーロッパブランドの方に見ていただきたいなあと、本麻の手もみものも多く並べました。ラミーというのはヨーロッパではよく使われるのかどうかということも通訳の方を通じてたずねたのですが、トップブランドでもラミーをよく使うというお答えをいただき安心しました。一つのブランドさまは日本の本麻にも興味を持ってセレクトくださいました。
2010年07月04日
今日は、アメリカの独立記念日で、花火を思い出すのが毎年のことなのですが、今日だけは明日の商談会に向けて、サンプルハンガーなどの確認作業とスワッチ見本などの準備に追われていました。

あんまり、複雑なものは、林与の特色でありながらも再生産が難しいのでそういったものは商談会に持ち込むハンガーからは除外しました。林与が一般的な展示会でお見せするハンガーの中には特殊なものが時々含まれていて、あるときに集中して力を注いだものなどは糸の背景からして今はもうできないというその時代の流行を象徴するようなものも含まれています。

昔の物づくりというのはある糸を信じ込んでそれを新商品に取り入れるということを当たり前に行っておりました。今の時代は、なるべく特殊な糸には手を出さないことにしています。一年掛かって見本ができても次の年には糸はもう手に入らないということすらありえるのです。糸メーカーも糸商さんも、昔のように新商品に手を出すことが少なくなってきました。簡単に当たり前に流れるものを流すというのが今の時代の主流です。
2010年07月02日
今日は、朝から東京のデザイナーの方が弊社にお越しくださいました。昨年のジャパンクリエーションでコラボさせていただいてから、現実の企画の話に発展しています。若手デザイナーの世界で積極的に動かれている方で、その行動力に関しては、弊社も注目をさせていただいているところです。

林与とそのデザイナーさんとの取り組みという範囲のものではなく、国家を挙げて動いているコラボプロジェクトの延長にある発展のステージなので、それが実際に日本のテキスタイル業界の次世代につながる新しい形になっていけばよいと考えております。

ジャパンクリエーションでのデザイナーコラボにおいても、SS、AW、SSと、3回連続でのコラボをさせていただき、恵まれすぎているなあと実感しており、日本のテキスタイルの祭典を飾るボディというのは、夏の花火のような儚さはあるかとは思うのですが、デザイナーさんと一緒に、そこに、素材の魅力というものを詰め込み来場いただいた皆様の思い出に残ればありがたいなあと思っています。

日本のテキスタイルの祭典を飾るようなコラボいただいたデザイナーの皆様にお作りいただいた作品というのが、林与には、いくつもあるというのがもったいない気持ちです。作品が、力を注いでいただいたデザイナーさんの手元に残るのではなく、素材を提供したものの手に残るというのは、本当に特別な配慮だなあと感じます。