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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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2012年01月19日
展示会ごとにカラーのディクテイションあります。これは、企画としての展示会の全体的な統一性をもたせるためには大事なことです。一方で、林与には、自社の色のテイストというものがあります。それというのは、画家が絵を描くときに使う独自の色の好みに似ています。自由度を高めるとそれは作風を消すことになります。林与の場合には、絵の具は基本リネンやラミーの麻の染め糸なのです。

海外の展示会などではリネンの先染で色のついた世界があったりするのですが、色の感じがまったく違うのです。ヨーロッパのリネンにしてもアジアのリネンにしても日本のほかのリネンにしても、林与のリネン糸やラミー糸というのは色味が独自で色数も多いながらも色をいつでも再現できるように色ぶれの少ない形で色を残し続けています。逆にいうと、一回限りの色というのを作るのを嫌う傾向もあるのは事実です。それをすると林与の麻の世界の色の統一性というものがブレてしまうからです。

アパレルのデザイナーさんがシュミレーション下さることもあって、それに近いものを機の上で再現するケースもあるのですが、それぞれの色糸を一番近い色を選べば一番よい感じのものができるのかというと、全体の色の強弱のコントロールというものは非常に難しいものです。敢えて、デザイナーさんの作られたいイメージを尊重しながら、色を触って全体の色の統一性を持たせることをすることがあります。実際に絵を描くのが林与的なところで、そこに林与でつくるものづくりの力の差が出るのではないかと思います。仕上がりを見て色を校正するようなものですが、通常、着分を作った後に色を変えられないので、着分をつくるときにできる限り色調をよいイメージに調整するのです。

林与の色というのは、何十年も使い続ける色がほとんどですので色ぶれというものを気にします。何十年もその色の系統というものは保たれて先染の織物が作られます。これは、日本のテキスタイルのカラーとしては生き残った色たちで、日本の多くのラグジャリーなブランドさんの高級なイメージを支えてきた春夏の色味であって、麻の色のクオリティです。強いて言えば色にしても日本らしいテイストというだけではなく日本のクオリティというものがあるのではないかと思います。アパレルさま向けの自社提案柄では、原色をほとんど使わないところもありきたりにはならないことのひとつです。

そのあたりが、イギリスやスウェーデンのプリント柄の色調と違うところで、林与の色のテイストは麻の世界の流れを汲んでいるので和のテイストあるいは草木の色を思わせるようなワビサビの世界の色なのです。今の時代に、衣食住が変わっても、変わらない日本の自然の中の日本人が愛してきた色味というものが今も生き続けているとは思います。色を守るというのも芸術的なセンスだけでなく、どこまで自分の作風をもって布を作るのかというところがあるかと思います。一方で、完全なOEM的なご依頼もお受けしてはおりますので、製造業として他の方のものづくりを支える部分も大事ではあると、使命というものはいくつもあるものだと分かった上で自分の味を残しています。
2012年01月18日
今朝は、紡績会社に電話を入れてリネン糸の在庫確認などを行いました。ファンド事業の認定を受けているアイリッシュリネン140番手は手持ちの糸の在庫がなくなれば本当の幻となってしまう世界です。その世界をより身近に楽しんでいただこうとすると、フランス、ベルギー産のフラックス原料を使用した現行の糸を使うというチョイスになるのではないかと思います。

現行の糸でどこまで、ビンテージの糸の風合いに迫ることができるのかというのは、その時々のロットの加減にもよりますし、また、今年は不作の年であったと聞いておりますので、昨年の良質な原料が残っているのかにも仕上がり具合はかかってくると思います。不作の年ほど、繊維が細く、実質番手が細いというような話も遠い昔に聞いたこともありますが、実際に糸を手にして織り上げて自分で評価をしてみるしか方法はないのかとも思います。

お昼前に、新卒採用の件に関しまして地元の高校の就職担当の方がお見えになられまして1時間ほどお話をさせていただきました。今の時代、就職が困難ということではありますが、職業や職種にかかわらず目の前にある仕事を前向きにできるかどうかというあたりになってくるかとは思うのです。前向きに続けていると差が出てくるもので、力のある人でも前向きに動いていないと、分からないままにほっておくことが増えて、それが後から分かるようになるということはほぼ不可能です。

お昼には、2本ビームを出機さんにもっていき織りつけや納期の確認などをして、織りあがった反物を持ち帰りました。午後からは、業界新聞紙の方からの原稿の入稿のお話と百貨店からお電話をいただきました。仕事関連の出荷も今日は5件ほどあって夕方には出荷をすませました。リネンなどのビーカーがあがってきてそれを染工場の方が会社に持ってきてくださいました。夜には会社で織っているストール関連の織機の配分計画などを練り直しました。調子よくは織れているのでキズなども少なく安心しています。本生産の最中ですので手一杯になってしまっていますが、本生産の時期が終わってからも広がりそうな部分も多い気がしますし、ハンカチに使う林与の紙箱のお話もうまくいきそうで、良いこともたくさんあった一日です。
2012年01月17日
今日は、今年で一番よい天気で、空気が澄み渡って空も青空、いい感じです。午前中に、大阪の問屋さん、東京のアパレルさん、百貨店のバイヤーさんがある企画の件で弊社に起こしになられるということで、朝一番に出機さん用に糸を準備して、駅に迎えに上がりました。

バイヤーさんが求めてくださっているものは、特に林与の市場性を求める部分ではない趣味的というか道楽というかみたいなものづくりの部分と、方向性とすごく似通っている部分があるなあとは思うのです。そう思うと、昔の百貨店に置いてあるものというのは、百貨店にしかなかったような気がします。話を広げていくと、商店街のお店にあって、スーパーにはない世界があったのです。それは、日本の商売の専門性です。文房具屋さんには、売れないようなものでもしっかりと店頭に昔はいつでも在庫として置いてあったのです。しかしながら、今の時代は、ノーインベントリー。回転の遅い売れないものは店頭においてもらえない時代で、専門的なお店というものが少なくなりすぎ、どこでも同じようなものしか並んでいません。お店においてないので、お店の人ですらもそれが実際何なのか実際お客さんのもとめていることができるのかわからない状態で、お客様と接することになってしまいます。

また、開発したら売れるようなものでも、だれもが売れることが分からないと作らない時代です。昔あったワープロのようなプリンタ一体型のノートパソコンを作れば、簡単に何万台と売れるでしょうが、売れるのが分かると1年以内に大手が参入して価格競争になり商品サイクルはすごく短いのです。昔あった技術でも今再現することができない一例です。
2012年01月16日
今日は、午前中彦根の組合で、午後からは、奈良でアトリエ兼縫製教室を主宰されていますツルミルさんが弊社にお越しくださいました。来年秋の企画ごとに動かれていてそのお手伝いをということでのお話です。

お話をさせていただいていても、ご自身で生地を扱っておられるなあということはよく伝わってきます。私が布づくりに関してのお話をさせていただいていても吸収される力が高いので即断できることが多く、企画に関するサンプリングなども数時間の間にトントンと前に進んだ感じです。

その後、夜に県立大学の研究室の方が麻生地を探しにお越しくださいました。こちらもある企画でカーテンをおつくりになられるそうなのですが、それに適した生地がないかということで見に来てくださいました。在庫でフォローのできやすいものから、生成やオフ白、ベージュをベースに麻100%のものを中心に10数点提案させていただきました。

雑談がてらデザインのプロの方に、これをこう使うとこんな感じになって周りから見るとこんなふうとか、野暮な…。林与は馬鹿ですね。まあ、そういう話の中で生地の特性とか、使い方とか、手を加えるときのバリエーションの展開など、それなりにプロ向けのアドバイスが含まれているのはいるので選んでいただくときの判断材料になるかとは思います。

今日の仕事は夜からで、夜は織っているもののトラブルがあったということで、織りあがりの確認の作業を行い対応を検討いたしました。そのほか輸出関連の対応など、一日にしないといけない仕事というのは、仕事がないといわれる時代ながらも本当に多いものだなあと思います。
2012年01月15日
今日は海外向けのスワッチの手配を行いはじめました。海外に送るとき、アジア諸国とアメリカはサンプルスワッチなど比較的問題なく送れるのですが、EMSの場合、イタリア、フランスはどうも税関で止められてしまうことが多く、どうやら相手のタックスコードがわからないと処理ができないというようなあたりの話みたいです。でも、バイヤーさん側もタックスコードなんて必要ないと思っておられるので問い合わせても答えてくれないケースがほとんどです。

DHLやFEDEXの場合は、相手がアカウントを持っている場合にはタックコードが登録されているので不着のトラブルは少ないのかなあとおもいます。でも、本当の不着の理由というものは明らかにされないので、EMSでなぜ届かないのかはわかりません。分かるかたおられましたら教えてくださいませ。

以前は、プロフォーマインボイスの不備を指摘されて書き直したこともあったのですが、プロフォーマインボイスの体裁を整えても届かないことを経験していますので、やはり、タックスコードの不備の問題が不着の最大の原因ではなかろうかと思うところです。バイヤーさんがそのあたりの事情を知っておられる由もなくリクエストしても教えていただけないケースが多かったりもいたします。

EMSにしても、アジア、アメリカは「samples only no commercial value」という表記で届くケースが多く問題が少ないのですが、EU諸国に関してはそれが通用せず理由も明らかにされないので、ビジネスをするときには非常にリスクあるいはコストを伴う状況になってしまいます。
2012年01月14日
林与のレピアのドビーはドビーカードを使います。ドビーカードというのはプラスチックでできたロール状になったシートで、パンチングマシーンというタイプライターのような機械を使って、ドビー枚数に応じた穴を開けていくのです。てこの原理の感じで、穴を開けたところのドビーがあがります。シャトル織機のドビーもペックというネジくぎと木製のバーを使いますが基本的には同じ原理で、この仕組みは、基本的にジャガード織機も同じで、ドビー枚数が多いイメージの感じです。

今の時代は、カードや紋紙を使わない電子ドビーや電子ジャガードが当たり前になっていますが、林与の織機はそれを考えるとかなり古いタイプです。アジアやヨーロッパの大手のリネンテキスタイルメーカーなどは、最新の織機に入れ替えることで生産性を維持していますが、日本の機屋というものは職人さんが若いときに織機が新しく入ってそれを1代何十年も修理しながら守り続けるようなケースが多いものです。新しい織機がほしいなあと思うようなこともあったりはしますが、古い織機を守って作っていくのも昔堅気でいいじゃないかと思います。

昔の古い織機で、ビンテージアイリッシュリネンやリネン150番手が織れるけども、今の織機では織ることができないというのも、どこか不思議な話です。また、現在の一般的な織機では、織れないほどの細いリネンの糸が紡績されているということもアイロニーではあります。7年ほど前に林与が予想し動いてきた中国リネン紡績の細番手化が現実なものとなり、この数年はその細番手をどう織りこなしていくかに動いてきました。

そういう無駄なチャレンジ経験を積めるような余力が今の繊維業界にあるのかというとなかなか難しいものだったりします。理論や技術的にはできることでも実際にやろうとすると理論や技術じゃあない部分があったりするのです。熱意と忍耐の部分です。本年度は、現行の糸で、リネン150番手のアパレル向けの先染織物に挑戦することにいたしました。これというのは、昔のヨーロッパの高級なリネンの世界の復活に近くなっています。数十センチを織るのに何時間も掛けるような手織りを超えた世界を経験するのもありで、単に織るだけでなく、どこまで味のあるものに仕上げられるかまで挑戦したいと思います。
2012年01月13日
今日は一日中会社におりました。お電話をたくさんいただいた一日で、午後に海外送金の手続きに行ったりしました。別件でも、振込みしないといけない件があって、そちらの件が窓口では電信振込みは午後2時までということで、3時前ぎりぎりで、本日は振り込めないという話で予想外の展開でぎりぎりにでもなんとかと思っているとやはりうまくいかないことも多いものです。

今日は、書類関係も含めて8件ほどの出荷関係がありましたので、その手配に追われておりました。ものを作るだけでなく、ものを作るときの設備の維持や、ものを動かすときの伝票関連など、また、決済で間に企業が入られるなどすると、出荷の連絡先が増えるなど商社以上に複雑な事務面が付きまといます。会社として、そちらのウェイトが重くなるとものづくりのウェイトが落ちることになりますので、それだけはどうしても避けたいなあと思うことばかりです。

今日も輸出の案件で相手が自分はわからないといわれて聞いてほしいと頼まれたシッピング担当の方に問い合わせ話を進めてシッピングデイトを決め、船などをブッキングしたのですが、やはり、間が入られると余計に見えなくなることが多く、そのしわ寄せというものも増えてきてしまいます。

反物というものはそれなりに高価ですので、シッピングなどは空輸にしたほうがよいのかもしれないと思います。今は、糸にしても空輸で取り寄せることが多くなってきています。今回の商品は比較的安価な部類に入るものでしたが、細番手のものなどは目付けも軽いので空輸のほうが手続きも簡単で送料も逆に安く済むケースがあるのかと思います。
2012年01月12日
今、2月末くらいまでの予定が埋まってしまいましたので、3月くらいからの生産の予定を組み始めています。アパレル関連の今の春夏のものというのは大体このあたりで生産の予定は終了になります。2月くらいからアパレルさんの2013年の春夏向けの企画が始まります。1年前から企画を組んでバルクでのお話を前提に進むのが本来のアパレル向けの企画で、1ヶ月でつくるものづくりと、1年掛けてつくるものづくりとでは、かなり思い入れが異なるのも事実です。

ワインなどの世界などでもそうですが、工場の中で化学的に合成して作ったほうが品質は安定していて味も均一です。でも、本当の味を知る人からすればそれはよいものではなく、本格的に醸しての味というのは仕上がりにばらつきがあるのが本来で、本物志向の方こそその意味がわかるものです。そこで、何年の品は良いとか悪いとか、一方で悪い年ほど希少価値が高まったりするのが天然のものなのです。それを代用するがために、合成酒などが出てきて、それを楽しむのも良いことではあるとお思いますが、合成酒を良しとすれば、それはそれで安くて安定したものが作れます。

一番簡単なのは、どこかで探してきてラベルだけを変えるような手法が、一番、楽なものづくりで、それが今の時代の王道的なものづくりであることはご存知の方も多いとは思います。林与も織幅の問題で、広い幅が必要でしたら本番は外部にお願いして生産も可能ですとお客様の希望を鑑み提案することもあるのですが、ほとんどのお客様は、狭くても林与が手がけている度合いの大きいものをほしがってくださいます。実際、自分で作るよりも外部で生産するほうが安くつくれることのほうが多いのです。突き詰めていければ、自分で見本を作るよりも、見本を配っておられるところの生地を提案するほうがバリエーションも増え、リスクも少なく楽なのですが、楽に逃げると他と代わり映えのしない味のない世界です。

私自身考えるのに、インスタントラーメンってどうして変わらないものなのに究極のものというのができないのかなあと思うのです。そんなものができれば売れて売れて仕方がないと思うのです。でも、よく考えると、いつも同じ味のものというのは飽きちゃうんですよね。揺らぎみたいなものがあってこそ、価値が生まれることのほうが多い。

京都にも、全国にチェーン展開しているラーメン屋さんがあったりしますが、本店のラーメンはやっぱり本物でスープから正しく取っています。毎回、味に揺らぎがあったりするのですが、許容範囲にさえ収まっていればそれはそれで、本物の味なのです。チェーン店のものは、大きな工場で一貫生産されていて揺らぎが少なくいでしょうが、それはビジネスであり、マニュアル化されてしまって、目の前で調理している人の味の追求みたいなものは少ないのです。

それを考えると、リネンの仕上がりというものが毎回微妙に異なり、また、時間とともに変化していくのでそれはそれで本物としての価値ではないかと思うのです。
2012年01月11日
今日は、午前中、神戸港の倉庫に輸出用の出荷分を納めに行きました。新たな経験だったのですが、海運の現場というものは相当ラフな感じがします。アウターゾーンに突入したかのような粗暴さがあって、高価な反物を送るときには輸送業もしっかりと選ばないとならないなあと思います。

午後からは東京のJETRO本部で、欧米ブランド向けの商談会が午後4時からありました。荷物も生地ハンガーなどで相当重かったので車で行きたかったのですが、時間的に無理で、神戸出発前に生地ハンガーなど準備して、神戸から京都まで車で戻ってのぞみで、4時ぎりぎりに会場に入りました。

今回は、特別にジェトロの女性の方がブースでアシストくださってほんと助かりました。一人でなんとかなると思っていたのですが、送付するハンガーの管理やバイヤーさんとの話をするのを考えると、一人での対応というのは限られてしまって、話だけで2時間ほど10社ほどさせてもらうと、そのときはしっかりと覚えていても、商談会が終わると、どのブランドさんと何を話し何をお約束したのかが、ごちゃごちゃになってしまいます。

春夏向けの商談会ということもあって興味はたくさん持っていただきました。リネンのこの半年は展示会続きで、あまり新作ができていませんで、3月4月には、新作のものをいくつか作ってみようかと考えています。あと、海外向けの英語版の会社案内が必要だなあと思いました。
2012年01月10日
昨日は、「成人の日」で、今日は連休明けです。本当に1月というのは仕事が回りにくいものだなあと思います。自分自身が全力を出そうとしても銀行振込みひとつができないので待たないといけないのです。海外からものを購入する場合など、まだかまだかと振込みの催促があるのですが、お正月って明けて、5日、6日と稼動するだけで、次は10日みたいな感じです。

特にヨーロッパとのやり取りでは、時差の問題が絡んできますので、海外送金に質問などがあったり、海外送金した振込みの紙などをメールに添付して送ろうとしても確認が次の日ということで、1月頭から中ごろにデッドラインを作られてしまうとその対応こそが、日本の1月の事情からすると難しいものです。

ヨーロッパの国なんかは、クリスマスバケーションがあったりするので、明けた1月というのは仕事が動いていて当然みたいな、時差以外にも、バケーション差みたいなものが、噛合うのを難しくします。アジアでは、中国が旧正月にもうすぐ入りますので、それはまた1ヶ月の間、世界生産の何割かの部分が止まることを意味します。

これは相手の企業が云々だけでなく、税関や輸送関連にしても動きが不確かになりますので、納期に関しても不確かな要素が増え、トラブルも増えてしまいます。通常の納期設定などを守ろうとすると、年末の22日過ぎから1月中ごろまでの1ヶ月間というのは、ストレートには物事は進みにくいものです。
2012年01月09日
絵を見て楽しむ、本を読むのを楽しむ、など、絵の美しさやストーリーの展開の面白さの部分が評価のひとつではないかと思います。また、その作者の人生観のようなものを捕らえるというのもシリーズを見たり鑑賞したりすることで、ファンとしては大事だと思うのです。

カリフォルニア大学アーバインキャンパスのイクステンションにいたときに、フリーダカロについて発表をするというのがありました。メキシコ人の女性画家でみたいな話で、絵がシューリアリズムで怖さを感じるような側面のある作風で、その女性画家のことに興味をもったというよりも、その作風がどうして出来上がってきたのかというところに彼女の人生が作品として現れているというのを強く感じました。

たとえば、人物画の中にサルが作品の中に出てくるのです。それは、彼女がサルを飼っていたこともあるかとは思うのですが、それ以上に、中学生のころに交通事故で子供を生むことのできない体になった彼女の寂しさを表す象徴のひとつとしてサルが出てくるのだと思いました。

色使いは綺麗ながらも作品を見ていても売ろうとかいう意図のあるものではなく、作品の中に自分自身の世界を表現するのが大事であるというような気がします。しかし、あのような重い作品を買って今などに飾るお客さんがいるものだろうかと思うのですが、芸術の世界というのも最終的には哲学に結びつくので作品としては評価は高いのであると思います。

ピカソにしても青の時代が比較的写実であったのに、キュービズムに傾倒していったのも、目の前にいるモデルたちの内面までもが絵にでているということだといえます。ピカソの作品のなかでも、私の好きな作品のひとつにアルルカンに扮するポールというのがあります。本当に写実的でピカソらしくないのですが、ポールはポールだという表れではないかと思うのです。

キュービズムにしても表現技術の問題ではなく、ピカソ自身が感じる自分の世界を表現しているということだといえ、ピカソは絵を描いているときに上手に書こうというのではなく、自分の感じたことをそのままに表現してそれがわかる人にはわかるというところが偉大なのだと言えます。ひとつの作品だけですとそれは見えてこないかもしれませんが、いくつもの作品に流れる共通した要素を感じることで作家の人生観を感じることが可能なのです。

絵なんて本物は何億円、絵の写真だとネットでも無料で見られますが、その何億円の価値というのは、ピカソ自身の人生観が価値を生み出しているのだといえます。ゴッホの耳を切った話なんかも有名ではありますが、耳を切ることと絵のすばらしさなんて関係はないと思うのですが、ゴッホの人格というものがゴッホの絵の価値の評価に大きく影響をしているとは思います。

ピカソやゴッホにしても、絵を描き続けるのを支えることのできる人がいたことは幸運ではあったかと思うのです。今、日本にもたくさんの芸術的な活動をされている方がおられますが生活を立てるのは非常に難しい世界であると思います。特に、綺麗系ではないシュール系のものというのは、哲学的で芸術本来のものであるかと思うのですが、飾るようなシチュエーションの想定が難しく、商品としての価値はつきにくいものです。
2012年01月08日
このところリネンの厚地を織っています。もっと厚く織りたいなあと思えば、更なる手法を使えばあと1割くらいは上げられるかと思うのです。あまり厚くしすぎると織っているときにダブる現象が起こります。それは、目でも生地が前後に大きく筬が打たれるときに動くのでわかりますが、もうひとつ織機の音が苦しそうになるので、これ以上行くと織機が壊れてしまうなあという話になります。

もともと、林与の織機は重織機ではないので、あまり厚いものを織るのには適していませんが一方で重織機だと麻の細番手のものをおるのにはトルクが大きすぎて辛かったりします。

2年ほど前に66番手の糸で縦インチ100本X横インチ88本の織物を織りましたが、まだ糊を付けて糸を強くするなどすれば、縦横でインチ200から220本くらいまでいけそうな気がしました。縦糸がももけて織れなくなるのです。通常ですと、55本X55本くらいの織物で、縦横でインチ110本くらいの織物な感じですが、その2倍くらいの密度まで上げることができることになります。

前にも書きましたが、縦本数が2倍、横本数が2倍ですと、単純に糸が4倍になるだけでなく、単純にみても4倍難しい織物になりますので、実際には限界までいくので、生産性の面で10倍から20倍難しいレベルの織物になります。出来上がったからといって4倍の値段が通るかというと通らずで、高密度の織物というのはつくるメリットは少ないのです。

世の中には出回りにくいリネン生地ですが風合いなどはとても面白い感じです。今、織っている40番手も織りだけでなく、加工も特別にしました。厚地だからといって太番手と同じような顔だと面白くないのでナチュラルにこだわってみました。

ジャパンクリエーションの展示会でイタリアの方とお話したときも、リネンの厚いものは必要ないというようなコメントをいただいたことがあります。やはりイタリアは暑い国ですので、リネンの厚いものというのは北アイルランドなどの寒い場所に向くのだと思います。
2012年01月07日
今日は天気が不安定です。晴れたり雨が降ったり雪になったりと何十回も繰り返しています。新年早々、もうそれほど寒くはないということなのでしょう。お店では冬物のセールが行われ、もうすぐ春物が並びはじめることになります。

仕事の合間に、2月のパリ行きの予算などを出すために調べごとをしていました。展示会を考えているので荷物が多いことを考慮すると、エールドフランスがよいのかなあとも思ったりしています。リネンハンカチや試作品などと、ハンガーを中心に持っていきますがスーツケースいっぱいだと30kを超えてしまいそうで、ほかの航空会社だと超過料金が割高になりそうです。

大学のときに、旅行でパリに行きました。覚えているのは凱旋門、エッフェル塔、ルーブル美術館くらいでしょうか。エッフェル塔のミニチュアの70cmくらいある鉄のエッフェル塔を買って、友達のお土産用にスーツケースに斜めに精一杯入れて、飛行機に乗るときにX線写真にきれいにエッフェル塔が写るので、X線検査の担当の人が大うけしていて私にサムズアップしてたのを覚えています。

パリもテックスワールド展に出る予定だけで今回観光などの時間はなさそうで、同時にプルミエールビジョンも開催されているのでそれを少しでも覗ければよいかと思っていますが、行ってみないとどんな雰囲気なのか分からないところがあります。時間が少しでもあれば、パリの生地屋さんでリネンを眺めたいなあと思いますが展示会が終わってからの時間はお店も閉まっているでしょうね。
2012年01月06日
今日は、ひこねの組合の事務所開きで、商工会議所ならびに市役所にご挨拶に伺いました。会社に戻ってからは加工出しでへとへとになりました。加工工場さんも今日からスタートのようで、会う人事に新年のご挨拶です。やっぱり、今日が仕事始めのところが多いのかなあと思います。

アパレル向けの反物を巻く紙の管を、紙菅(しかん)といいます。輸出向けの小割りにしないといけないのがありまして、加工工場さんに40本ほど販売して分けてもらいました。木管は再利用なのですが、紙菅は1回使うと通常は使い捨てになるのでもったいないなあと思います。子供たちがチャンバラごっこして遊ぶのにはそれほど危なくないのでとてもよいのです。

紙管も「帯に短し襷に長し」と同じで、生地の幅より少し長いくらいのものでないとよろしくないのです。紙管も長さだけでなく、直径と厚みも重要な要素です。丈夫であればあるほどよいのですが一回で使い捨てにするので、あまり丈夫なものはもったいないのです。

生地を立てて販売される生地屋さんの場合には、紙管が中で折れたりすると生地にしわが入ることになります。反物を肩に担いで運ぶと中で紙管が折れやすいので、反物は両手でしっかりと持ち上げるように運んであげるべきです。反物を放り投げる加工工場や運送会社の方がおられますが、そういうときには紙管が折れると生地にしわが入ることを知らない人が多いのです。
2012年01月05日
手仕事の力ってすごいなあと思うことがあります。機械化されたものが汎用的なものしかできないという限界があるのに対して、人が手がけると作るのが難しいものをなんとか形にしようとして動くので、ほかではできないものが生まれてきます。

これは、布という範囲にとどまらず、糸にしてもそうです。機械に任せておくだけでは、通常の番手しかできませんが、人がそこに介在することで細い番手が可能になり、また、その細い糸を扱うために何倍もの労力を入れて織ることができるようになるのです。

また、難度の高い生地などは縫製の力が大事です。ほかにないよいものというのは無理をして作っているので、逆に、いくら手をかけても難が増えることが多いのです。それをカバーするだけのものづくりの力があると、ほかにはできないよいものができてきます。布をいくら限界まで挑戦してつくっても、縫製の力がないとよいものに仕上がらないことも多いのです。

量産のものに関しては、今は日本国内よりも海外のほうが縫製の基準が高くなってきているように思います。縫製が海外に行ってしまうとその材料調達も海外に移るのが自然の流れです。自動車や家電などのアセンブル部分が国内に残っていることにより、それに対しての部品調達を行う産業が国内に残りえるのです。
2012年01月04日
弟が横浜に帰りました。3が日仕事ばかりでほとんど話もできませんでしたが、元気そうで、シスコシステムズでシステムエンジニアをしていますが、アメリカも景気が悪く、今年の冬休みは長いそうです。

今、円が強くユーロが弱い状況になってきています。不思議ですが、先進国が潰れたり、デフォルトすることなんてほとんどないのに貨幣価値が、これほどまでに上がり下がりするのは、投機的な要素が働きすぎていてマネーゲームでしかありません。

ブランド関連でも、この円高というのは大きな影響があります。インポートブランドを手がけておられる方にとってはプラス材料となりますし、国内のメーカーにとっては、インポート愛エムの価格が下がったことにより、シェアの取り合いでマイナスの影響が生じます。

基本、日本のテキスタイルメーカーにとって円高は悪影響です。林与は、海外への輸出の比率は低いので、円高云々に一喜一憂するようなことはほとんどありませんが、輸出入で生計を立てられている方にとっては、貨幣価値の上下によって、仕事そのものが変わってしまうこともありうるのです。アイリッシュリネンが消えた背景にも通貨の問題が絡んでいます。
2012年01月03日
お正月といってもショッピングセンターなどは、お店を開けて普段人集めに苦労をしている分をまかなおうとしています。買い物も、実店舗よりも高額な商品ほどインターネットで買う時代になってしまい、実店舗の価値というものが下がってしまっています。

それでも記念に買うものや、値段じゃない思い出作りの買い物などは、買う場所すらもが大事であったりするのです。ブレックファストアットティファニーズなどは、買うものの価値よりもその場所が大事というような部分ではないでしょうか。憧れの場所っていうのがあるのもよいものです。

私の中では、日本的過ぎるかもしれませんが、京都の三千院が一番好きな場所のひとつです。特に秋の透き通った空気の夕暮れ時の三千院というのはよい感じがします。私自身は、宗教的なものはあまり好きではないのです。高校もプロテスタント系の学校でしたが、キリスト教の授業は、誰々が言ったからすべて正しいというのがいかなるものかと思うことが多かったです。私が好きなのはお寺にしても自然に包まれている部分なのかもしれません。

この3が日も仕事をしていて思うのが、ものづくりに没頭できればよいのにと思うことです。でも、一方で、ものづくりに没頭している人のものというのは商売にはなかなかならないものだったりいたします。ものづくりに没頭しているということはひとつのものを作るのに膨大な時間を使うので、それをするよりはものづくりに没頭した人のものを、真似て安く作って商売するほうが商売上手だったりします。

この年末にある大手のブランドさんから荷物が届いて、ご担当者の方のお体の具合が悪く、この1年ほどあまり会社に出てこられておられないようなお話で、代わりの担当の方が対応を下さっています。お会いしてお話していると元気をいただける方でしたのにご回復をお祈りいたします。
2012年01月02日
今日も不思議な現象で、糸を替えると同じロットの糸を使っていても反物の織幅が1cmほど大きくなる現象が起こりました。これは、トップの糸で、太さが同じだとすればトップの混ざり具合が微妙に違うことから糸の硬さが異なり、糸がやわらかくなったということだと思います。整経の現場では一つ一つの節、織っている現場では糸の錘の差くらいまで見えてきます。

ピュアな糸というのは通常は高品質でなければなく、混ざる糸というのはグレードを落とすというのが一般的な方法です。双糸にするものも通常はグレードの低い単糸でよいとされます。染にしましても、均一の太さの糸を染めると均一に染まりあがりますが、糸の斑や節が多いと白っぽく、ソリッドな色には染まりあがりません。

今のリネンの紡績糸というのは均一なものというのがなくなってしまったような感じで、先染でカセで染めても中までしっかりと染めることができないケースが多いのです。太い部分というのは結局、中が薄く染まってしまいます。中までしっかりと染めようとすると特殊な方法が必要ですが、今の時代にはそれをできる染工場はないと思います。

以前海外の紡績工場が後染めが斑に染まった問題も、糸の細い太いから生じる染斑から来ていることを紡績工場の方には教えてあげましたが、この問題というのは特に、縦糸に綿やシルクを使って横糸にリネンなどを織る場合に症状が見えやすい問題です。

錘の差の問題は、リネンでは当たり前だったりして、織物を良く眺めると2倍くらい太さが違うことが多いのです。見た目で2倍違うということは、重さにすると、直径が2倍違うということですので4倍違うことになります。特に細番手になってくるとこの傾向は良くわかります。

電子はかりで糸を分析すると、2mの長さを取ってみても、どこの部分でも理論値のプラスマイナス10%くらいの範囲に収まっているので、今の紡績技術というのはすごいものだと感じます。この部分は昔の糸よりも今の糸のほうが優れています。しかしながら、昔の糸には見られなかった、今の糸特有のリピートする極端なスラブが出たり、撚りが掛からないといわれるのも今の紡績方法の影響だと考えています。
2012年01月01日
新年あけましておめでとうございます。
大晦日というのはテレビをみる唯一の機会なのですが、テレビがまだ地デジに対応していませんのでテレビを見ることのない大晦日でした。

最近、リネンの高密度のものを織ることが多くなり、麻織物が難しいのかという問題ですがそれは糸が切れやすいからで、合繊はもとより、綿やシルクだと起きない問題でも、リネンの細番手の場合には織れない問題が良く起こってきます。

縦糸が切れて切れて織れない部分がどこなのかというと耳の周辺だったりします。その問題がどこにあるのかというと、実は織機の設定ではなく、整経の問題にあることが多いのです。それが、リネン織物の場合には特に起こりやすい問題で、綿の機屋さんなどがリネンの縦のものは織れないといわれるケースのほとんどです。

特に、織ったときに耳の部分のドロッパーが下がってくる現象というのは起こりやすい問題です。一度こういう問題を経験すると1mを織るのに何時間もかかりボロボロの布しかおれませんので次からは同じものには挑戦したくなくなるという機屋さんも多いかと思います。

なかなか最近は林与自身も徹底ができていませんが、耳の糸ひとつにしても耳糸用の綿の糸を用意するのが本来は完璧なものづくりだったりします。通常の糸と比べてどれほど糸切れが少ないかなどは商品にはほとんど見えてこないところではあろうかと思いますが、耳糸ひとつにこだわれるような昔のものづくりというのは流石だなあと感じます。
2011年12月31日
1年の終わりの日ということで今日も仕事でした。外が止まった状態なので仕事が逆にしやすく、ものづくりには最適な年末年始です。

今朝も急いでいる仕事の分で調子よく横糸が織れていたのに、急に横糸の持っていくのが調子が悪いのに悩まされていて困っていました。まったく持っていかないのです。本当に困ったことだと頭を悩ませていると3時間で神様が降りてきました。

たぶん、1時間くらいであきらめていたら神様というのは降りてきませんが、絶対に解決しようと考えていたので神様が降りてきてくれた感じです。それが3時間でしたが何年たってもいつまでも気がつかないことってあると思うのに比べると幸いです。

私自身、いつも織機とにらめっこということではないのです。職人さんがいれば職人さんに織機の修理をお願いしますし職人さんが修理で悩んでおられるときに初めて私の出番が来ることも多いのです。結局、解決方法というのは簡単なことが多いので、逆に、それに気がつかないことが多く頭を悩まされるのです。

一方で、先日は職人さんがシャトル織機のブレーキに油が塗ってあって、織機が糸が切れてもすぐに止まらないと嘆いておられました。
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