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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
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2009年12月28日
今日は、県のほうから、ご紹介をいただいた本町の繊維関連の会社にお伺いして、海外との取引に関する体験談などを聞かせていただきました。滋賀県にゆかりのあるということで初めてお伺いさせていただいたのですが、貿易に関すること以外にもいろいろなご経験を聞かせていただき、人生経験をもたれているかたの強みというのを切に感じました。今のものが流れにくいといわれる時代に、新しい商品を開発して開発するだけでなく確実に流通させていくような企画を生み出していかれる話を聞いて、ものを企画される側でありながら流通も下支えされているところに、何か答えがあるのではないかという思いがしました。

私自身も深く考えつづけているのが内部での人材の育成の必要やどうやって仕事をまかせていくかという問題です。仕事を自分で生み出していくことのできる人材を育てるためには、自分のやっていることを手伝わせるのではなく、意欲をもって自分で動ける人材を中に外に見つけ譲っていくという形がベストなんではないかという気がしました。やる気のない人をどうモーティベーションするかということに無駄な力を使っているようでは前に進めないのは当たり前で、モーティベーションをもった人とどれだけ動くかこそが、物事をやる上での鉄則ではないかと思いました。

お話を聞いて思ったのが非常にたくさんの経験をもたれているのに、世代交代的な必要性を常に頭においておられ、若い者を立てるということをされているので、全力で仕事に打ち込みたい意欲をもった若者が勤めるなら、力強いアドバイザーがおられる会社でうらやましいなあと思いました。
2009年12月27日
昨日は、午後から長浜の布工房さんにいきました。リネンの細番手のプロジェクトで、商品化するシャツなどに関しての打ち合わせです。通常では服にすることがほとんどないリネンの100番手超クラスの織物を、シャツやブラウスにするというびっくりな企画です。ショップだけでなく、縫製工場を持っておられ日本の5大アパレルの製品を請け負っておられたわけですが、技術のある職人さんというのがだんだんといなくなっていかれて、仕事の依頼があってもものをつくるのが難しくなっているそうです。

通販や百貨店の話などもしたのですが、手一杯で、なかなかボリュームをこなすような仕事は難しいそうで、とりあえず、今回の県のほうのプロジェクトの詳細をお願いいたしました。メンズ、レディース各10枚くらい、いろいろな柄のシャツ、ブラウス、ワンピースを試作してもらい、生地としてだけでなくジャパンクリエーションなどの場で製品の形でPRさせていただけると思っています。

技術的には、量産の面では今のところ110番くらいが限界なのですが、数年後には、120番手超クラスでのシャツやブラウスが出来上がることになります。高いものが売れないといわれる時代に、リネンや麻の最高級ラインをつくり続けていこうというのが林与の独自のスタイルです。

私自身は、日本の伝統的な産地でものをつくりつづけていると国際的な展示会や市場においては値段は10倍高くても10倍の価値があるものとしてみてもらえることを非常にありがたいなあと思っています。逆に、本当の中国ブランド企業が日本国内に進出してきたときに、今、勝ち組といわれるファストブランドや量販店ですら10年後には高いから厳しいといわれる時代がくるのではないでしょうか。

昨日は夜、ひこねの組合の忘年会があり。今日は、その忘年会で出た新しい話題などを前向きに検討、また、講演会の準備のために動いておりました。2次会で、久しぶりにひこねの袋町に飲みにいきましたが、どこのお店も以前と比べるとお客さんの数も少なくほんと寂しくなったものだなあと思いました。
2009年12月26日
「フェアトレード」という概念が、ありますが、それが本当にフェアトレードなのかというと、日本国内ですら、フェアトレードな概念が成り立っていない現状がありますので…。ファストブランドといわれる中国ベースの量販系が一人勝ちのスタイルが続いていますので、その中で、フェアトレードを謳うことにどこまでの正当性があるのかというレベルに来ているかと思います。フェアトレードという概念を活用されたい方ですら、そのコストを自分で負担できるかというと駄目なのが現状です。ビジネスありきのフェアトレードというのが日本のフェアトレードの現状です。

私自身は、ものづくりをしている人間ですから、フェアトレードの概念には大いに賛成をしているのですが、フェアトレードの概念を振りかざしておられる方が、ものづくりと関係のない方だったり、ものづくりの現場をしらないことが多いのです。果たして1割、2割のコストアップでその概念が貫けると思っておられると、結局はプロジェクトとしての永続性が保たれません。

話は変わってしまうかもしれませんが、USA for Africa みたいなブーム的な弱者の活用に終わってしまう危険性があります。今の日本メーカーを中心とした紡績業界が本当に、途上国の生産に携わられる外国人を支えられるかというと不可能だと思います。日本の国内ですら、工場の閉鎖、リストラで産業を閉鎖しているのが本当のところです。

国を含めて強者が利益を得るための、その場凌ぎに終わらないような、真の意味でのエコやフェアトレードが謳われないと意味がないのではないかと考えます。弱者保護を謳い文句に利用するレベルでのフェアトレードならやらないほうがましかもしれません。弱者保護を謳い文句にするからには、長期的な永続性のある計画が必要であると思います。
2009年12月25日
今日は、ひこねの組合の理事長が中央会のほうに出向いていかれたのですが、午後3時ころ電話をいただいて、中央会のほうから北川陽子さんのやっておられるファブリカ村をご紹介されたということで、私も昔から業界で顔なじみであったので、一緒に北川さんのところに向かわせていただきました。

一年ほど前にも、ファブリカ村が改装になる織物工場だった工場のなかの二十年ほど眠っていた2台のシャトル機械を林与に移したような経緯もあり、つい先日、半田付けの野瀬精機さんご夫妻とお話したときにもファブリカ村に行かれた話をおっしゃってたので、気にはなっていたのですが、今日、オープン後初めてお邪魔することになりました。

ファブリカ村の活動は、北川さん自身が長年取り組んでこられました、染のほうだけでなく、県内の現代アート作家さんたちの作品を皆さんに見てもらえるような場所を提供するようなコンセプトで、店内には、焼き物やステンドグラスなどの作品が並んでいます。店内は広々としており、昭和初期のベルト式のシャトル織機2台が中央にあり、そこがかつて織物工場であったことを偲ばせます。

陽子さん、お母さん、妹さんのご家族で運営されており、一人で尋ねられても近江の織物の歴史の一片を感じていただけるかと思いますし、また、グループで行かれましてもテーブルのほうでワイワイと時間をすごしていただけるかと思います。ミーティングなどの会場としても貸りることができるそうです。

ファブリカ村ホームページ http://www.fabricamura.com/about/index.html
2009年12月24日
今日は、クリスマスイブですね。朝、車に乗ったときに案内口調で「メリークリスマス」とカーナビに言われて、複雑な気分でスタートでした。

今日は午前中、顕微鏡半田付けをされている工場にお伺いして、目視が不可能なレベルの糸入れ修正などを試してみました。半田付けの技術では国内でもトップクラスで、半田付け入門のDVDなども販売され、大手電機メーカーや学校の教育教材に使われるほどのその道を極められた社長の居られる会社です。実際に工場のなかでも、社員の方が、顕微鏡を覘きながら手作業で、半田付けを坦々とされているところが日本の技だなあと思ったりします。お土産にお菓子をいただきまして、大変気に入った拡大鏡をお借りしまして会社に戻りました。

午後からは糸商さんが来られまして、久しぶりに起しくださったのでどうされていたのかという話をお聞きしていますと、手術をされたということで、元気そうに動いておられる皆さんでも60歳を超えておられることを実感しました。20代、30代がないというのは、業界を取り巻く宿命なのかなあという気もしますが、その背景には、繊維業界の人情味みたいなものがあるのを感じるのは私だけでしょうか?

夜には、クリスマスカードも友人などからメールでいただきまして、来年もよいことがある気がしました。
2009年12月22日
今日は、アパレルさんから修正のため洋服が帰ってきていましたので、それをどう修正するか検討しておりました。今回はラミー糸で、織りキズなど対応は比較的簡単なのですが、やっかいなのは、糸のフシの問題です。

糸のフシというのは、糸商さんから聞くところによると、スプライサーヤーンとよばれるノットレスヤーンでは、スライバー同士を繋ぐときにどうしてもできてしまうということだそうです。そのフシの部分が目立つのも他の部分が奇麗過ぎるからということもあり、困った話です。

糸の問題を少なくするためにフシ取りに掛けるということも一つの方法ではあるのですが、それはそれで、機械的な継ぎ目が多くなるので、どうだろうかなあと思います。人間が手で繋いでも、目立たないほどまでの小さな結び目にするのは難しいので、機械での結び目というのはどうかなあと思うのです。

糸のフシの問題に関しては、糸メーカーも糸商も対応がどこもできないという感じで、機屋自身が糸をしっかりと見極めるというのが大事になってきています。オフ白や生成のままとかなら大丈夫でも先染にすると糸の品質のいろいろな問題が見えてきます。この10年ほどは、ラミーもリネンも品質の低下を感じている中で、ラミーやリネンの高級なゾーンが残せるのかと心配をしております。
2009年12月21日
今日は、お昼前に加工工場の社長さんが、麻のほうの組合でハンカチなど小物にできるような生地がないかということで起しになられました。私のほうは私のほうで、加工に関することをたくさん尋ねました。

家庭洗濯するときのリネンの問題に関しては一定の認識があるのですが、加工工場のほうでも液アンによる形態安定なども取り組んでおられるそうですが、堅牢度の問題などから色を限定しないといけないか、あるいはスレンなどで染めて超高級なものに持っていくかで、どちらにしても、リネンの形態安定をそこまで完璧にされるところはほとんどないとのことでした。

私の思うのは、リネンをなるべく自然な形で家庭洗濯できるようなあり方がよいと思っています。リネンというのは、脱水したらパンパンと叩いて伸ばしてあげて、完全に乾く前にアイロンを掛けてあげるとしっとりとシワも少なく良い感じで仕上がるのですが、今のコインランドリーの時代を想定すると家庭洗濯表示は本当に大丈夫なのかなあと思います。経験された方もあるかと思うのですが、リネンは乾燥機で乾かしちゃうとパサパサのリネンになってしまいます。

他にも柔軟剤などの話も聞かせていただきました。今の市販のリネンというのはやわらかいものが多いですが、シリコン系の柔軟剤をしようしているので、ヌメリ感があり、ナチュラル感が少ないとのことです。でも、シリコン系の柔軟剤を使うと案外洗濯での風合いの変化もすくないという話を聞きました。ある意味、市販のリネンがやわらかくてもリネンっぽくないのもその辺りだろうと思います。

麻の加工では全国的に定評のある加工工場の社長さんだけに、私が取り組んでいるリネンの問題に関しても仕方ないという答えではなく、原因の究明を大事にされ、いろいろな解決方法を探す手伝いをしてくださる姿勢には感謝いたします。
2009年12月20日
今日は、ゴルフ場の支配人さんがお越しくださいました。女子プロゴルフツアーなども行われます名門のゴルフ場で、7年ほど前まで「林与」もゴルフコンペを毎年7月7日に開催させていただいておりました。

「林与」の応接室に、女子プロゴルファー福島晃子さんのサイン入りの写真があるのですが、スポーツメーカーさんが林与の生地を使って作った先染のシャツを着ていてくださります。先代の與志郎がゴルフが好きだったので、非常に大事にしていたものなので今も応接室においてあります。

支配人さんがお越しになられて、いろいろと昔の話や、この近辺のお話をしておりました。ゴルフ場というのも今は本当に不景気なようで、今までですとゲストは3万円を超えるプレー費だったのが、今は1万円のプレー費になって、それでも来てもらうのが難しい時代であるとのお話です。

あと、プレイヤーの高齢化の話についても触れておられ、会員の平均年齢が70歳くらいにもなっておられるような話で、世代交代を図りたいとのゴルフ場のほうでは考えられているが、若いプレイヤーというのがいないという現状だそうです。私はゴルフは下手ですので、お誘いいただきましたが丁重にお断りいたしました。
2009年12月19日
今日は、レピア織機の調整をしていました。レピア織機というのは、原理はそれほど難しくないのですが、目ではとらえにくいくらいの高速で動くために、タイミングの調整というのが非常に大事なのです。

糸をつかむタイミング、切るタイミング、放すタイミングなど、ズバリのところに合わせてあげないともっていきにくいのです。特に、番手が100番手クラスで細いとそのタイミングが微妙です。

糸を機械が持っていくときにはさんむと切れてしまったり、放すときに引きちぎれてしまったりと、糸自体の弱さもさることながら、一分間に180回程度繰り返される糸の手渡し作業のような機械の動きにうまくシンクロさせないといけないので、テンションの調整なども含めて、うまく織れる様な状態を維持するのは一仕事だったりします。

林与のレピア織機は麻を織る専用なので回転を落としているほうです、最近の綿や合繊の織機の世界では1000回転近いというようなところも多いです。一方、林与のシャトル織機は超低速で、90回~100回転くらいで生産性はまったく重視していません。目でシャトルの動きを追うことができたりします。そのたびに1本1本織られていくので、一時間で2mの世界だというのは納得してもらえると思います。

太い糸を織るのと細い糸を織るのとでは、機械のタイミングやテンション、挟む強さなどがかなり違ってくるので、たとえば、25番を織ったあとに100番を織るとなると、スムーズに織れるわけではありません。

同じものを織り続ける機屋さんの場合、番手に応じた、機械の調整などがほとんど必要ないので、生産効率を上げることが可能です。そのため、麻の世界でも、細い番手に特化した機屋と太い番手に特化した機屋とでは、まったく別の世界だったりします。資材系と服飾系の住み分けもその辺りです。
2009年12月16日
この2ヶ月ほど織り続けて織りましたストールのほうが加工から上がってきました。トータルで50種類以上のタイプが出来上がったと思っています。輸出の分も入っているので、加工屋さんには急いで仕上げていただいて感謝、感謝です。

今朝、加工屋さんに納期の件でお電話したところ、担当の女性の方が、「大変でしたよ」といわれたので、問題があったのかなあと心配しましたが、納期も迫っていたので、その女性の方が、林与のストールの加工の現場の手伝いもしてくださったようで、「良い感じになってます」と布の状況までも教えてくださり、仕上がってくるのを楽しみにしていました。

午後に上がってきたので、早速、輸出分の縫製作業などに取り掛かり、明日の出荷予定です。とりあえず、急ぎの分を済ませた後、縫製や房つくり、ネームタグ付けなどして画像のアップなどクリスマスあたりに計画しています。ギンガムチェックストールシリーズですので、来春向けです。

次は、リネン100%タオルやランチョマット素材にチャレンジですが、「林与」がやるからには、「林与」らしいものを作りたいなあと考えています。シャトル織りの多重織タオルなどでも、先染めだったりすると良いのではないでしょうか。JC2011SSに出品できるのではないかと、自分自身での楽しみの一つです。
2009年12月15日
今日は、午後から組合のほうで、今年度の予算の件で税理士の先生と打ち合わせしました。その後、ネームラベル事業がスムーズに機能しているとはいえず、その問題で、先日もメーカーの方に最新版をインストールしてもらうなど組合のほうに来てもらったのですが、XPの中にドライバがあるということで聞いていたのですが、調べてみるとドライバが当たっておらず印刷ができなかったというお粗末な話で、手探りでドライバを探してインストールしましたが、第三者の作った不透明なこのシステムを一般の事務局員たちが運用していくのは厳しいところだなあと感じました。サポートの面なども考えると、いろいろなプログラムの不具合の問題で機能を制限したり、他の画像ソフトを併用したりしながらの状態で使うよりは、様子をみて新しいシステムへの移行も考えていく必要もあるのではないかと思います。当面は事務局の効率化が最大の課題です。

彦根の事務局のほうも体制を整え、150年祭のひこにゃんブラなどの販売も始めており、ニュースを見た方からの全国からの問い合わせもあって、地元の量販店なども販売を検討してくださるなど、ひこにゃん人気に乗りまして縫製の技術をPRしていきたいと前向きに進んでいます。来年度に向けて補助金を活用した事業計画などできないかと考えております。織物は特殊性があって比較的が受けやすいのですが、インナーファッションの縫製の分野というのは戦後栄えた文化です。戦後に、足袋などの縫製技術の応用で、彦根で、日本では始めてのブラジャーやショーツの縫製が行われました。今では、輸入の低価格なアイテムに主役を奪われてしまっているのが残念なところです。
2009年12月14日
2月に彦根市の市民創生事業の一環として行われます「ひこね繊維ものがたり」の企画会議が夜ありました。彦根地域の縫製の歴史や現状を語れるような講師の方にお願いして、彦根市民や滋賀県内の方に彦根についてもっと知ってもらおうという講演会です。

今のところの予定では講師の方というのは、地場産業に実際に精通しておられる方に講演していただこと仕事をやってこられた方を当たっています。他にも、地場産業に興味を持って研究していただいている方にも発表の場としてこの講演会が役立てば有意義ではないかと思うのです。

来年はじめころには、パンフなどの配布が始まりますので、そのパンフを作成するところから始まります。ひこね地域には、3Bと言われる仏壇、バルブ、ブラジャーの地場産業があります。(バルブは実際にはVなのですが、ローマ字で書いた和製英語ということで…)近江上布も実は彦根藩の特産品だったのですが、今の彦根では近江上布は彦根の地場産業としては認知が薄く、明治以降の近江上布の名残を組む機屋というのはとくに愛知郡や神崎郡に集中していました。

私が麻織物に関わってからはまだ15年ほどですが、この15年で、実際に100年以上も機を守って織っておられるところがつぎつぎに廃業されていかれる感じでした。ひとを抱えてものをつくることの効率の悪さというのが、今の時代とは合わないのです。生産性が重視される時代に、麻織物のような手間暇掛かるものを織るだけでなく、独自企画の新商品を自らの手で生み出していくことのロスの大きさが命取りとなってしまうのです。

今の新しい世代が仕事ができないといわれておりますが、職人さん世代にしても、仕事振りが良い人は少なく、サボり癖が付いていたり、単純な作業は出来てもトータルなものづくりをできる人というのはまれで、その人の仕事を完璧にするために補助の人をつけてあげないといけないという半人前な話をよく聞きます。日本で物をつくることの難しさは、社会全体の構造であるといえ、しっかりとしたものづくりができる人というのが少なくなってきているのは事実だと思います。

一日一日しっかりと出来ない人が上達するかというと退化していき、企業も退化して行き、産業も退化していくという流れに包まれるのです。個人的な手作りの匠の世界というのは一人で守れるものですが、産業として匠の世界を守り続けていくことは相当難しい時代になって来ています。向上心や意欲をもった海外に追いつかれ、追い越されるのが当たり前といえば当たり前の時代で、その構造的な大きな問題を解決しないことには、景気が良い悪いとかではなく、日本の繊維産業というものが立ち直るとは考えにくいです。
2009年12月13日
林与では、近江上布の捺染が得意だったので、昔は、ボイラーなど染めの設備がありまして、糸を染めることも出来たのです。でも、滋賀県には琵琶湖があるので、環境には非常に厳しく、私が生まれた昭和44年ころには捺染をすることはなくなっていました。

私自身、自分の会社に入ってから、整経という作業を覚え、織布、染、加工のことなど少しづつ覚えていきました。今の林与は先染織物を得意としているので、染のことにも詳しくないといろいろな問題には対応が出来ません。

そこで、染を学ぼうと、川島織物スクールに行って学びました。皆さんにお勧めしたいのが川島織物スクールのプログラムです。非常に内容が濃く、織物に興味をもたれた方がおありでしたら、本当にお勧めです。なかなか、草木染の本を買ってやろうとしても、本当に正しいのか正しくないのかわからないと思うのですが、スクールでは基本を教えてもらえるので、3日間勉強すれば、自分で草木染などをスタートするのには十分な知識が付くと思います。

私は、同志社高校時代を、京都の岩倉で過ごしたのですが、お隣の静原という地域には一度も立ち寄ったことはなかったのが不思議です。岩倉から静原に抜ける道があったということ自体知りませんでした。たらればになりますが、大学なども経済など勉強せずに川島織物スクールで勉強させてもらっていれば、もっと独創的な世界を作り上げられていたと思っています。

染の作業というのは、洗い物が多いので、主婦の方は料理を作るような感覚でテキパキとこなしておられました。食塩とか、ミョウバン、ほう酸、モノゲン、酢酸とか、私がチンプンカンプンでも、女性の皆さんはその特性をよくご存知で、皆さんに教えてもらって私もなんとか、クラスについていけた感じです。(男の人は珍しいそうで、主婦の皆さんの手際のよさに、普通のおじさんたちだとついていくのが厳しい世界だなあとおもいました。)

ぜひ、草木染などに興味をお持ちの方は、費用などの詳細も、スクールの方に詳細を問い合わせてみてください。常にいろいろなクラスを開講されており、入学も難しいのかと心配していましたが、先生、事務局のみなさんもアットホームな感じで親切に対応してくださいました。川島織物スクールの日本の織物文化や人材を育てていこうとされる姿勢には敬服いたしております。
2009年12月12日
今日は、カメラマンの方が東京からお越しくださり、アイリッシュリネンハンカチのほうの撮影を行っていただきました。県立大学の研究所の方が今回の撮影をオーガナイズしてくださり、30年前のアイリッシュリネン糸をつかったこのプロジェクトのPRの最初ということで、ビンテージアイリッシュリネンがもつ糸そのものの価値を伝えられるような内容にしようと撮影を行っていただきました。

一番大事だったのは、淡い象牙色の1枚のアイリッシュリネンのショットだったのですが、それ以外にも、北アイルランド紡績なイメージを出さねばならないと、N.IRELANDとスタンプされた糸の箱なども使って撮影は進められていきました。未開封の元箱のほうには、輸入のためか、しっかりとMADE IN N.IRELANDの文字が書かれてあり、また、HERDMANS SION MILL TR12 LEA140などと印刷されたシールも年季が入って薄くなっているもののあったりするのですが、元箱のほうは大きすぎて、そちらの箱の全体画像は割愛です。

昨日は東京に出張しており、別件で発送しないといけない重用件などがありまして、私のほうは、午後からそちらも時間を取られており、少し撮影を見逃してしまった部分もあったのですが、夕方には、生地とハンカチ、上海にも持ち込んだストールなどのL140の撮影も完了して、夜には工場内のシャトル織機と整経機のショットも収めていただきました。

撮影のあと、夕飯などご一緒できるかと思っていたのですが、東京のほうに今日帰らないといけないということをお聞きしておりましたので、時間のほうも遅くなっておりましたので、片づけが済んだあとお見送りしまして一日の撮影が終了いたしました。皆様、お疲れ様でした。
2009年12月11日
今日は、東京の青山でジャパンクリエーションに関するシンポジウムが行われました。私が興味深く聞いたのは、布作りをしておられる方の言葉でした。布づくりは文化だといわれてました。リネンとは違いますが、綿デニムをやっておられる方、ニットマフラーをやっておられる方の生地に対する思いというものは、景気が良いとか悪いとかの問題ではなく、自分自身が作るという姿勢を一番大事にしているところで、それを抜きにしては、すべてにおいてものづくりが難しくなってきている日本で物を作る必要すらないだろうなあと思いました。

最後の質問コーナーで、韓国のメディア関係の方が、「昔は日本製と言えばよかったが、ここ10年ほどの日本製というのは良いものがない。なんでも、最近の日本製はすぐに壊れる。」ということを言われていました。ずばりだと思います。本当にものがよい悪いを判断できる本職の人がいなくなっているのも原因だと思います。日本のラミーにしても世界最高クラスを誇っていたのですが、国内紡績といわれているロットですら、昔から同じ銘柄の糸を使っていますが、最近のものはかなり質が落ちてしまっているのが実感でき、海外ものとの差が縮まってきています。

私の経験上シルクにしてもそうでした、カネボウシルクも、結局、上海やブラジルで紡績を始めて、国産よりもグレードが劣るということでしたが、それでも、世界トップクラスだったのですが、品質が完璧でなくなると中国の少し価格の安いものとの競争に巻き込まれ始めたのでした。日本産という砦を失ったときに、日本の文化的な産物ではなくなるのです。

糸を作る人はネップなどの数値で品質を見るので、実際の問題を経験しておられないことが多いです。染工程での問題、織工程での問題、加工工程での問題などが絡んで最終的な品質が決まるので、実績というのが非常に大事なのですが、ロングセラーの糸の品質が落ち始めたら要注意が必要ということです。不思議なことで、品質というのは上昇し途中から落ちてゆくものなのです。
2009年12月09日
今日は、夕方からストールの写真を撮影しました。撮影に使ったボディが着ているブラウス、パンツは、ジャパンクリエーション2010SSのときに、デザイナーのスズキタカユキさんが作ってくださったもので、林与の3種類の生地を使って作ってくださいました。ボタンなども貝ボタンを使用し、生地も紅茶で淡く染めていただくなど、デザイナーさん自身がいろいろな思い入れを、林与の布に託してくださったもので、スズキタカユキさんらしくナチュラル感もたっぷりです。

ストールですが、今回アップしましたのは、30年昔のビンテージアイリッシュリネンを蔵出しして織り上げましたアイリッシュリネンストールと、ハンカチに使われるクラスのリネン100番手を使用しましたシャンブレーストール、オーガニックリネン糸を使用して柄を組みましたオーガニックリネンストールです。どれも麻の老舗である林与がシャトル織機で織り上げている本近江織麻布です。

林与がお作りするのは、単なるリネンストールでなく、麻織物の老舗の布としての芸術作品としての要素を追求しており、置いておくだけでもオブジェとして素敵です。麻にこだわる林与が創り出す麻布の世界です。リネンストールのところに商品画像を並べてあります。リネンストールだけでなく、スズキタカユキさんによる一点物作品であるブラウスやパンツもご覧くださいませ。
2009年12月08日
今日は、彦根の組合の関係で、市役所で打ち合わせがありました。彦根市も地場産業としての縫製に力を入れてくださっており、市だけでなく、県単位でのプロモートに力を入れてくださっています。

その後、彦根市内の縫製の会社に伺い社長様のお話を伺いました。ブランド化ということが非常に大事で、「たねや」さんが成功しておられる話をしておられました。彦根地域においては縫製業が盛んですが、ブランド化というのはほとんどできていなかったといわれています。有名メーカーの下請けとして縫製業を営んでおり、差別化がはかれなかったそうです。

近江上布の機元の流れを汲む「林与」は、日本の麻のプロの業界の方ならご存知いただいていることが多いかと思いますが、一般の方に、麻生地のブランドとして認知してもらうには、これからではないかと思っております。彦根の縫製の大御所である社長さんと「林与」のロゴマークの話などお話してたら、今の何をやっても難しい時代に、「林与」さんは夢があってよいですねえとお褒めいただきました。みなさんも、来年の春の布の祭典、ジャパンクリエーションに「林与」のトレードマーク見に来てくださいね。
2009年12月07日
今日は、午後から大津県庁で、コラボ21しがやJETROさんなど公的な支援団体による貿易や海外パートナーとの連携に関する説明会があり、出席させていただきました。

いろいろな方の体験談などもあって、楽しく聞かせていただいていたのですが、JETROさんの説明で、繊維という産業が顕著な例で、繊維製品のほとんどが海外製になっているのをみても分かるようにと繊維を例にとられて海外で安く作ることのメリットを語られました。グローバルな時代なんですから海外でつくるほうが安くなるのだから海外でつくりなさいよ、といわれておられました。

日本企業が海外に進出することで、海外でつくったものが日本製であるかのような扱いで、より国内での生産が厳しくなるという悪循環が起こるのは目に見えており、紡績会社のなども国内の工場を順番に閉鎖され、商社化されていく傾向にあります。

実際にそうだとは思いますが、林与は、国内においても国産というだけでなく本場の麻織物ということを謳っているので、産地内での織りにこだわりたいなあと思っています。また、私も単に経営者というだけでなく、色柄をデザイン、規格し、織機を修理調整し、職人としての立場でもあります(林与の場合、代々が、職人以上に織物に精通していることが基本です)。そこが日本の麻織物文化を守る林与の特色です。
2009年12月06日
今日は、奈良のお客様がお越しくださいました。リネンの風合いのことなどに関しまして、いろいろとお話をいただき、今後の商品開発の参考にしていかねばと思うところも多かったです。ほかにも、リネンの風合いとシワになりやすさとのトレードオフな関係のことや、草木染のことなど、いろいろとお話して夕方には倉庫の生地を見てもらいました。

売れ筋の生地に関するお話も私のイメージとは違うものをお持ちで、私が知らないうちに時代が変わったのかなあと思ったりしました。私は生成がリネンでは売れ筋だと思っていたのですが、今は、あまり注目はされないということです。一番簡単に作れる生成などは、中国とかで作られる生地などがたくさん出回りすぎているのかも知れません。

先染かなあといわれていた布というのを見せていただきました。興味深かったのは、先染風にしてあったところです。フチに違う色のラインが入っていたのですが、たぶん、ラインにはポリエステルの糸を使用してあり、それが染まらないことを使って、反応染料で後染にして、先染風にしてあるのです。

先染っぽく見せる技法として、2浴染などもあります。リネン100%では難しいのですが、リネンポリエステルなどでは、2種類の染料を使って後染めで先染ライクに見せることができるのです。コストを抑えるための手法なので、今は、中国などが非常に得意としています。
2009年12月05日
今日も小雨がぱらついて、肌寒い一日でした。みんなには、「12月なのに雪が降らないだけましだよと、励ましました」。今日は、近くの縫製工場に行って、試作品を製作いたしましたが、思ったような仕上りにならずに、どのように改良したらよいのか、夜考えていました。
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