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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
横絣を広い幅で織ること
2020年09月02日
40手前で、アイリッシュリネンのプロジェクトをやったときには、超細番手の糸を織ることを経験した。それまでは、100番手以上のリネン糸というのは織れないといわれることが多かったが、現行の150番手までも織ることに成功した。糸さえ良ければ、100番手は糊なしでもレピア織機で織ったりできた。

現行のリネン糸よりも昔のリネン糸のほうが強度があることにも気が付いた。やはり根本的に今の糸というのは強度が劣っているのである。これと同じことにもラミー糸で気が付いた。倉庫にあるラミー糸は毛羽が多く、現行の糸は毛羽が少ない。同じこんにゃく糊をつけるにしても、昔の糸だと伸度も保たれて織ることができるが、今の糸は強度が2割くらい落ちている。グレードもアップして値段も高くなっていても昔でいうノーマル糸クラスのグレードに糸が落ちてしまっている。これも原料からして仕方のないことなのである。

50手前で手掛けたことの一つに、横絣を広い幅で織ること。そのためには広い幅で横糸に捺染することが必要となるので機材一式を開発することになる。昔の近江上布の織機や機材なんてものはおじいさんが林与の家の中で生み出したようなものなので、いろんなものも手に入りやすい今、一人の力でどこまでできるかというあたり。昔の着尺というものがどうしても37.5cmほどの仕上がりで、着物を着る人が少なくなっている流れの中で需要自体が減ってしまっている。目線を変えてワンピースなどアパレル向けに広幅の横絣の織物を織ってみる。そんなプロジェクトである。

型紙は広い幅の洋型紙を使う、狭い幅の時よりも幅が広くなる分精度が必要となり、色数が増えると、洋型紙もたくさん必要となってくる。まあ、それでも版を外に出して作るより一晩二晩自分が手で彫れば解決できる話で、試作や小ロット生産するには悪くない。型紙捺染の利点は、シルクスクリーンとは違って、型紙の厚さが1mmくらいはあるので、色糊がしっかりと糸につきやすく、力強い昔っぽい仕上がりになること。それ故に、同じ型でも、色の付き方が微妙に異なる。たとえば、同じ絣織物でも大島紬はシルクベースでズレのない写実画的な要素だが、近江上布は抽象画的な要素を持つ、あえて揃えないで絣調に織るのがよい。

できないと思われていたことをとにかくとことんやって、広幅横絣織物は実現したのである。広い幅の手織で織ったほうがたぶん簡単だろうけども、打ち込みを調整することができるシャトル織機での織はさらなる可能性が広がる。昔の近江上布は多くの人が携わって分業でやったが、この広幅絣は、型紙をほるところから、捺染、巻き返し、織など、一人がすべての工程を行い織りあげるというところが昔と違って現代的で現実的なのである。通常の織物でも一つのサンプルをつくるが難しい時代には、一人で何でもできるようなものづくりが一番合っている。