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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
加工出し
2010年10月04日
今日は、朝に1点、午後に1点加工出しを行いました。今日は雨が少し降っていたせいもあってか、加工工場のほうは荷物が少ないように思いました。一時のピークを越えたのかとも思います。

午後からは、倉庫に20年以上前の国産の麻糸を取りに行きました。そのついでに、ニッセンの箱に入っている120番のシルク麻と書いてある箱があるのでそれを眺めるのですが、箱を開けると丁寧な仕事で300gくらいの1チーズづつが紙に丁寧に巻いてあります。紙をはずして眺めるとその繊細さと光沢感というのは格別で、単に糸が100番手よりも細いというのではなく、糸の質そのもの、また糸の加工そのものグレードが別格であるということを見せつけます。今は再現不可能な特別な糸の世界です。この糸も昭和30年代くらいに近江上布を作るときに使った手織用の糸であるので、そのころのものが特別なのは当たり前な話なのかもしれません。手織用の糸というのは信じられないほど均一なのです。海外の手織のものというのは均一でない品質の低いものが多いのですが、林与の場合、手織に使う糸はより均一なものを使用するというのが基本でした。

今日は、京都の呉服屋さんから帰ってきた見本の箱を開いてみました。ハギレが箱いっぱいに入っています。林与の先代たちが、その箱を残しているところは特別すごいなあと思います。その当時だとたくさんあったはずで、ハギレが詰まっているだけのように思えるのですが、実際には、そのハギレというのは、一つ一つが柄を生み出して織り上げるまでに、半年とか一年掛けたものなので、設備があったとしても、今はその一つ満足に作ることすら至難の業です。価値のある近江上布の世界というのはまさにこの世界なのだと実感いたします。

不思議に思うのは、失敗作というのは無いのだろうかということです。これだけたくさんの柄をつくれば、たくさん失敗したものもあるだろうに、綺麗な見本柄ばかりが何百も揃っているのです。もしかすると、この何倍もの試作を行って、提案する柄というのはこれだけですよと絞ったのかもしれません。でも、織物をやっていても昔のものを上回ることはできないというのを痛切に感じます。