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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
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2009年06月22日
ここ1ヶ月くらい、アイリッシュリネン140番手の試織テストをしています。最初のトライでは、整経は非常に綺麗にできたので、織れるかもという期待はあったのですが、この道、四十年以上の織りの職人を中心に私も他の社員たちも2週間ほど毎日織機の調整を繰り返してくれても、糸が切れて切れて駄目でした。もう一度最初から、糸に手を加えて、別の方法で挑戦してみることにしました。

今回の2回目も、最初、糸が切れて切れて織れません。織っては糸が切れ、糸を直しては織っての繰り返しを3時間くらいやって、ようやく10cmほど織った辺りから、今までの苦労が嘘のように、織段のないきれいな布が織れ出したのです。

織り上がった布を触ると、糊がついているのにすごく柔らかい。さすが、アイリッシュリネン140番手です。30年以上の時を経た糸がついに布に変わったのでした。単なるベージュの布に過ぎませんが、これこそが、最高の糸質といわれたアイリッシュリネンの超細番手の織物なのです。しかも、今回は、テスト目的でかなり密度を高めに織ってみました。薄いですが、自分用にシャツでも作ってみようと考えています。世界で一番高いリネンシャツになりそうですが…

現在手に入る一番細い番手がイタリアのリニフィチオ社の148番手の白だと聞いています。この140番手も晒せばもう少し細くなるので糸質だけでなく細さに関しても世界最高レベルにもっていけるのではないかと考えています。普通ならこのベージュの布を晒して白くしてハンカチに使うとかで、大事業として終わるのですが、今回はモノをつくるのが目的ではなく、リネン織物の技術水準の限界に挑戦するのがプロジェクトの目的です。これは、最初の一歩に過ぎないのです。
2009年06月21日
昨日の午前中、倉庫に入ってリネンの25番手と、アイリッシュリネンのオフ生成140番手を3個取りにいきました。アイリッシュリネンの箱の奥には、近江上布を織っていた昔の手機が4台くらい壁側に着けて置いてあります。すこし分解してあるので、すぐに動く状態ではないのですが、ああこんなところに4台もあったんだなあと思い出しました。

この倉庫は昔、織物工場として使っていた倉庫なのですが、織機はずいぶん昔に出してしまって、今は、いろいろなものが保管してあります。仕事に通常使う綿60/2や100/2の糸がそれぞれ100色以上もストックしてあったり、年代モノのリネンのキバタとか、買っただけで、一度も開けたことのないような糸の箱があったり、今は手に入らないカネボウブランドのシルクの糸が何百キロもあったり、モノがつくれなくなる時代を見越してストックしたものがたくさんあります。

このことは、今の時代のジャストインタイムな在庫ゼロを目指す方式のまったく正反対です。品質の高い商品を安定的に供給をするためには、糸屋と問屋の機能を機屋が持たなければならない時代になってまいりました。麻を商材として扱っておられる業者さんから、麻の織はもちろん、麻の糸のことや麻の生地、また麻の裁断、縫製に関する全般的な相談がたびたび寄せられるのもそのためかと考えます。

私自身、春から夏にかけては、自社で作ったリネンや本麻のシャツを愛用しています。同じシャツばかりを着ている訳ではありませんが、10年以上も大事に着ているシャツがあったりするのです。麻は丈夫な布なので長持ちし、それが麻の良いところのひとつだと思うので、布をつくる側としては見えない部分もしっかりとつくっておきたいと考えております。

画像は、ハンドメイドの小鳥です。
2009年06月20日
昨日は、「林与」のリネンハンカチの構想をグレードアップするために、刺繍の大手の技術の方に電話でお話を聞きました。リネンハンカチの周りの刺繍は、リネンに刺繍をしてから布を切り抜くのだということを聞いて、今までの疑問が氷が解けるように解決しました。

別の刺繍屋さんにも電話でお尋ねすると、そこでは手で刺繍を刺すそうで、小ロット対応が可能だそうですが、洗濯とかする想定のものに関しては、ミシン刺繍のほうがよいとのこと。刺繍糸に関しては、高級品に関しては、シルクも使えるとのことでした。

刺繍機を持ってられる縫製工場がありますので、そこの刺繍機をお借りして、自分で刺繍のイメージを作って、それを本職の刺繍屋さんに刺繍してもらうのが一番、仕上がりがよくなり自分のイメージに近いものが出来上がるだろうと考えています。

リネンハンカチに施すデコレーションの刺繍まで考えると織物屋が生地以外の部分に深入りしすぎるような気持ちもありますが、日本でこういったオーダーメイドの刺繍を請け負うことができるところが非常に少ないと大手の刺繍屋さんも言っておられましたので、難題なだけにやり遂げたい気持ちがあります。どこかハンカチの専門店が私の希望を叶えてくれると助かるのですが、つくりたいものがつくりたいものだけに3年掛かっても仕方ないと思っています。

今日の画像は、「林与」で製造しております「林与」ブランドのメンズ向け綿麻シャツです。麻機屋の四代目自身が毎日愛用している10代から80代まで誰にでもよく合う普段着によい一品です。
2009年06月19日
昨日は、午前中に縫製会社の社長さんから電話があって、大阪でありました衣類、雑貨を主体とした中国企業の日本向けの輸出展示会を見に行ってまいりました。大阪での中国企業の展示会は別の展示会ですが、3年ほど前に一度行ったことがあって、あまり良い印象はありませんでしたので、今回もそれほど乗り気ではなかったのですが、「林与」は、今度10月に上海での国際展示会に出展を予定しているので、参考になるかと思って見にいったのでした。

会場に着くと首からぶら下げるIDホルダみたいなのをもらって、縫製会社の社長さんが招待を受けた企業のブースにまず挨拶に行きました。そのあとぐるっと見て回って、今回の展示会の印象が違ったのは、日本にすでに販売している企業が多く、どのブースも日本語を話せる営業のものが通訳としており、前回よりも丁寧な対応ができていた点でした。

中国の企業の経営者というのは、お金だけが目的で商売をしているケースが多いので、新しいものづくりにお金を使うとか、素材にお金を使うとかが苦手で、新規のお客さんに対しても注文の多い少ないだけで対応が違って、極限まで材料コストを下げて価格競争しようとするので、縫製の技術はそこそこ良くても、100円ショップアイテムやファストブランド向けのものが多く、値段相応という感じは否めません。

10月の上海の展示会は世界最大級テキスタイル展なので、中国企業はもちろん、アジアや世界の各地からの新規のバイヤーがブースに来てくれることと想像しております。そんな新規の方に、弊社の布を語ることができるよう、中国語の通訳と英語の通訳は用意しておかないといけないと感じました。上海の展示会では、中国企業はもちろんヨーロッパ方面のリネンの紡績企業もたくさん出展いたしますので、高品質なリネン糸に関する情報など収集したいなあと考えております。

画像は、昨日の展示会で、毛皮製品のブースでもらった無料のフェイクファーのボンボンです。下に敷いてあるのは、「林与」のリネンギンガムストール素材です。
2009年06月18日
ストールが流行していますが、リネンのストールはご存知でしょうか?今日の画像は、「林与」のリネンギンガムストールです。ジャパンクリエーションでイタリアバイヤーが気に入ってくれてイタリアに輸出しただけで、まだ、国内では未発売の商品です。

ストールというのは耳が必要なのでシャトル織機で織ります。普通の織機で広幅に織ってサイドをミシンで三つ巻きにする方法でもストールはできるのですが、リネンの場合、ガーゼに織るので、縫い目が解けてしまうので良くないのと、耳の部分がしっかりしすぎて肌触りが悪くなるので、シャトル織機で織るのがベストなんです。

リネンストールというのは、夏にすると暑いんじゃあないかと思うのですが、日よけ防止代わりになって、適度なひんやり感もあるので、リネンガーゼストールは重宝だそうです。ストールというと無地も高級感があってよいですが、柄物が可愛いくて人気です。リネンストールでチェックの柄物は少ないので注目あります。

切れやすい細番手のリネンでリネンストールを織るときの問題点は、1時間掛けて、1枚のストールを織り上げてもどこかに織段やキズがあると、1枚が駄目になってしまうところです。一枚一枚が真剣勝負です。
2009年06月17日
「林与」の歴史は、與次右衛門じいさんが創業したとなっておりますが、與次右衛門じいさんの親父に、お酒の大好きだった勘平じいさんがいます。勘平じいさんは、なぜかヨジヨモンを襲名させてもらえませんでした。やんちゃものだったと聞いています。その勘平じいさんも近江上布のデザインをしていたことが過去の帳面で分かっており、我が家で、織物を織っていたことに関してはもっと遡るのではないかと考えています。というより、近江上布というのは、それ以前から近江の文化だったので、「林与」の家にはずっと昔から機があって、それを、「林与」に嫁いで来たおばあさんたちが代々織っていたと考えています。

今ではこの産地でも、数人だけしか織手が残っていない近江上布ですが、「林与」には、何十台もの当時の機が残っています。また、「林与」には、昭和の前半以前に作られた近江上布が残存しています。再現の不可能な年代ものの近江絣本麻上布が反物の形で機元に残っているのは非常に珍しいです。文化的な価値があるだけでなく一見して価値を感じてもらえるようなものは、買い手がすぐに見つかるので、売る気がない限り、手元に残らないのが普通なのです。

「林与」には、もう亡くなられてしまったのですが染めの伝統工芸士が二人いました。このことは、「林与」が、「林与」独自のデザインの近江上布を作り、近江上布の文化を創造してきたことと深く関係しています。近江上布というと、無地や藍で染めた絣文様タイプの男っぽい幾何柄が多いのですが、「林与」の近江上布は一見して華やかで、絵画をみているような感覚に陥ります。

織も一本一本柄を合わせながら織っていく手間の掛かる仕事なのですが、その柄のデザインに力を注ぎ込んできたのが「林与」の近江上布でした。現在は、麻の先染といえば「林与」といわれるくらいにまで、麻の先染織物に強い「林与」なのですが、それは織の技術だけでなく、織物におけるデザイン重視の姿勢を引き継いだからかもしれません。
2009年06月16日
今、アイリッシュリネンの細番手100番手の生成というのを織っています。弊社に30年以上眠るビンテージなアイリッシュリネンに2度糊という糊を付けて織っています。毎日それなりに織ってはいるのですが、織り始めて3週間以上掛かって40Mほどです。動力織機を使って段ができないように織るのは手織りと同じくらいだけの手間だけでなく、高度な技術が要求され大変です。

あまり織れない理由は、原糸そのものが柔らかいことと、規格をスペシャルな高密度バージョンにしたこととがあるかと思っています。デッドストックアイリッシュリネンは織り上がりが非常に柔らかいです。普通は、加工で柔らかくする柔軟剤やタンブラー加工、バイオ加工などを施して柔らかくします。そうでないと、リネンの芯が残るような硬さになるのです。このアイリッシュリネンは糸の良さに何も加えず、水洗いだけで柔らかく仕上げようと考えています。

普通は、高密度にすると硬くなるのですが、このアイリッシュリネンならきっと柔らかく上がると信じています。このリネンを使って何がつくりたいかと言いますとブルージーンズと白いTシャツの上から羽織ってかっこいいなあと思えるような生成のサマーコートです。コートが完成しましたらお披露目します。

このアイリッシュリネン生成は、30年以上昔に、ハードマン社のSION MILLで製造されたものです。15年ほど前までは、まだ、いくつかの紡績会社のアイリッシュリネンを仕入れて織っていたのですが、私が見た糸の中では、キリリ社というブランドのL60番手の生成が最高でした。本当に黄金色で糸が光っていて、もうあんな生成は目にすることができないとおもいます。ハードマン社も、現在では北アイルランドでは製造をしておられないので、北アイルランドでのリネン紡績がなくなり、もう事実上アイリッシュリネンの糸自体を手に入れることができなくなったのです。実際、残念ながら、アイリッシュリネンとして販売されている布や製品のほとんどが、よほど、由来のはっきりしたものを除いては、実際はアイリッシュリネンではない、というのがリネン業界の認識です。

画像は、アイリッシュリネン100番手生成の糸とその糸を織っている織機です。
2009年06月15日
今日は、朝一番で、染工場に30kgくらいのリネンの糸の箱を4ケースを持っていきました。私の会社は染工程はそのほとんどを地元の染工場に依頼しています。箱の中の糸は、プラスチックのコーンというものに巻かれています。その状態から染め上げるまでが、染工場の仕事です。

リネンの細番手の糸は、普通の会社は横糸にしか使わないので、糊を付ける必要がないのでチーズ染で染めるケースが多いようです。が、私の会社では、リネンの糸は、通常で縦用1回糊というのを付けて、時には、2度糊という糊を付けて、縦にも横にも使えることを前提にしています。そのため、チーズ染ではなく、糊を付けることができるカセ染という方法で染めています。カセ染はコストが掛かるのですが、チーズ染色でありがちな染めの内外差というのがほとんどありません。(厳密にはカセ染めでも内外差や染ムラは存在しますので、常に染め上がり後、チェックしています。)

糸を車から降ろして、染色工場の事務所に立ち寄ると社長さんが居られましたので、草木染についてお尋ねしました。オーガニックリネンを今、オフ白と生成で織っているのですが、染のバリエーションを展開したいなあと思っているからです。

社長さんいわく、オーガニックコットンなどの染めには反応染料なども使われるとのことで、オーガニックコットンだからといって草木染100%ではなく、百貨店に置くためには耐光堅牢度が要求されるため、100%草木染のものはできないことはないが、趣味の世界とか和装などの世界になるとのこと。

「林与」がやるからには、せっかくのオーガニックリネン糸なんだから、草木染100%で染めたいなあと思いました。ほかにも、糊を付けると糊はオーガニックなのものでも、すべりを良くするために油剤を使用するからオーガニックではないなど勉強させてもらいました。油剤抜きで草木染で染色した細番手のリネンを織る方法を考えてみたいと思っています。

今日の画像は、「林与」の茶色のリネントップ染生地の上で、先日おじゃましたかばん工場でお土産にいただいた皮ヒモを撮影したものです。
2009年06月14日
「林与」には、レピア織機とシャトル織機があります。本業のコレクションブランド、百貨店ブランド向けに量産する素材は、織段になりにくい生産性の高いレピア織機で織ります。一方、シャトル織機では、手間暇掛けて丁寧に織ることで語れる布を織っています。シャトル織機で、切れやすいリネンの細番手の服地を織るときには一時間に2Mくらいしか織れません。織機一台をフルに動かして、ようやく一日10Mから15Mほど。材料の違いだけでなく、通常に流通しているリネンの何倍もの手間、技術、時間を布に注ぎ込んでいます。

「林与」は、世界で流通しているリネンの単糸では一番太いくらいの麻番の5番手クラスから、世界中探しても購入することのできない弊社デッドストックのビンテージアイリッシュリネンの150番手クラスの超細番手まで織ることができる日本の麻業界ではもちろん、世界的に見てたリネン業界の中でも希少な存在です。

昨年、杼替(ヒガエ)の出来るシャトル織機がどうしてもほしくって、機械屋さんに探してほしいと頼んだら、40年この織機を守ってこられた方が、弊社にすべての織機を譲ってくださることになり、弊社にあったW幅のレピア織機を廃棄して設置しました。シャトル織機のメンテナンスは大変で、部品も入手が困難で、技術力がないと動かせない織機ですが、それだけに語れる布を織ることができるのは幸せです。

服地の幅まで織れるので、シャトル織のチェック柄などのリネンのワンピース素材などもこの織機が活躍しています。画像のほうご覧いただくと昭和レトロな織機だということがお分かりいただけるかと思います。
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