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リネンや麻を織る日々をつづっています。
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リネン日記
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2009年07月15日
今日は、リネン日和です。外でリネンを干しました。すごく、暑い日だったのでいくつもいくつも干すことができました。夜に反物に巻き上げてあげると、スペシャルなリネンのできあがりです。

耳のところが、デコボコしていて、ナチュラル感たっぷりなのがとても素敵です。加工屋さんで仕上げるリネンというのは、耳がピシッと決まっているので、他の素材の織物と一見して区別がつきにくく、触ってみないとわからないのですが、「林与」のナチュラルシリーズは、見るからにリネンしています。

今日は、薄手の生成と白のリネンシャツを1枚、ワンピースもそれぞれ1枚づつ作ってみました。柳流感があって、光沢感もある、素敵なシャツの出来上がりです。

多少、ざらざら感があったりするのですが、着込んでいくうちにだんだんと味がでてきて、柔らかくなっていくところが、リネンのよいところです。綿のものだと買ったときが一番よくて、だんだんと弱っていくのですが、良いリネンの場合は、十年以上も着ることができるというのがすごいところです。
2009年07月14日
今日は、彦根の市役所の方を交えて、彦根で開催中の井伊直弼と150年祭への協力ができないかというのを模索するミーティングに夕方から出席しました。

明治から大正に掛けての衣装がつくれないかというのがテーマだったのですが、甚平や着物なら、素材にしても簡単に手に入り縫製も「林与」で簡単に出来るのですが、開国を象徴するような西洋チックな衣装となると、写真や画像をみて、型紙から起こし、また、モデルさんに合わせてサイズを決めないといけないので、試作するのに、うまくいって一回一着に一週間くらいは掛かるだろうなあというのが私のイメージです。

彦根という地域を盛り上げるために、400年祭があり、大盛況に終わったのですが、その後も、ボランティアの皆さんが中心となって、彦根の文化をPRしておられます。彦根には仏壇、バルブ、縫製という地場産業があり、地域の消費を支えるだけでなく、全国的な産地として名高いもので、そういう彦根の産業家たちがこと前向きに彦根の活性化に協力しようという意気込みでおります。

ひこにゃんが有名ですが、そのほかのゆるキャラも彦根周辺で開発が進んで次々と生まれていき、彦根でゆるキャラサミットが開催されるまでになったのも、彦根が縫製技術があったということが要因しています。
2009年07月11日
東京から戻って考えました。リネンをはじめて使われる方が、使いやすいベーシックなリネンのシリーズを作ってみようかと… ブラウスに使う超薄手、ワンピースに使う薄手、メンズシャツなどに使う中肉、パンツなどに使える厚手です。

林与では、糸の番手に応じた規格が基本的に決まっているのですが、サンプルなどを織ったときの感触で、若干の調整を加えることが多いです。メンズ用とかレディース用とか、シャツ用とかジャケット用とかニーズに合わせて、基本の数値から上下10本程度範囲での調整を行います。

新しいブランドさんなど、町の生地屋さんから買われているようなケースもあるようで、そいうブランドさんが本格的なアパレル向けの生地を使ってもらえるような位置づけにしたいと考えています。一般の方からプロまで使っていただけるよう家庭洗濯を想定したシリーズにしたいと考えています。

リネンで洗濯物性を抑えるのはほんとに難しいことなのです。リネンは水を良く吸い、反対に、乾燥も速いので、そのことが、糸が水を吸って膨らんで縦横方向に布が縮むという物性が悪い原因を作り出しています。

加工のロットだけでなく、糸の銘柄はもちろん、原料のロット、紡績のロットによって、収縮物性は変わってくるということが過去の経験上の結論です。そのために、縮みやすい銘柄の糸の場合には、縦の本数を増やしたりして、仕上がり幅を調整するようなことも行っています。

糸屋さんは、一般に資材を多く扱っておられますので、洗濯しないものが多いのと、糸屋さんのように右から左へものを流すスタイルでは、糸のことを聞いても十分な答えが返ってこないことが多くなっています。糸に関する知識も使い方のノウハウも機屋で蓄積しないといけないことになってきます。

このあたりが、紡績工場の技術力の差になってきます。一流の紡績メーカーは値段も高く、かつ、量もたくさんやっておられるので、実績値が高いのです。安く出回るリネンもあったりするのですが、そういったものは、製品にしてからの品質面での危険が付きまといますので、弊社ではスポットで出回る糸は使わないことにしています。新しい織物を次から次へと作り出すためには、織物の織りの規格も多様になるので、品質の良い糸の選択が非常に大事なのです。
2009年07月10日
今日は、朝早くに起きて、車で東京まで行きちょっと遅れてしまいましたが、無事午前中のブランドさんにたどり着きました。ブランドさんで、面白い布のお店があるということで、紹介していただいたので、お昼の空き時間を利用してお店のほうを拝見しました。

雑貨や小物を中心としたおしゃれなお店ばかりが集まったビルの地下に、布のお店がありました。いろいろな布が置いてあり、色柄も豊富に手を掛けて作ってあります。織物を作られる方の意気込みが伝わってきました。

店員さんも非常に優しく、丁寧に布の説明をしてくださいました。ブランドさんでお聞きしたそのお店の一番看板商品の布でつくったストールを記念に購入しました。

看板商品というのは完成度が高いので、見ていても味が伝わってきます。
2009年07月08日
今日は、オーガニックリネンを洗いました。滋賀県の産地がなぜ麻の織物の産地なのかというと、湿潤な気候で織りやすいというのがあるほかに、麻は染色や加工という作業が必要で、水が良いということが非常に大事なのです。

リネンを柔らかく仕上げるにはいろいろな方法があるのですが、オーガニックリネンなので柔軟剤などの薬剤は使ってはいません。林与独自の方法で、やわらかくなるように仕上げるのですが、やわらかく仕上がる糸とやわらかく仕上げることができない糸とがあります。

今回のオーガニックリネンのロットは、やわらかいです。水だけで仕上げて、ここまでやわらかいのには満足で、よいロットにめぐり合えて幸運でした。殺虫剤も化学肥料も使わずによいリネンをつくるのは大変だろうに、リネン農家の方に感謝です。
2009年07月07日
今日は七夕で、ヒロインは織姫です。七夕はもともと中国の話だったようで、中国でも昔から機を織るというのは大事な仕事の一つでした。夕鶴のような話でも織物を織る話で、美しい織物を織ることのできる女性は美しいというイメージだったんでしょうね。

昔の織物というと小幅と呼ばれる幅の狭い織機なのですが、見ていると本当にかわいいんです。昔話で宝物の中に、反物が入っていたというのもうなづける話で、昔の人たちは今の人たち以上に布に憧れをもっていたんだと思います。

先日も、京都の百貨店さんで、小幅の布が売られているのを拝見しました。見ているだけでスローライフな感じで和みます。着物というのは今の時代着る機会がないのですが、流行に流されず、そういうものを評価できる人柄には憧れを感じます。

私もだんだんと年を取ってきて、自分自身が、商売云々以上に、こういうものを作っておきたいなあと思うようになってきました。今後、作られることのないような小幅の本麻の先染の織物も残しておきたいなあと思っています。


2009年07月06日
今朝は、朝6時前に起きて、加工出しの準備に取り掛かりました。オーガニックリネンを縦7パターンで、合計14柄と、リネンガーゼを加工出ししました。アパレル向けなので、綺麗な仕上がりを狙っています。

一方、アパレル向けでないオーガニック派向けに、ナチュラルなワッシャー仕上げを同じ柄で展開しようと考えています。こちらは、やわらかな風合いの仕上がりです。ほかに、色耳を使った白の無地と生成の無地も何色か展開いたします。

通常は、リネンの細番手を織るときには糊をつけたり、ワックスをつけたり、水溶性ビニロンを巻いたりするのですが、環境保護の観点からそういった薬剤を一切使わずに、オーガニックリネン糸を低速のシャトル織機で織り上げています。オーガニック認証を得たオーガニックリネン原糸を使用したというだけでなく、製織法までもナチュラルな仕上げにこだわりました。また、加工方法もナチュラルワッシャー仕上げは、天然の地下水で丁寧に洗い上げ、天日で干して、麻機屋の倉庫で寝かせることで湿度を適度に戻し仕上げます。

次のステップとしましては、世界認証の取れたオーガニックリネン糸を100%草木染で染め上げて、世界基準よりも厳しい基準のオーガニックリネンを作り上げようと考えています。リネンのものとしては高級ゾーンとなりますが、語れる一品にしたいと考えています。
2009年07月05日
今日は、お昼に3時間ほど京都の四条の高島屋をぶらっとしてきました。目新しいものがあるわけでもありませんが、暑さもそこそこ、夏休み前の行事を控えた日曜日とあって、洋服の売り場もそこそこの賑わいをみせていました。

林与の麻の素材も何点か服になってブランドの売り場のボディやショウウィンドウを飾っていました。夏のリネンのマフラーとかどんな感じなのだろうかと見て回ったのですが、もう店頭にはあまりありませんで、売切れてしまったのか、あるいは、夏になりすぎて使われなくなっちゃったのかと思っています。

注目して探したのが、リネンの素材を作った製品です。太い番手を使った素材は、パジャマやシャツなどとなって先染で売り場を賑わしていました。細い番手を使ったものは、無地ライクなものがほとんどですが、やはり、素材のよさが引き立ち、店頭のボディによく使われていました。

リネンで先染を展開できるところは日本でも数少ないです。ブランドさんでも日本的な彩で華やかなものを求めてくださってるところが多いので、素材にデザインをオンして目立つような素材を展開していきたいと思っています。
2009年07月04日
今日は、一台の織機に細い番手のガーゼを掛けました、マフラー素材を服地にしたような素材です。やわらかく仕上げると軽い羽衣のような素材が出来上がるのではないかと思っています。この前は薄くしすぎて、ズルズルなものができてしまいました。

来週、東京にでかけますので、デザイナーさんに提案できるよう急ピッチでの仕上げです。2010AWのジャパンクリエーションの出展も決まりましたので、進行中の究極のリネンがメインテーマとはなると思うのですが、ほかのブースとの調和もありますので、秋冬っぽい素材や通年素材もブースには展示できるように準備しようと考えています。

展示会というのは、基調となるテーマがあって色や素材のテイストの統一が求められています。ものづくりをする側からすれば、自社の素材をベースに、ブランドさんに色柄を合わせるのと同じことで、それほど難しいことではありません。

できる限り多くの素材を送り込んで今年のトレンドを作り上げたいと考えています。リネンに関しては流通量は益々増えてきていますが、生成りっぽい資材からの流れで売られていたゾーンが飽きられはじめ、生成りっぽいカジュアルさを残しながらも、かわいい色使いで提案したようなものに人気が集まってきています。
2009年07月03日
今日は、朝一番に、染工場に糸のビーカーをお願いに行きました。ビーカーというのは、糸を30g程度試験染して色出しすることです。今日は、こげ茶の色だったのですが、着見本というのが入ってきて、糸のほうは在庫があるのですが、昔の糸なので在庫の糸で足りるかどうかわからないため、念のために、着分を作るために1kgだけ染めて着分を作ります。

着分3Mは本番を生産するのと同じくらい手間が掛かりますので、高級な布を扱っておられる機屋さんでは、着分対応ができないところが多くなっています。安い布の場合、大量に生産して、その原反から着分を切って送ればよいのですが、ブランドオリジナルの高い布の場合、前もってたくさん作ることはできないので、着見本は着見本としてだけ作ります。

糸から染めたりするような着見本ですと本番と同じくらいの拘束が掛かります。普通のペースですと1ヶ月から2ヶ月ほどかけて3Mを作るわけですから、1M当たりに何万円ものコストが注ぎ込まれます。「林与」の場合、10日程度で見本を仕上げ、服にして2~3週間程度が多いです。そうして作られた服は展示会デビューするのです。

糸から服まで眺めていると、いろいろな改善点が浮かんできます。もう少し、布が柔らかいほうがよいとか、透け感を抑えたほうがよいだろうとか、そういうフィードバックを本番に入れ込むこともよくあります。
2009年07月02日
昨日、お昼ごろ、地元の織物関係の会社にシャトル織機で織った布を納品に行きました。そのとき、社長が居られ、縦糸に特殊な方法で捺染をした織物をみせてくださいました。柄が、ぼやーっとしていて、絣調で良い感じでした。

綿の織物だったので、素材自体がくすんだ感じで昔調の感じがしたのですが、リネンに同様の捺染を施せば、光沢感と透明感が出るので、良いものができるんじゃあないかと頭の中でシミュレーションしています。

本麻(ラミー)でやるとリネン以上の高級感がでると思うのですが、より加工工程が複雑になるので、値段が合わないだろうなあと思ったりします。一般的には、リネンのほうがラミーよりも安いと思われているようですが、国産ラミーの細番手は非常に高いので、通常出回っているリネンの2倍から4倍くらいの値段です。

糸が高いだけでなく、ラミーの場合、縦糸には糊をつけなければ織れないので、安い方の糊付でもリネン糸くらいの値段を払って糊をつけます。コンニャク糊となると糊をつけるだけで、通常出回っているリネンの何倍もの糊付代を払うことになります。

今日の画像は、横糸の打ち込み本数を決めるギアです。
2009年07月01日
今日は夕方、夏過ぎに開催するバーベキュー大会の打ち合わせに行きました。縫製の社長さんたちと合流して、バーベキュー大会の5Wを決め、その後、夕食に行きました。

新しくできたお店で、内装も綺麗で、静かな時間が流れているのに、わいわいとバーベキューのことなど話しながら、おいしいものを食べて、あっというまに夜11時の閉店時間になりおいとましました。

なかに飾ってあった暖簾とかも、特注でつくられたそうで、お店の雰囲気に調和していました。林与のリネン、本麻でも、暖簾をつくったりしてもらっているケースがあります。簡単な縫製をして、プリントなどを載せて暖簾として使っていただきます。

お店の看板としてお使いいただく暖簾に弊社の生地を使っていただけることは光栄です。麻の暖簾のよいところは、見た目の雰囲気だけでなく、非常に長持ちするところです。
2009年06月30日
梅雨の合間に、昔に織って倉庫で寝かせてあったアイリッシュリネン糸で織り上げたキバタを洗いました。本物のアイリッシュリネン糸なので、水洗いだけで柔らかな仕上がりです。

不思議に思うのが、「アイリッシュリネン」と謳って、「アイリッシュリネン」が大量に販売されていることです。たぶん、アイリッシュリネンと謳えばよく売れると思われてでしょうが、買った人からすれば騙された後悔するに違いありません。残念ながら、アイルランドで紡績されたリネン糸というのはもう手に入りません。今販売されているアイリッシュリネンは、アイルランドで織られた布という意味か、イタリアもアイルランドもEUだと考えてアイリッシュリネンとよんだり、ある紡績会社の糸ならアイリッシュリネンだと思い込みだけで、アイリッシュリネンとして売っているケースがほとんどです。

昔のアイリッシュリネンといえば、北アイルランドで紡績された糸を使用したもので、機屋の憧れだったのですが、今では、北アイルランドでの紡績自体がなくなってしまったので、今の本国アイルランドでの定義はリネンテキスタイル・メイド・イン・アイルランドに変わりつつあり、糸の産地はどこでもよいということになって、アイルランドで織ったリネン織物というのが今の定義です。海外で売っているアイリッシュリネンは、偽装でないとすれば、糸はアイルランド以外で紡績され、輸入した糸をアイルランドで織ったリネン織物というものがほとんどということです。アイルランド産のリネン糸のほうは希少価値が増したのですが、アイルランド産の織物のほうは昔のような職人気質のものは少なくなり、量産タイプのものが大量にアイリッシュリネンとして出回る時代になり、もし希少価値を感じて買われていたらがっくりされると思います。

でも、リネンのよしあしは自分で決めるものですから、自分の目や手触りでよしあしを判断されることが大事だと思います。林与が、昔、アイリッシュリネンからイタリアンリネンへ移行したのも自分たちの情報と目と感覚で糸を判断し、イタリアンリネンの品質の高さを認めたからでした。そして、今、イタリアンリネンも本国生産が減少をはじめ、中国トップブランドのリネンとの有意な差がなくなり始めてきました。働き手が年を取ってくると解雇しない限り品質を守るのが難しいラインあるのです。

ちなみに、アイリッシュリネンの糸の昔の生成は金色っぽく柔らかかったです。元来の北アイルランド産のフラックスを使用して紡績していたんでしょうね。今のベルギーのコルトレイク産やフランスのフランダース地方の糸はグレーっぽいです。アイルランドでフラックスの生産が減少し、紡績が終了するまえにはベルギーやフランスから輸入するようになってしまっていたようです。イタリア紡績、中国紡績の生成の糸も良質なものの場合ベルギーやフランダース地方の糸を使用しているので、アイリッシュリネンと比較するとグレーっぽいです。

今日の画像は、シャトル織機に使う織筬です。
2009年06月29日
今日は、朝一番に一年前に引退してもらった私の叔父さんが来てくれました。叔父さんも仕事のほうは心配していてくれるようですが、中国やベルギーなどからのベーシックな輸入リネンテキスタイルやそれを使った製品が国内でも飽和状態で、人気のリネンでも良いものしか通用しなくなって、ブランドオリジナルのリネンを求める動きはより強くなってきています。

オーガニックリネンのシリーズも、ギンガムを中心に5柄目に突入で、もう一つ織ったら加工出しです。シャツやブラウスに使えるオーガニックリネンのシリーズがまもなく完成で、私自身がオーガニックリネンのシャツを作ろうと一番楽しみにしています。

「林与」の布のほとんどはプロの用途なので、デザイナーさんへの提案や製品企画会社にベースとなる「林与」の新企画を提案します。そして、その企画にブランドの要素を加えて、それぞれのブランドのアイテムが新しいものとして出来上がって行くのです。

日本国内においては先染めを展開できるデザイナーさんが少ないのが現状です。先染というのは、一配色だけを作ればよいのではなく、最終的に3配色必要なら、同じ柄で、10配色くらいデザインできるデザイナーの力と見本を実際に作れる能力の両方が要求されます。

今日の画像は、縦糸を巻くビームです。
2009年06月28日
「林与」には、日本でも珍しい特殊なシャトル織機が動いています。服地の幅で織られたリネンのシャトル織物ということ自体めずらしいのですが、あったとしても、それはストライプ柄だったりします。シャトル織の織物の横は無地ということです。

世界的にも日本的にも、シャトルで織られるリネン織物の99%以上が横は無地だと思っています。これは、シャトル織機と呼ばれる織機のほとんどが無地しか織れないタイプで、コップチェンジと呼ばれる量産向けのタイプなのです。

今の自動車、バイク産業や造船産業の前身が戦前や戦後の織機産業であったので、日本の昔の織機というのは世界でも最高水準にあって、良い材料を使っていたので昔の何十年も使えるというだけでなく、当時の機械産業の最先端をつぎつぎと取り入れ、出来上がる織物も今のレピア織機と同じ色柄のものが織れるほどの最先端だったのです。

「林与」には、服地幅でヒガエのできる織機が10台動いています。4色をフルで実生産に結びつけることができるところは、高度な織技術と保守整備能力が要求されるため少ないです。昔は、ヒガエのできる織機も高価ながらももっと沢山あったと思うのですが、高度な織技術と保守整備の難しさ、生産性の低さから、断念され廃棄されていったと考えます。シャトル織機を維持できる職人さん自体が少なくなってしまったのですが、より高度なヒガエシャトル織機を維持できる職人さんは産地でも数人ではないでしょうか。「林与」が、シャトル織リネンでは技術的に世界的にトップクラスであることを自負できるのもそういう事情からです。

今日の画像は、現場で使っているL60番手クラスの糸帳です。
2009年06月27日
織物には通常耳と呼ばれる部分が左右にできます。これは、レピアでもシャトル織機でも同じです。レピア耳の場合、耳の糸は切れた状態で仕上がり、捨て耳と呼ばれるゴミができます。シャトル耳の場合、捨て耳はできずに耳は綺麗に仕上がります。

レピア耳の場合、綺麗にしようとあまり短く調整しすぎると、加工で耳の最後に2本入れてあるカラミ糸が外れて耳が解れてしまうことが起きるので、多少長めに残しています。長すぎると加工の毛焼きで燃えちゃうこともあるので、適当な長さが大事です。

シャトル耳の場合、捨て耳ができないので、資源を無駄にしないという利点があります。横糸が無駄にならないだけでなく、捨て耳を作るための縦にカラミでつかう三子ミシン糸も必要ないので5%から6%くらいはエコじゃあないかと考えています。使う材料は少なくなるのですが、糸を管に巻く手間や、回転を遅くして生産性は落ちてしまいます。

通常、リネンの織物であっても、耳の糸には綿糸を使用します。なぜかというと、耳は布の最後の部分にあるので緩んでしまうことが多く通し方を多めに通すために、糸が伸びるほうが問題なく織ることが可能なのです。

今日の画像は、カセ染めした糸です。チーズと呼ばれる木管に巻きかえる作業中です。
2009年06月26日
今日は、裁断工場にお伺いしました。中には、大きな裁断の台があって、事務所にはベットくらいの大きさのスキャナがおいてあってびっくりしました。社長一人でやっておらると聞いていたのに、すごい設備だなあと感心です。

裁断台の周りにもいろいろな反物が置いてあり、ニット、プリント、布帛、ジャージ、先染、デニム、不織布、パイル、ボンディング素材、思い出すだけでも、いろいろありました。もちろん、麻っぽいものも何点かありましたが、麻に関しては、ノーマルなものが多かった感じです。

裁断という作業の値段を聞いてまたびっくりです。まとめて裁断をされるのですが、一枚当たの値段は10円とか20円とかが普通らしく、あれだけの場所と設備を維持するだけでも大変だろうなあと想像します。

弊社の場合、社内で一枚づつサンプルを作るのと同様の手順で裁断と縫製をしており、サンプルをつくる過程や本番の過程で、自社規格の商品の場合、仕様変更をたびたびすることがあります。

今日の画像は、シャトルの中に入れる糸を巻く管です。
2009年06月25日
先日、機をつくっていた太番手が今日から織機に載って織出しです。予想通り、織機が違うと打ち込みがしっかりと入って分厚くても大丈夫です。まだ、密度を上げることができ、完全な平のソリッドな織物が織れそうです。再度、密度を上げてより高密度に挑戦したいと考えています。

この素材の用途の開拓が楽しみで、かばん用の布を頼まれているのでこれだけ厚いものが織れるとなると、これ以外にも、もう少し細い糸を使うなどすれば「林与」オリジナルでいろいろな素材が提案できそうです。

白い糸もあるので、柄組すればナチュラル系で広がっていくだけでなく、染めもすれば、通常の細い番手と同様、チェック柄とかかわいくできそうです。超太番手で高密度のチェック柄っていうのも面白いだろうなあと思っています。

自分で織物を織ると、糸屋さん以上に糸と付き合い、染屋さん以上に染めた糸と付き合います。糸屋さんや染屋さんから教えてもらうこともあれば、逆に教えてあげることもあり、その辺りがプロのノウハウの蓄積に繋がると考えています。
2009年06月24日
昨日から、かばん用の布をつくろうと、リネンの5番手という世界でも一番太いクラスのリネンの単糸を整経はじめました。途中で、新しく設置した整経機がレールから落ちてしまって、作業は一時中断しました。半日かかって整経機のほうも元に戻り、夕方には機を作る作業に取り掛かりました。車が脱輪したようなもので人の手ではどうにもならず、機械を使って持ち上げて戻しました。

かばんはまず「林与」で縫製してみようと考えています。ふだん、服を縫製しているミシンでも、針と糸を太くすれば、問題なく縫えそうです。キバタのままでかばんにしたいなあと考えています。

布はざっくりとしたものより、高密度なタイプにしたいなあと思っていますが、糸がすごく太いので、機械のほうが負けてしまうかと心配しています。糸は、手では引っ張っても切れません。

かばんのほかに何かに使えないか考えてみると、リネンの吸水性と清潔さを活用したお風呂の湯上りマットや、夏のブランケット、カジュアルボトム、カーテン、リネンブランケット、ソファーカバー、壁紙など、ホームファブリックと呼ばれる分野で活躍しそうです。

今日の画像は、職人さんが機を作っているところです。
2009年06月23日
「林与」では、布をカットするときに短いものですと、反物を手で解きながら長さを測ってカットします。6m以上の長いものは、通常、検反機という反物を検反するための機械を使って、長さを測りながら自動的に綺麗に反物に巻き上げます。通常、短い布は畳んでの出荷となり、長い布は紙管巻きでの出荷となります。

布を製造しているものからのアドバイスですが、ご家庭で一般に売られている麻をハンドメイドされる場合においては、裁断の前に水通しをしてください。麻というのは、収縮物性が悪くて、水通ししないで製品をつくって、水洗いすると伸縮してしまいサイズが変わってしまうのです。

特に注意していただきたいのは、布を切売し販売されるお店の人が、キバタと加工上りの布との区別がついていない場合などです。キバタというのは糸を織り上げただけの布ですので、通常横方向にかなり縮みます。リネン100%ものですと10%から15%縮むのが普通です。通常の水通しではこれほどは縮みません。通常の水通しではなく、布をしっかり洗ってしっかりと縮めてから裁断をしてください。キバタに関する以上のような物性について説明して、実際にお客様が自分で洗われて本当に13%とか15%とか縮んで、本当にそうなんだということでびっくりされたということがありました。

織物加工は布の風合いや物性を決める重要な要素なので、布を設計するときには、糸の紡績ブランドの品質も加味しながら加工で何%縮むか、つねに計算しながら布を企画しています。アパレルのプロでも、ヨーロッパやアジアの輸入素材で悩んでいることが多く、百貨店に並ぶ日本製品は、海外のブランドであっても日本製の布が使われることが多いです。

今日の画像は、小型の整経機です。